2025年12月10日(水)

 高市首相の「台湾発言」に続く「竹島発言」に韓国メディアが反発も李在明政権は冷静

韓国・慶州で首脳会談を行った高市早苗首相と李在明大統領(出典・大統領室)

 人間関係ではできることならば争いごとは避けたい。「君子危うきに近寄らず」との「教え」があるのはそのためだ。

 国と国の関係でもなるべくならば腫物に触らないほうが得策だ。特に何かと対立する相手と接する場合は、まかり間違っても地雷を踏まないようにすることだ。

 日中関係では台湾問題が言わば「地雷原」であった。従って、日中関係が一気に険悪化したのは高市早苗首相が「地雷原」を踏んだためと、「反高市」派は主張し、これに対して擁護派は「当然のことを言って何が悪い」とか「言うべきことは言ってしかるべきだ」と反論し、中には「執拗に質問した方が悪い」と野党議員を責め立てている向きもある。

 世論調査を見てみると、「毎日新聞」では「高市発言」を「問題があったとは思わない」が50%を占め、「問題があったと思う」(25%)を大きく上回っていた。「読売新聞」の調査では高市首相の対中姿勢を「評価する」が56%もあった。「評価しない」は29%しかない。

 世論は「高市発言」で世界第2位の経済大国・中国との関係が悪化しても、経済的にダメージを被ったとしても総じて「高市発言」を支持しているようだ。

 中国は公正な世論調査機関がないので中国の民意を図り知ることはできないが、少なくとも中国政府当局は中国による台湾の海上封鎖が発生した場合「戦艦を使って武力の行使も伴うものであればこれはどう考えても存立危機事態になり得るケースだ」との高市首相の答弁は「中国の内政問題に介入した許しがたい妄言」と捉えている。簡単な話、日本にとっては「当たり前の発言」が中国にとっては「妄言」になるから争い事が起きる。

 実は、日韓の間でも領土問題を巡っては同じようなことが延々と繰り返されている。

 昨日も衆議院予算委員会で高市首相が「竹島は歴史的事実と国際法の両方に照らして、明らかに日本の固有領土である」と答えると、大手保守紙「中央日報」をはじめ韓国のメディアは一斉に「高市発言」を「妄言」と批判していた。経済紙「ソウル経済」などは「高市首相 再び暴言」との見出しを掲げ、「極右寄りの日本の高市早苗首相が『竹島は日本の領土だ』との突飛な主張を繰り返した」と報じていた。

 韓国大統領室もさすがにこれには反応せざるを得なかったようで韓国が「独島」と呼称している竹島について「独島には領有権紛争は存在しない」として「独島は歴史的、地理的、国際法的に明白な我が国の固有の領土」とコメントしていた。

 今も昔も日本は「竹島は歴史的に国際法的にも日本の固有の領土」と叫び、韓国もまた「独島は歴史的にも国際法的にも韓国の領土」と、譲らない。誰が総理に、大統領になっても領土問題ではこれが「模範解答」で変更はない。聞くだけ無駄というものだ。それなのにあえて聞こうとするから厄介なことになる。

 台湾問題では野党議員が執拗に攻め立てたことから「高市首相の揚げ足を取ろうとした」とか「貶めようとしていた」との批判の声が自民党支持者の間では上がっていたが、竹島問題での質問者は野党議員ではなく、与党・自民党議員だった。

 質問者が竹島を帰属している島根県選出の議員でもあり、「日本の領土を守るため行動する議員連盟」の事務局次長の立場にあるので高市首相に「韓国の不法占領の状況は全く変わっていない」と、断固たる対応を求めるのは至極当然のことかもしれない。

 質問されれば、当然、高市首相は「歴史的事実に照らしても、国際法上も明らかに我が国固有の領土だ。国内外で正確な理解が浸透するよう発信に努めていく」と返事をせざるを得ない。そうなれば、韓国も木霊するように反応せざるを得ない。

 確か先週ソウルで行われた李在明大統領の外信記者会見でも日本の特派員から日韓関係について聞かれ際に領土問題については聞かれもしないのに李大統領は条件反射的に「独島は我々が実効支配しており、については誰が何と言おうが、明らかに大韓民国の領土である」と答えていたが、こればかりは慣習なのでどうしようもない。

 韓国政府は幸いにもこれまでとは違って駐韓大使を呼び出し、抗議するようなことはしなかった。その理由は、李大統領が来月、高市首相の故郷である奈良県奈良市を訪問し首脳会談を行う方向で調整しているからである。

 韓国国内の与野党の政争、進歩対保守勢力の対決は「内戦状態」と言っても過言ではないほど熾烈だ。保守野党「国民の力」は李政権を倒すため虎視眈々とその機会を狙っている。その李政権のアキレス腱が何を隠そう、対日政策なのである。

 野党時代に尹錫悦(ユン・ソクヨル)前政権の対日外交を散々「親日的で屈辱的で弱腰」と批判していた李大統領が領土問題で高市政権に甘い顔を見せれば、それこそまさに千載一遇のチャンスとばかり、徹底的に叩くであろう。

 中国は国連に日本批判の書簡を送り、またフランスやドイツの外相を招き、中国の対日批判に同調するよう求めている。中国は日本を孤立させるため今後おそらく韓国に対しても陰に陽にアプローチしてくるであろう。

 俄かに信じ難いが、李大統領は野党の批判を意に介さず、また中国の手を振り払い、日本とのシャトル外交を推し進めようとしているようにみえる。そのような状況下で日本で竹島問題を取り上げれば、その結果は容易に想像できる。

 「言うべきことは言う」のも結構だが、何も今でなくてもよいのではないだろうか。時にTPOをわきまえるのも必要である。