2025年8月13日(水)

 ファンクラブまであった金建希夫人の没落の原因

金建希夫人(右の写真がスペイン訪問時)(大統領室から)

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領に続き、哀れにも金建希(キム・ゴンヒ)夫人まで収監されてしまった。

 金夫人に掛けられた容疑は夫よりも4件多い、16件。このうち独身時代のドイツモーターズ株価操作疑惑(転換社債を相場よりも安い価格で購入した疑惑)や大統領夫人になってからの公選挙介入疑惑、旧統一教会絡みの斡旋収賄疑惑などが直接的な逮捕理由となっている。

 金夫人がファーストレディーになったのが2022年3月、ちょうど50歳の時だった。それから僅か3年で、坂を転がり落ちるかのように囚人に転落してしまった。

 金夫人は良くも悪くも努力家である。

 大学で専攻した美術教育を生かし、美術&デザイン関連のイベントを手掛け、無から会社を立ち上げ、加えて株で金を儲け、資産を増やしたことで知られている。安養大学や国民大学で兼任教授として教壇にも立つなど才女の顔も持ち合わせていた。

 夫とは母親の知り合いの紹介で出会い、2012年3月に結婚しているが、金夫人は「彼はお金がなく、私でなければ結婚できなかった」と周辺に語るほど二人の所得は格差があった。聞けば、結婚当初の所持金は尹前大統領が200万円そこそこで、金夫人はすでに億単位の資産家になっていた。

 尹大統領は一回りも年上ではあるが、金夫人が自らも口にしているように「彼のほうが女のようで、私の方がむしろ男に近い」と口にするぐらいで家庭では夫が台所に立つなど立場が逆転していた。金夫人は「かかあ天下」だったようだ。

 金夫人は非常に賢く、大統領選挙期間中はライバル陣営から経歴詐称や資産運用疑惑などを持ち出されたこともあって「君子危うきに近寄らず」ではないが、表面に出ることはなかった。夫との二人三脚の遊説も一度もなかった。大統領選挙で夫人が前面に遊説しなかったのは歴代大統領の中で金夫人が初めてである。

 美人でおしとやかなイメージが受け、若者の間で人気を呼び、2021年12月19日に開設された金夫人のファンクラブ「ゴンヒ愛(建希を愛する)」には7万8812人のファンが加入していた。これが、大統領選挙で選挙マシンとなって20代の若者の支持獲得に一翼担ったことは言うまでもない。

 メディアでは控えめな性格と伝えられ、また金建希夫人本人も自ら「内助の功に徹する」と公言していたことから夫とのツーショットの行動は控えるのではとみられていたが、夫が大統領になると豹変した。

 金夫人が初めて前面に出てきたのがソウル汝矣島の国会前で4万人以上の出席者が集った大統領就任式の場であった。当然、一躍脚光を浴びた。

 全国にテレビ中継された大統領就任式は金建希夫人にとってまさに華やかなデビューの場となった。大統領就任式を前に恒例となっている国立ソウル顕忠院を訪問した時は金建希夫人も同行し、献花、焼香していた。

 そして、大統領就任から3か月後には早くも外遊にも同行した。NATO首脳会議に出席する夫に同行し、スペインを訪れ、晩餐会などの場でファーストレディーとしての役割をそつなくこなし、国内での受けはよかった。まさに、絶頂期にあった。

 ところが、これが運のつきはじめで、その後、大統領専用機に付き添いの民間人を同乗させるなど公私混同が問題となり、また、この時に身に着けていた高価なネックレスが世間の注目を浴び、これが命取りとなってしまった。

 金夫人は大統領選挙後も非公開にすべき夫とのプライベート写真をファンクラブに流す一方で、蜜月関係にあったファンクラブの会長を通じて夫に逆らう「国民の力」李俊錫(イ・ジュンソク)代表らを批判するなど政治に首を突っ込み始めたことから人気が急落し、大統領に近い羅卿?(ナ・ギョンウォン)元院内総務さえからも「夫人の評判が大統領支持率下落の要因になっている。夫人は直ぐにでもファンクラブとは関係を断つべきだ」と進言される有様だった。

 その後、尹夫妻は子飼いの韓東勲(ハン・ドンフン)検事を「国民の力」の代表に据えたものの、その韓代表からも「国民が懸念している(金夫人の)問題について大統領は正直に詳細に明らかにして謝罪を含め必要な措置を取るべきだ。金夫人は直ちに対外活動を中止すべきだ」と勧告され、また大統領選で党の大統領候補の座を譲った安哲秀(アン・チョルス)議員からも「大統領は支持率暴落の大危機から脱出し、国政を正常化させるため(夫人問題で)国民に謝罪をすべきだ。夫人の問題では特段の先制的措置が必要である」と、野党が国会に提出している「金建希特別法」の受け入れを迫られる始末だった。

 大統領が2024年12月3日に非常戒厳令を宣布する直前の世論調査では尹大統領の支持率は23%(10月第2週)→22%(10月第3週)→20%(10月第4週)と、下落の一途を辿っていたが、「不支持」の理由のトップは「経済・物価」ではなく、なんと「金建希(キム・ゴニ)夫人問題」であった。

 金夫人からすれば「私が夫を出世させた、大統領にしてあげた」との思いが強かったのかもしれないが、本来は目立ちたがり屋の彼女の男勝りの、勝気な性格が結果として夫の足を引っ張ることになり、没落を辿る原因となったようだ。

(参考資料:前代未聞!尹錫悦前大統領に続き金建希夫人も収監の危機)