2025年12月24日(水)

 韓国の統一教会に激震 日本に続き解散危機に直面

李在明大統領と韓鶴子総裁(大統領室と韓国統一教会から筆者キャプチャー)

 韓国の統一教会が絶体絶命のピンチに立たされている。

 韓国の与野党が統一教会(世界平和統一家庭連合)と政治家の癒着疑惑を集中的に追及する特別権検察官制度を設置することで合意したからである。

 保守野党の「国民の力」と「改革新党」が共同で発議していた特別検察官制度の設置に当初難色を示していた与党「共に民主党」が急転直下、方針を転換させた背景には大統領室の「意向」を無視できなかったようだ。

 大統領室は特別検察官制度の設置合意に即座に「与野党や地位の高低を問わず、徹底した捜査が行われるべきだ」としたうえで、「この機会に政治と宗教の癒着疑惑全体について真相を明らかにし、処罰することが必要だ」との談話を出していたが、この談話には李在明(イ・ジェミョン)大統領の意中が色濃く反映されている。

 李大統領は今月2日の国務委員会(閣僚会議)で統一教会を念頭に「政教分離の原則に反して宗教財団が組織的、体系的に政治に介入した事例がある。これは違憲行為だ」と指摘したうえで「日本では解散命令が出ているので検討してほしい」と述べていた。

 李大統領はさらに9日の閣議でも教団問題を再度持ち出し、所管の゙源徹(チョ・ウォンチョル)法制処長に対して「個人も罪を犯し、反社会的行為をすれば制裁されるが、団体も憲法や法律に違反していると指摘される行為をすれば解散させなければならない」と念を押していた。

 ゙法制処長はこれに対して「宗教団体が組織的に酷い違反行為を続ければ、解散は可能だ」との考えを伝えた上で「民法に照らし合わせ、(教団の)実態がそれに該当するのか一旦確認しなければならない」と回答したものの李大統領は不服なのか、再度「最終的には裁判所が決定すべき事柄だが、解散請求は主管部署でできるのではないか」と、捜査の進展状況をみて(解散を)検討するよう指示していた。韓国の民法第38条には「非営利法人は目的外の事業を行ったり、設立条件に違反したり、公益を害する行為を行った場合、主務官庁が設立許可を取り消すことができる」と定められているからである。

 李大統領がここまで教団の解散に固執するのは前回(2022年3月)の大統領選挙で対立候補の尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領に0.7ポイント差、票にすると約25万の差で惜敗したのは韓鶴子(ハン・ハッチャ)総裁の「一声」で統一教会が尹錫悦候補の支援に回ったことにあるとみなしているからだ。

 実際にこれまでの捜査の過程で教団が信者を「国民の力」に入党させる一方で全国に区分けした5つの地区長を通じ、「国民の力」の市、道党委員長らに政治資金を流し、また尹候補陣営に権東性(クォン・ソンドン)議員を通じて約1億ウォン(日本円で約1070万円)の選挙資金を提供したことが明るみに出ている。

 また、こうした組織を挙げた教団の支援に金建希(キム・ゴンヒ)夫人が当時陣頭指揮を取ったNo.2の尹英鎬(ユン・ヨンホ)前世界本部長に直接、電話で謝意を伝えていたことやまた尹候補を後方支援した教団幹部らが当時「我々が尹錫悦を大統領にしてあげた」と自慢していたことなどが捜査過程で明らかにされている。

 韓国の場合、宗教団体の解散は@法人の目的事業及び存在自体が公益を害すると認められた場合A法人の行為が直接的及び具体的に公益を害した場合B法人の消滅を命じることがその不法的な侵害状態を除去し、正当な法秩序を回復するための制裁手段として緊要を要する場合に限られている。中でも「公益を害する行為」については非常に厳格に解釈されている。憲法が宗教の自由と結社の自由を保護しているからである。

 韓国では過去に宗教団体の解散は1976年と2003年に詐欺を目的に設立されたエセ主教団体の2件しかない。従って、統一教会の場合は起訴された韓総裁を含む首脳部の犯罪が確定し、その犯罪が教団の組織的意思に帰属され、教団の存在自体が公益を侵害していると立証された場合のみ可能である。

 教団の金夫人への貴金属贈賄容疑を捜査していた「金建希特別検察官」(特検)は統一教天主平和連合(UPF)加平支部地区長から「我が国の憲法第20条には宗教と政治は分離されなければならないと明示されているが、真の母(韓総裁)は政教一致の運動をしなければならないと言っていた」とする証言(25年3月9日)を得ているもののこれだけでは不十分だ。

 現在、「特検」から捜査を引き継いでいる警察国家捜査本部は12月15日に京畿道加平郡にある教団本部など10カ所の家宅捜索を行った他、UPF前会長や世界本部前総務処長ら教団の元幹部らを呼び、政治家との関わりを追及する一方で教団から金品を受け取ったとされる与野党議員らの調査に乗り出している。こうした折、李大統領が聖域なき捜査を指示し、与野党が特別検察官の設置を決めたことは統一教会にとっては想定外である。

 すでに新たに野党の「未来統合党」(現「国民の力」)の金奎煥(キム・ギュファン)元国会議員議員だけでなく、与党からは現金2000万ウォン(約214万円)と1000万ウォン相当の高級時計を貰ったとされる田載秀(チョン・ジェス)前海洋水産部長や林鍾聲(イム・ジョンソン)前国会議員らが捜査対象に名前が上がっているが、今後、警察力だけでなく、特別検察官らも始動すれば、与野党関係なく相当数の議員が芋づる式に摘発されるであろう。

 仮に与党から「灰色議員」が出てきても李大統領は文在寅(ムン・ジェイン)政権下での出来事として意に介さず、切り捨てるようだ。むしろ多少返り血を浴びてもこの機会に尹前政権との癒着を暴き、教団を解散に追い込む腹つもりのようだ。

 果たして、李政権は統一教会との「戦い」に勝てるだろうか?