2025年12月20日(土)
寝ていた韓国の核武装論者を起こした日本高官の「核保有発言」
高市早苗首相(出典:首相官邸HP)
日本政府高官の核保有発言は韓国でも波紋を呼んでいる。
今朝、「文化日報」(「日本高位級『核兵器保有すべき』・・・北東アジアの安保を揺さぶる爆弾発言」や「ソウル新聞」(「米国を気にしてはいられない『核兵器持つべき』被爆国高官発言が波紋」など韓国のメディアは日本政府高官の「核保有発言」を揃って伝えていた。
何をどう伝えているのか、代表的なケースとして保守大手紙「朝鮮日報」(「『核を持つべき』との日本高官発言が波紋」)と「東亜日報」(「日本高位級『核兵器を保有すべき』突出発言」)の2紙を取り上げてみた。
「朝鮮日報」は「『核を持つべき』との日本高官発言が波紋」の見出しの記事で「日本の政府関係者が核武装論に言及するのは異例的なことである。世界唯一原爆被国である日本は『核を持たない、造らない、持ち込まない』の非核3原則を維持しており、『核兵器保有』はタブー視されていた。強硬保守性向の高市早苗首相が政権を握って以来、『非核3原則』に異常気流が感知されている最中のこうした発言は単なる失言ではなく、高市政権が世論を探っているものと解釈されている」と指摘していた。
そのうえで「こうした発言をした総理官邸の高官は安保担当の関係者で、首相と同じ奈良県出身で、側近に分類されて人物であることに加えて、自衛隊出身であるとされている。当時、記者懇談会はそもそも『匿名報道可能』だった。ところが発言後、首相官邸は報道の停止を求めたそうだ。世論の反応を狙った意図的な発言との誤解を招くのに十分な状況だった」と書いていた。
また、「東亜日報」は「先月、高市早苗首相が発表した『非核3原則』を見直す中、日本は米国による戦術核の再配備を促進しようとしているとの分析がある」と書き、写真を載せて高市首相の「台湾有事は自衛隊派遣が可能な存立危機事態になり得る」の11月7日の発言と小泉進次郎防衛相の11月12日の「原潜を韓国と豪州が保有し、米国も中国も持っている。日本の原潜議論は当然だ」の発言を紹介した後に今回の政府高官の核保有発言を伝えていた。
いずれも読者に「本当に日本は持つのでは」との疑心を抱かせるのに十分な書き方であった。まして、「東亜日報」は日本の防衛予算が2022年の5兆4000億ウォンから23年6兆8200億ウォン、24年7兆9500億ウォン、そして2025年8兆5400億ウォン、26年8兆8400億に増額していることをグラフで示し、日本の「軍国化」が進んでいるとの印象も与えていた。
これらのインターネット版の記事には読者のツイートが添えられていたが、「朝鮮日報」の記事には「日本が核を持つことに賛成だ。当然、我々も持つべきだ」「中国が韓国の不正選挙に介入し、スパイ活動をしているので日本も韓国も早く核武装をする必要がある。日本よ、急げ!」「中共(中国共産党)も北朝鮮も核を持っているので自国を守るため日本と韓国も持つべきでは」「韓国と日本、台湾の半導体3か国が核保有連合体をつくり中国に立ち向かおう」「日韓が一緒に核武装すれば世界平和が訪れる」と、どれも勇ましい内容だった。
「東亜日報」の記事に対しても「日本が核武装し、我々もやればよい。そうなれば、中共は清国の時代に戻るだろう」「やはり日本だ。損しないタイミングをみて突出発言をしている」「かつて中国を食べた日本は決して生易しくはない」「中国よ、米国がいつまでも韓国と日本の核武装を防いでくれると思っているのか」等が書き込まれていた。
韓国では尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領が2023年1月11日に「韓国が戦術核を配置するとか、自ら核を保有することもできる。そうなれば、我々の科学技術で早い時期に我々も核兵器を持つことができる」と発言し、これを機に当時与党「国民の党」の代表の座を競っていた羅卿?(ナ・ギョンウォン)元院内総務が「今はもう私たちも核武装をしなければいけない」との声を上げ、対抗馬の韓東勲(ハン・ドンフン)元代表も「核武装の潜在的力量を備えよう」と主張したこともあって世論が一気に核武装に傾斜したことがあった。
尹錫悦政権下の昨年6月に韓国政府の外郭団体である「統一研究院」が行った世論調査によると、国民の66%が核武装に賛成していた。「国防のためには米軍の駐屯と核兵器の保有のどちらが望ましいか」との質問に対しても「核兵器保有」が44.6%と、「米軍の駐屯」の40.6%を上回っていた。
今年6月に政権の座に就いた李在明(イ・ジェミョン)大統領は世論の鎮静化を図り、12月3日に海外メディア向けに開いた記者会見でも国際社会の懸念を払拭するため「韓国には核武装の意図も必要性もなく、核不拡散の原則を遵守する」と強調し、現実的にもアメリカの承認が得られず、核ドミノの誘発や国際制裁の負担などの問題があることや韓国の国防費が北朝鮮のGDPの1.5倍に達していることから「核武装は現実的ではない」と述べたばかりだった。
しかし、今回の日本政府高官の発言で「日本が持つならばこっちも」とか「日本と一緒に」の声が高まるのは必至である。どうやら高市政権は寝た子を起こしてしまったようだ。