2025年4月2日(水)
「ウクライナ戦争」の北朝鮮兵死傷者が5千人を突破
ウクライナ戦場の北朝鮮兵士(ウクライナ36独立海兵旅団SNSから)
ウクライナ戦の停戦を前にロシアとウクライナの陣取り合戦が、特にクルスク州での攻防は熾烈を極めているようだ。当然、それに比例して双方の犠牲も増している。
ロシアが自軍の損失を明かさず、また北朝鮮派兵の事実も伏せているため詳細は不明だが、北朝鮮が1万1千人の兵士をロシアに派遣したのがウクライナの情報では昨年10月である。
そのうち約8千人がウラジオストクなど極東地域で訓練を受け、ウクライナ軍が侵攻し、激戦地となったロシア領、クルスクの戦場に出陣したのはロシア軍の奪還攻撃が始まった11月に入ってからである。
そのことはゼレンスキー大統領が11月5日夜のビデオ演説で「クルスク州で北朝鮮兵との交戦があった。北朝鮮側に死傷者が出たようだ」と発言していたことからも明らかだ。
ゼレンスキー大統領は昨年12月23日の時点で北朝鮮兵の死傷者について「3千人を超えた」とも語っていた。事実ならば、北朝鮮は約1カ月半で派兵した兵士の3分の1を失った計算となる。
クルスクでの戦闘が激化するにつれ北朝鮮兵の死傷者の数は増え続け、韓国軍合同参謀本部はウクライナから提供された情報として3月27日に「北朝鮮兵士1万1千人のうち4千人が死傷した」と発表し、英国国防部も翌3月28日の国防情報アップデートで「3月現在、ロシアのクルスク奪還攻撃で北朝鮮軍は5千人以上の死傷者を出しており、このうち約3分の1が戦死した可能性が高い」と分析していた。
但し、捕虜は1月上旬にウクライナ軍に生け捕りされた20歳と26歳の偵察兵2人だけで、その後捕虜に関する新たな情報はない。その理由についてウクライナ軍は「北朝鮮兵士は戦場で負傷し、逃げられないことがわかると、自決するか、仲間に射殺されるため」と説明している。
ロシアは北朝鮮軍の「参戦」でクルスクからウクライナ軍を駆逐し、占領地をほぼ取り戻すことができたが、北朝鮮軍の人的損失は半端ではない。そのことは韓国軍のベトナム参戦と比較すると一目瞭然だ。
韓国軍はベトナム戦争に米国の要請を受け1964から撤収する1973年まで海兵旅団(青龍部隊)や第9師団(白馬部隊)を含め約35万人を派兵したが、死傷者は1万5千人(戦死者約5千人、負傷者約1万人)だった。
派兵数では北朝鮮よりも約30倍も多いのに死傷者は約3倍に留めている。北朝鮮の死傷者は僅か5カ月間で発生しているが、韓国は9年間にわたる死傷者である。
韓国合同参謀本部は「北朝鮮は3000人以上の兵士を追加した」と発表していたが、事実ならば、北朝鮮はトータルで延べ1万4000人以上をロシアに派遣したことになる。
これで打ち止めとなるのか、それともさらに増派されるのか、ウクライナの戦局次第だ。