2025年8月19日(火)
どうする台湾問題 トランプ大統領から突き付けられる難題に悩む李在明大統領
李在明大統領(出所:大統領室)
訪日(8月23日)と訪米(8月25日)を前に李在明(イ・ジェミョン)大統領の外交問題での苦悩が増している。特に対米問題では神経が高ぶっているようだ。
悩みは関税問題だけではない。トランプ大統領との首脳会談で防衛費や駐韓米軍の負担増額を迫られ、さらには台湾有事の際の役割分担を求められるかもしれないからだ。
そのことは、昨日開かれた国会外交委員会での外相の答弁からも窺い知ることができる。何よりも新任の趙顕(チョ・ヒョン)外相は文在寅政権下で国立外交院長を務めた金峻亨(キム・ジュンヒョン)議員(祖国革新党)の「台湾有事の際には我々は介入するのか」の質問に明確に回答できなかった。
金峻亨議員はイエス、ノーで答えを得られなかったことから再度質したが、超外相は「有事の状況にもいろいろある。有事がどのように始まるのかによって(対応は)異なってくる」と、またもやはぐらかし、正面から答えようとはしなかった。
野党ではあるが、与党「共に民主党」と事実上の連立を組んでいる祖国革新党の金峻亨議員が政府を執拗に詰問するのも尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権下の今年4月に台湾有事への介入に反対する決議案を作成し、提出した代表発議者だからである。
両党から合わせて20人の議員が共同提出した決議案は尹政権に対して「台湾海峡有事に軍事的な次元からも経済、政治面からも介入しない原則を先制的に明らかにすべき」と促し、米政府に対しても「朝鮮半島を防御する目的で駐屯しているように在韓米軍を域外の紛争に動員しないとの公約を実践、提供する」ように併せて求めていた。
趙外相の曖昧な答弁に野党に転落した「国民の力」の元代表である金起R(キム・ギヒョン)議員が苛立ち「中国と台湾の間で戦争が起きた場合、駐韓米軍の兵力と装備を戦闘に投入することに同意できるとの前提のもとで米韓の協議が行われているのか」と質したが、この質問に対しては超外相は「そうではない」と否定していた。
ならばと、金起R議員は質問を変え「台湾と中国が戦争した場合、韓国は駐韓米軍の装備や人力など駐韓米軍がそこに投入されべきではないとの立場に立っているのか」と畳みかけたが、趙外相は「申し訳ないが、明確にはお答えできない」と又もや回答を避けたため、金議員は「それでは納得できない。駐韓米軍を台湾海峡の紛争に介入させてはならない。米韓首脳会談でも論議の対象にしてはならない」と声を張り上げて、李在明政権に釘を刺していた。
韓国が危機感を抱くのは、国連軍司令官も兼ねているザビエル・ブランソン駐韓米軍司令官は今年5月に「駐韓米軍は北朝鮮を撃退するだけでなく、インド―アジア太平洋戦略の一部である」と発言し、また今月8日には就任後初めてとなる記者会見の席で韓国に駐屯しているパトリオットミサイル部隊が米軍のイラン空襲作戦に参加したことを例に挙げ、戦略的柔軟性の事例として韓国の同意に関係なく台湾事態などの紛争に駐韓米軍を投入する可能性を示唆していたからである。
ブランソン司令官はこの日、韓国記者らの前で「我々の目標と同盟国支援のため我々が必要な場所に移動するのを防ぐ規定はどこにもない」と、躊躇うこともなく公言し、韓国内の反対論を牽制してみせた。
「台湾海峡紛争不介入」は進歩層だけでなく、保守的な尹錫悦前政権下でもある種の暗黙の了解事項だった。
例えば、昨年1月に申源G(シン・ウォンシク)国防長官(当時)は韓国メディアとのインタビューでこの件について質問された際に「台湾関連で衝突があったとしても駐韓米軍の移動を前提とする質問は適切ではない。米国に誤ったシグナルを与えかねない。我々の安保にためにならない質問である」と、質問を遮ったことがあった。
また、昨年7月には当時外相だった趙兌烈(チョ・テヨル)氏は国会の外交委員会で野党の議員から「(韓国は)台湾有事に介入すべきなのか」と質された際に「そうは思わない。駐韓米軍は朝鮮半島の問題に集中することになっている」と答弁していた。
李在明大統領は訪米後の9月3日に天安門で開かれる中国の「抗日戦争及び世界反ファシスト戦争80周年の式典への出席を保留にしている状態だ。
李大統領としては訪中して11月に韓国で開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)に習近平主席の出席の確約を取り付けたいところだが、その前にワシントンで中国が踏み絵としている核心的な問題(台湾問題)でミソを付ければ、訪中もAPECも台無しになりかねないだけに彼方立てれば此方が立たぬで困り果てているようでもある。
中国にも「シェシェ」、韓国にも「シェシェ」する李大統領の二股外交は大きな試練を迎えようとしている。
(参考資料:韓国次期統一相「台湾有事は韓国の有事ではない」 日本との立場の違いが鮮明!)