2025年8月11日(月)

 文在寅元大統領を「生まれつきの馬鹿」と揶揄した北朝鮮は李在明大統領にも同じ罵詈雑言を浴びせるかも

李在明大統領と金与正党副部長(「共に民主党」と「朝鮮中央テレビ」から筆者キャプチャー)

 米韓合同軍事演習「乙支フリーダムシールド」(UFS)が予定通り、8月18日から28日にまで実施されることになった。

 訓練回数と1万8千人の韓国軍を含め投入される兵力規模は昨年と変わらず、演習の要点の一つであるコンピュータシミュレーション指揮所演習(CPX)も予定通り行われるが、40件の野外機動訓練(FTX)のうち約20件は猛暑などの事情により9月に延期される見通しだ。

 CPXの半数が9月に延期されることについて李在明(イ・ジェミョン)政権の対北融和策の一環であるとの見方が一部で流れている。というのも新任の鄭東泳(チョン・ドンヨン)統一部長官が南北対話復活のため合同演習の延期を含めて調整するよう提案していたからである。

 韓国の専門家の間には対北ビラ散布の中止や拡声器による心理戦放送中止など南北関係改善と信頼構築のための措置を立て続けに取っている李政権が短期間で合同訓練を調整したことは北朝鮮に対する配慮、あるいは重要なメッセージであるとの分析もあるが、大いなる錯覚である。

 米韓が2021年に合同演習を行った際の金正恩(キム・ジョンウン)総書記の妹、金与正(キム・ヨジョン)党副部長のその年の3月15日の談話がそのことを示している。

 「南朝鮮の当局者らがいつもの癖通りに今回の演習の性格が『定例的』で『防御的』であり、実際の機動演習の規模と内容を大幅縮小したコンピュータシミュレーション方式の指揮所訓練であると宣伝して、我々の『柔軟な判断』と『理解』を願っているようだが、実に幼幼稚で鉄面皮であり、馬鹿げた言動だと言わざるを得ない。(中略)(文大統領を指し)生まれつきの馬鹿と言うべきか、でなければ常に左顧右眄しながら生きてきたので判別能力さえ完全に喪失し、吃音になってしまったのではないか。我々は今まで同族を狙った合同軍事演習自体に反対したのであって演習の規模や形式について論じたことはたった一度もない。それが裏部屋で密かに行われようと、悪性伝染病のためにみすぼらしくも演習の規模が縮まってそれに50人が参加しようと、100人が参加しようと、そしてその形式があれこれと変異しようと同族を狙った侵略戦争演習であるという本質と性格は変わらないからだ」

 さらに金副部長は「戦争演習と対話、敵対と協力は、絶対に両立しない。(中略)我々に敵対する南朝鮮当局とは今後、いかなる協力や交流も不要であるので金剛山国際観光局をはじめとする関連機構をなくす問題を検討している。これらの重大措置はすでに我が最高首脳部に報告した状態にある」と断じていた。

 実際に、金正恩政権はこれ以降、韓国との対話も交流もすべてシャットアウトし、挙句の果て、金総書記は2023年12月の労働党中央委第8期第9回全員会議(総会)で「南北関係は敵対的な二国間関係で、韓国は敵国、交戦国である」と宣言し、2024年1月15日に開催された最高人民会議での施政演説では「共和国の民族歴史から『統一』、『和解』、『同族』という概念自体を完全に削除しなければならない」と述べ、南北関係を完全に遮断・断絶する政策を打ち出してしまった。

 北朝鮮には米韓合同軍事演習が北朝鮮の生存権を脅かす敵視政策の象徴と映っている。演習が北の攻撃の抑止、防御にあるのではなく、やられる前に先にやる、即ち先制攻撃に取って代わろうとしているからである。

 案の定、北朝鮮の努光鉄(ノ・グァンチョル)国防相が今朝、警告談話を発表し、「我が武装力は確実で断固たる対応態勢で米韓の戦争演習騒動に備え、自衛権レベルの主権的権利を厳格に行使するであろう」と、対抗措置を取ることを予告していた。

 今も昔も、米韓合同軍事演習は北朝鮮にとっては最重要懸念で、演習中止こそが朝鮮半島の緊張緩和の第一歩と位置付けており、実際に中止に向けこれまで大胆な提案をしたこともあった。

 例えば、2015年には金総書記自らが新年早々(1月10日)に米国に対して合同軍事演習を臨時中止した場合、北朝鮮も核実験を「臨時中止する用意がある」との提案を行い、また韓国の朴槿恵(パク・クネ)政権に対しても中止を条件に首脳会談開催を呼びかけたことがあった。

 今回も、金総書記の妹は先月28日に発表した談話の中で合同軍事演習に触れ「ソウルでどんな政策が樹立され、どんな提案がされようと興味がなく、韓国と対座することも議論する問題もないという公式立場を再度明白にする。韓米同盟に対する妄信と我々との対決企図は先任者と少しも変わらない」と、李在明(イ・ジェミョン)政権を批判していた。

 軍事演習を強行すれば、再び登場し、今度はおそらく李大統領を名指しで罵倒するのではないだろうか。

(参考資料:共通点の少ない李大統領と金総書記は馬が合うのか?)