2025年4月30日(水)

 忍び寄る司直の手・・・逃げられない尹前大統領夫妻 家宅捜索の次は検察への出頭

尹錫悦前大統領夫妻(「JPニュース」)

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領夫妻はまるで蛇に睨まれた蛙のようだ。大統領公邸からソウルのマンションに引っ越しして間もないが、早々に検察から自宅を家宅捜索されてしまった。

 筆者がこの欄に「統一教会が尹錫悦前大統領夫人に贈ったダイヤのネックレスはカンボジア利権絡み?」の見出しの記事を載せたのは3日前の26日だった。

 驚いたことにこの日から僅か4日目に検察は尹前大統領の自宅をガサ入れしたことになる。検察の動きはまるでタガが外れたかのようである。

 家宅捜査は旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の尹英鎬(ユン・ヨンホ)前世界本部長が尹前大統領の妻、金建希(キム・ゴンヒ)夫人に巫俗の「乾真法師」として知られる易者(チョン・ソンベ氏)を通じて約6000万ウォン(日本円で約600万円)相当のダイヤモンドネックレスの他に高級バッグを渡したとされる疑惑を調べるためである。

 易者は検察の取り調べに対して尹英鎬氏からネックレスを受け取ったことは認めているが、「紛失してしまって金夫人に渡していない」と供述しているが、検察は信用しておらず、いずれの贈り物も金夫人の手に渡ったと睨んでいる。

 仮に、尹夫人が易者から受け取っていれば収賄罪に問われることになる。請託禁止法では公職者とその配偶者は300万ウォン(約30万円)を超過する金品の授受を禁じられている。

 検察が取り調べるのは単なる収賄容疑だけでない。

 旧統一教会側が金夫人に貢いだ理由が巷間伝えられているように見返りを求めたものであれば、尹前大統領にも斡旋容疑や職権乱用が適用されることになる。

 尹英鎬氏が明らかにしたところによると、尹前大統領とは大統領当選から約2週間後の3月22日に約1時間面談し、「この国が進むべき方向について話しあい、暗黙の同意を得ていた」とのことである。そして、この面談を仲介したのが他ならぬ易者で、尹英鎬氏は尹錫悦大統領選挙キャンプが発足した2021年12月から連絡を取り合う間柄だった。

 旧統一教会は当時、カンボジアのメコン川近くにアジア太平洋連合本部と平和公園建設を計画していたことから検察は尹英鎬氏がこのプロジェクトに政府開発援助(ODA)資金をあてにしていたと睨んでいる。というのも韓国政府は奇しくも2022年6月にカンボジアへのODAの借款支援限度額を7億ドルから15億ドルに大幅に引き上げていたからである。

 ODAの支援金を増額した同年11月、尹前大統領夫妻は東南アジア歴訪のためカンボジアを訪れており、その翌年の2023年5月にODAを活用した統一教会の「メコン平和公園発展計画」が具体化されていた。

 尹前本部長が統一教会を去ったことでこのプロジェクトは頓挫したと伝えられているが、検察は易者の自宅や事務所を家宅捜査した際に現金5万ウォン札束3300枚(1億6500万ウォン)を押収しているが、この金の出所も捜査対象となっている。

 易者は「祈祷費で、生活費するため保管していた」と答えているが、札束3300枚の中に新札5000万ウォンがビニールで包装された「韓国銀行」と書かれた官封権が含まれていたことから易者に金を渡したのは個人ではなく、政府機関の可能性も考えられるとみて検察は捜査をしている。

 易者は尹前大統領の選挙を手伝っていたが、仮に、その御礼として大統領の特殊活動費の一部が易者に流れていたとすれば、贈賄罪で尹前大統領もまた捜査対象となる。

 尹前大統領は内乱や公選挙法違反など13件の容疑で、また、金夫人も「株価操作疑惑」や「ソウル〜陽平高速道路コース変更疑惑」、さらには公選挙法違反容疑など同じく13件の容疑で検察、警察、高位公職者捜査処(公捜処)の3つの捜査機関からマークされているが、どの捜査機関が真っ先に尹夫妻の首を取るのか、手錠を掛けるのか、「争奪戦」が始まったようだ。

(参考資料:統一教会が尹錫悦前大統領夫人に贈ったダイヤのネックレスはカンボジア利権絡み?)