2025年4月9日(水)

 ウクライナ軍のロシア領のベルゴロド州進軍を理由に北朝鮮がロシアに増派か!

特殊部隊作戦基地を訪れた金正恩総書記(朝鮮中央通信から)

 ウクライナ停戦が一向に進まない。むしろ戦闘が激化している。

 一時は、ウクライナ軍に占領されていたクルスク州をロシア軍がほぼ奪還するなど猛攻勢を強めていたことから米国が仲裁する停戦交渉もロシア有利に働くとみられていたが、ウクライナ軍は3月にロシア西部のベルゴロド州に進軍し、部隊が進駐しているようだ。

 このことはゼレンスキー大統領が一昨日(7日)、「我々は敵領の国境地帯で作戦行動を続けている」と発言したことで初めて公となった。

 ベルゴロド州に展開しているのは第225突撃連隊などでウクライナ国境から約2キロ離れたデミドフカやプリレシエ村でロシア軍との間で戦闘が続けられていると伝えられている。

 このゼレンスキー大統領の発言でショイグ前国防相の3月21日の電撃訪朝の謎が解けた。北朝鮮に追加派兵を要請したのではないだろうか?

 その根拠は昨年9月にショイグ前国防相が訪朝した直後に北朝鮮が約1万1千人の特殊部隊をロシアに派遣したからである。

 ウクライナ戦争は2022年2月から始まったが、北朝鮮は2023年までは兵器を送っても兵士は送らなかった。それが、一転兵士派遣に踏み切ったのはショイグ前国防相が2024年9月14日にプーチン大統領の特使として訪朝し、金正恩(キム・ジョンウン)総書記に派兵を直接要請したからである。

 プーチン大統領がショイグ前国防相を平壌に派遣したのは明らかにこの年の8月6日にウクライナ軍に自国領のクルスクに攻め込まれ、苦戦を強いられていたからであろう。

 ショイグ氏の平壌訪問から18日目の10月2日に金総書記は西部地区に駐屯する特殊作戦部隊の訓練基地を視察し、部隊の訓練を見て回った。

 この訓練基地には「ショイグ訪朝」前の9月11日にも訪れていたので1か月も経たない間に2度も特殊部隊の基地を訪れたことになり、極めて異例のことであった。

 この時、金総書記は部隊の最終チェックを行い、かつ出兵兵士の歓送会を行ったものとみられる。「朝鮮中央通信」の報道によると、戦闘員らは「金総書記が望む国権守護、国益死守の先兵との自覚を持っていかなる任務が与えられても徹底的に完璧に成し遂げる猛将として準備していく」ことを誓っていた

 金総書記は今回も「ショイグ訪朝」から14日目の4月2日に人民軍特殊作戦部隊の訓練基地を訪れ、総合訓練を参観していた。

 北朝鮮の発表では「現代戦の発展様相と変化推移に即して特殊作戦武力の強化のための朝鮮式の新しい戦法と方法論を絶えず探究、適用し、実用的な実戦訓練の過程を通じて熟お達させて全ての戦闘員をいかなる戦闘状況の下でも課された特殊作戦任務を立派に、巧みに遂行できるようによりしっかり準備させることに目的を置いて行われた」とのことだ。

 狙撃兵小銃射撃訓練など訓練風景の写真が61枚配信されていたが、その中の一枚に叢で覆われた兵士の一人が双眼鏡を、もう一人が狙撃銃を上空に向けている写真が含まれていた。無人機、ドローンを撃墜する訓練であることは自明だ。

北朝鮮特殊部隊兵士がドローン撃墜訓練(朝鮮中央通信から)

 前例に従えば、北朝鮮はロシアに追加派兵し、ロシア西部のルゴロド州に進駐しているウクライナ部隊を駆逐し、ロシアの完全勝利の日まで留まるこになるであろう。対露派兵が「露朝包括的戦略パートナーシップ」の「一方が武力侵攻を受けて戦争状態になった場合軍事援助を行う」ことを明記した「第4条」に基づいているだけでなく、金総書記が「平壌はモスクワと共にいる」と、何度もプーチン大統領にエールを送り、昨年11月に訪露した崔善姫(チェ・ソンヒ)外相はラブロフ外相との会談の席で「ロシアが勝利する日までロシアを支援する」ことを公言しているからだ。

 金総書記が5月9日のロシアの対独戦勝80周年記念式典に招待され、軍事パレードで人民軍の行進が予定されているならば、なおさらのことである。