2025年12月21日(日)

 日本はなぜ北朝鮮からいつも「戦犯国」と罵倒されるのか

金正恩総書記と高市早苗首相(労働新聞と首相官邸HPから筆者キャプチャー)

 終戦から80年が過ぎたのに日本は北朝鮮から「戦犯国」と名指しされ、叩かれている。今でも日本を「戦犯国」として批判を続けているのはおそらく世界で北朝鮮ぐらいであろう。

 「戦犯国」とは第二次世界大戦後、連合国によって戦争犯罪を問われた国を指している。日本は戦後処理を終え、戦後は平和国家の道を歩んできたと自負しており、国際的にも「平和国家」として受け入れられている。ところが、北朝鮮だけはそうは評価していないようだ。

 昨日(20日)も北朝鮮外務省傘下の日本研究所所長が日本政府高官の「核保有発言」を問題視し、「人類に大災難をもたらした戦犯国・日本の核武装化企図を断固阻止しなければならない」との見出しの談話を発表していた。

 この研究所所長の談話を集約すると、以下の通りである。

 「戦争国家としての変身を野望する先制攻撃能力の強化と武器輸出制限の緩和、『非核3原則』の再検討など日本の支配層が軍事安保政策を大幅調整しながら戦犯国としての禁断の線を越え、核保有の野望まで露骨に表した」

 「日本が長い間夢見ていた核武装化野望に直接言及したことは日本の憲法は言うに及ばず敗戦国として背負った義務を明示した諸般の国際法への全面的な挑戦である」

 「表では『世界唯一の原子爆弾被害国』の看板の下に『核兵器のない世界』を標榜し、後ろに回っては核武装化に走る日本のふてぶてしい両面的形態には国際社会が警戒心を持って遮断すべき最大の脅威であり、地域諸国の深刻な憂慮を招く妄動と言わざるを得ない」

 「戦犯国である日本の手中に核兵器まで握られる場合、アジア諸国の頭上に恐ろしい核の惨禍が降り注ぎ、人類が大災害に直面することになるということは、過去の日本による侵略の歴史が如実に証明している」

 それにしても過去、日本から同じ目にあった中国も韓国も、また東南諸国も日本をとっくに許しているのに北朝鮮はなぜここまで日本を憎み、敵視するのだろうか?日本人ならば誰もが不思議に思うであろう。

 確か、朝鮮労働党の規約は2021年に改訂され、旧規約にあった「日本軍国主義と侵略策動を粉砕して」の文言は消えたはずだ。それなのに北朝鮮の対日批判は年々ヒートアップしているのが現状である。今では「我が人民は日本の反人類的犯罪行為を絶対に忘れず、必ず決算する」というのが北朝鮮の口癖となっている。

 北朝鮮は日本に対して「100年来の仇敵」と呼んでいるが、それもこれも植民地統治が始まった1910年から今日まで北朝鮮に対しては償いを行っていないことへの恨みが背景にある。即ち、北朝鮮の対日憎悪は日本が唯一北朝鮮だけに植民地支配を清算していないことに起因しているようだ。

 日本はこれまで北朝鮮以外の国々に対しては戦後処理を終えている。

 例えばミャンマーには1954年と1963年に4億ドル、フィリピンには1956年に5億5千万ドル、インドネシアには1958年に2億3千800万ドル、南ベトナムには1959年に3千900万ドル、ラオスには1957年に無償10億円、カンボジアには1959年に経済・技術援助金として15億円、そして韓国には1965年に無償・優勝合わせて8億ドルの償いを行ってきた。

 この他にマレーシア(30億円)やミクロネシア(18億円)、タイ(43億円)などに対しても経済支援を行い、また、請求権を放棄し、賠償を請求しなかった中国に対しても1979年から「無償資金協力」約1600億円、「円借款」約3兆3千億円、さらには約1900億円の「技術協力支援」をODA(途上国援助)資金から行ってきた。

 北朝鮮に対する戦後処理が取り残されていることは日本も認識している。

 実際に2002年9月に訪朝した小泉純一郎総理は金正日(キム・ジョンイル)前総書記との間で交わした「平壌宣言」で「不幸な過去を清算する」ことを約束していた。それが今日まで果たされてないことに北朝鮮は苛立っている。

 日本からすれば外交の最大の課題である北朝鮮による日本人拉致問題と日本の安全を脅かしている核とミサイル問題が解決した暁に国交を正常化し、他の国と同様に経済協力という形で過去を清算することにしている。北朝鮮もそのことには異を唱えていなかった。

 冷静に考えて、日朝両国はパレスチナとイスラエルのような不倶戴天の関係ではない。本来争う理由もなければ、狙われる、あるいは攻撃される覚えもない。

 なぜか?その理由は、北朝鮮とは印パのような国境紛争も、資源紛争も、領土問題も存在しないからである。日本は中国、ロシア、韓国との間には将来、軍事紛争に発展しかねない資源問題とか領土問題を抱えているが、北朝鮮との間には戦争勃発につながるその種の火種はない。

 唯一の例外は、北朝鮮と米韓が軍事衝突した時のみだ。この場合、日朝が一戦交える可能性は否定できない。朝鮮半島で戦争が勃発すれば、日米安保条約に従い米国に基地を貸している日本列島が米軍支援のための後方基地、発進基地、兵站基地に化すためだ。北朝鮮が日本を標的としたノドン・ミサイルを数百発も日本海に向けて配備しているのもこうした最悪のシナリオを想定しての備えでもある。

 従って、米韓と北朝鮮が衝突した時に初めて日本が北朝鮮に狙われる危険性、リスクが生じる。ということは、米朝が核問題やミサイル問題で和解し、朝鮮半島の軍事的緊張が緩和されれば日朝交戦の可能性はほぼゼロに近づく。換言すれば、米朝の和解は日本の安全保障に寄与する。

 小泉純一郎元総理が現職の時にブッシュ大統領と金正日総書記を繋ごうとして2006年9月の日米首脳会談でブッシュ大統領を説得したのも北朝鮮に核とミサイルを放棄させるには米朝和解、即ち、米朝首脳会談しかないと考えたからであろう。

 トランプ大統領と金正恩(キム・ジョンウン)総書記との会談は不発に終わり、来春に持ち越されたが、高市早苗首相は拉致問題の解決のみならず安全保障を含む国益のため韓国の李在寅(イ・ジェミョン)大統領と足並みを揃えて、米朝会談の仲介役を担えるべきだが、果たしてできるだろうか?