2025年8月6日(水)

 韓国を対露戦争に引きずり込もうと必死のウクライナ 韓国は「第2の北朝鮮」にはなれない

プーチン大統領と金総書記、尹前大統領とゼレンスキー大統領(労働新聞と大統領室から筆者キャプチャー)

 ウクライナは北朝鮮のロシアへの武器供与及び派兵を猛烈に批判しているが、その一方で、「包括的戦略パートナーシップ」を結んだ露朝の軍事協力関係を羨望の眼差しで見ているようでもある。ウクライナも北朝鮮のような「助っ人」を喉から手が出るほど欲しがっているためだ。

 ウクライナを支援する国は数の上ではロシアよりも遥かに多い。国連総会で圧倒的多数の140か国がロシアのウクライナ侵略を批判する決議案に賛成票を投じ、反対票を投じた国は当事国のロシアと北朝鮮を含め5か国のみだったことがそのことを端的に物語っている。

 外交支援だけでなくウクライナに軍事支援を行っている国は米国やNATO諸国など数十か国に上る。しかし、個別の義勇兵はいても正式に派兵している国は1か国もいない。ウクライナに援軍を出せば、戦火に巻き込まれる恐れがあるかだ

 戦争が長引けば長引くほど兵器や兵力の損失も甚大だ。補填しなければ、数の上で圧倒しているロシアに太刀打ちできない。弾薬など武器は後ろ盾のNATOがカバーしてくれるが、兵力の補充は国内で調達する他ない。しかし、徴兵を忌避する若者が後を絶たず、兵員不足は深刻である。

 ロシアでもウクライナと同じように兵役逃れが横行し、徴兵に苦慮しているようだが、それでもロシアの背後には「人材派遣国」の北朝鮮が存在している。昨年10月に第1陣が派遣されて以来すでに約1万5千人の正規軍が戦場に送り込まれており、今後さらに3〜4万人が追加派遣されると伝えられている。

 欧米諸国が派兵を躊躇っている状況下でウクライナが密かに期待を寄せている国がどうやらかつて米国の要請を受け、ベトナムやイラクに派兵したことのある韓国のようだ。

 ウクライナは「韓国は米国と同盟関係にあり、北朝鮮とは敵対関係にある.従って、北朝鮮の対露軍事支援に対抗し、韓国がウクライナを支援するのは当然」との発想や「北朝鮮の兵がウクライナ戦で実践経験を積めば、またロシアが派兵の見返りとして北朝鮮に核やミサイル分野で軍事技術協力をすれば韓国の安全保障を脅かす」との論法に基づき、韓国に秋波を送っている。

 韓国はこれまでに西側の一員としてウクライナ支持を表明してきた。また、防弾ヘルメットなど非殺傷用軍需物資からテント、毛布、衣料品など援助物資を民間機やチャーター便でウクライナに送ってきた。しかし、ウクライナからすれば、韓国の支援は北朝鮮の対ロ軍事支援に比べたら圧倒的に物足りないと感じているようだ。

 ウクライナは3年前から韓国に対しては人道支援ではなく、軍事支援を求めていた。実際にゼレンスキー大統領自身がオンラインによる韓国国会演説(2022年4月11日)で「ロシアの艦船、ロシアのミサイルを防ぐ様々な軍事装備が韓国にはある。ロシアに立ち向かえるよう韓国が我々を助けてもらえれば有難い」と直訴していた。

 ほぼ同時期にウクライナを支援するNATOからもロプ・バウアー軍事委員長(オランダの海軍大将)が訪韓し、韓国の国防長官や合同参謀本部議長との会談で直々に小銃から対戦車ミサイルなど殺傷兵器100〜150品目にわたる支援を韓国に要請していた。

 そうした働きかけもあって、また当時バイデン政権の要請もあって韓国は一昨年、米国経由してのウクライナへの155mm砲弾の供給に踏み切ったもののプーチン大統領が昨年6月にベトナムでの記者会見で「韓国がウクライナに殺傷武器を支援すれば、大変なミスになる。そのようなことになれば我々は相応の決定を下すことになり、それは韓国の現指導部にとっては快く思わない決定となるであろう」と、韓国を強く牽制したことでそれ以上、深入りしなかった。

 ところが、昨年9月頃からゼレンスキー大統領やウクライナ情報当局が北朝鮮の派兵の動きを伝え始めると、一転強硬姿勢を転じ、尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領は北朝鮮とロシアに向けて「韓国の安全保障を脅かすならば代価を払わす」と、ウクライナが拍手喝采するような発言を行った。

 実際に、尹前大統領は2か月後の11月28日にEU議会から「韓国にウクライナへの軍事支援を要請する」声明が出されたこともあってゼレンスキー大統領が韓国に派遣したウクライナ軍事代表団に会い、露朝軍事脅威に対応するための兵器供与を含めたウクライナとの協力関係について話し合っていた。

 しかし、ウクライナの期待も尹前大統領が12月3日に非常戒厳令を発令し、それが仇となり、失脚し、政権の座から引きずり降ろされたため「ウクライナとの協力」の口約束は宙に浮いたままとなっている。

 昨日(5日)ウクライナのキリーロ・ブダノフ国防省情報総局長が現地放送に出演し、「北朝鮮がウクライナ戦争に軍隊を派遣する代わりにロシアから兵器システムと軍事技術を受け取っている」とか「ロシアは北朝鮮の核兵器運搬手段の近代化を支援している」と、韓国の関心を引く発言を連発していたが、李在明(イ・ジェミョン)政権からの反応はない。

 李在明大統領は「台湾が中国に侵攻された場合、韓国は協力するのか」と聞かれた時も「地球が下界人から攻撃された場合の回答を求めるようなもの」と、素っ気なかった。

 ウクライナについても軍事支援どころか、逆に尹前政権が密かにウクライナに武器を供給した疑いを調べている有様だ。

 今の韓国に北朝鮮のような役割を期待するのは緒戦無理であろう。