2025年12月19日(金)

 「良好の日韓関係」に対して「最悪の南北関係」 外交部と統一部が李大統領に業務報告

高市早苗首相と李在明大統領と金正恩総書記(首相官邸と大統領室と労働新聞から筆者キャプチャー)

 韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領は19日、ソウル政府庁舎で今年最後の国政報告を行い、外交部と統一部から業務報告を受けた。

 外交関係、特に日本との関係では趙 顕(チョ・ヒョン)外交部長官から「日韓首脳間のシャトル外交の推進と経済協力パートナーシップの構築を推進する」との報告を受けた。趙長官は北朝鮮問題でも「米国、日本と協力して北朝鮮のミサイルと核の廃棄を目指す」方針を説明していた。 

 李大統領は何一つ口を挟まず、注文を付けることもなかった。来月中旬を目途に訪日することもあって高市首相の「竹島発言」も佐渡金山の問題もまた徴用工問題についても「どうなっているのか」と、問い質すことはしなかった。

 李大統領は「安保問題では戦わず勝つことが大事だが、それよりも戦う相手を作らないことだ。最も確実な安保政策は平和であり、その平和にとって最も大事なのは外交である」と述べ、「外交は経済の領域を拡大するのに大きな役割を担っている」と強調し、「外交部は実によくやっている」と、褒め称えていた。

 与党「共に民主党」の一部議員や市民団体からはソウル市に設置されている少女像を未来文化遺産に指定するよう要求する声が上がっているが、政府レベルでは現在のところ、検討する動きはみられない。李政権は日韓にいざこざが起きないよう細心の注意を払っているようだ。

 李大統領から日韓関係に関しては何一つ懸念が表明されることはなかったが、北朝鮮との関係、南北関係では悲観的な発言に終始していた。少し長いが、発言の一部を引用する。

 「南北は敵同士になってしまった。少し前までは敵のような感じに過ぎなかったが、今では本当に敵同士になってしまった。南北は民族共同体がどうのこうの言わなくても現実的な必要性から争う必要ない。敵対関係が強まれば、それだけ経済的損失も大きい。1953年の休戦協定以来初めて北朝鮮は軍事境界線に三重網政策を取り、橋と道路を切断し、障壁を作っている。我々韓国人は『北朝鮮が南侵する、韓国に攻め込んでくる』と教育を受けてきたが、今では北朝鮮の方が『韓国が攻め込んでくる』と憂慮しているようだ。これが現実だ。簡単なことではないが、元に戻さなくてはならない。意思の疎通、対話、協力、共存共栄を模索しなければならない。忍耐力を持って、韓国が先制的に主導的に敵対関係が緩和できるようにしなければならない。(韓国を相手にしないことが)北朝鮮の戦略ならば、その戦略を変えるようにしなければならない」

 李政権にとっては尹錫悦(ユン・ソクヨル)前政権下で悪化した南北関係の修復が急務のようだが、担当する鄭東泳(チョン・ドヨン)統一部長官は米朝対話と南北対話が始まれば閉ざされた開城工団事業と金剛山観光事業を再開させる考えを明らかにしていた。その理由について鄭統一部長官は「2019年1月1日に金正恩(キム・ジョンウン)総書記が開城工団と金剛山事業の無条件再開を呼び掛けて来た時にこれに応じなかったのは大きな失策だった」と後悔していた。

 閉塞状態の南北関係を切り開くための具体的な打開策の提示はなく、あくまで「南北対話が再開されれば」の前提条件の下で2つのプロジェクトを実現させる考えを明らかにした。

 一つは非武装地帯を平和的に利用する計画で、具体的には平和公園を設け、そのための法の設定を急ぐことである。

 平和公園構想は盧泰愚(ノ・テウ)、金泳三(キム・ヨンサム)、朴槿恵(パク・クネ)、文在寅(ムン・ジェイン)まで歴代の大統領が国連演説で表明した構想だが、いずれも計画倒れで終わっている。

 もう一つは、軍事境界線のエリアに2026年から2027年までの間に平和経済特区を4か所設置する構想である。主に道路、灌漑、用水、環境などの分野で協力することにするようだ。

 なお、この日の統一部の業務報告で韓国に滞在している脱北者は3万4500人におり、北朝鮮に戻った脱北者が1031人いることも明らかにされた。また、脱北者の自殺率は韓国国民の自殺率よりも2倍も高いこと、さらに今後は脱北者とは呼ばず「脱郷者」と呼称する方針であることも明らかにされた。

 さらに国際社会が関心を寄せている人道問題では拉北者(北朝鮮に拉致され、抑留されている漁民ら)の帰国や13万5千人が申告している離散家族の再会問題については絶望的で、李大統領は「対話がない状態ではどうにもならない」と苦しい胸の内を明かしていた。