2025年12月28日(日)

 北朝鮮からの漂流船も白骨体もゼロ!大和堆に押し寄せていた北朝鮮の漁船はどこに消えた?

北朝鮮の漁船(「JPニュース」から)

 例年11月から12月にかけては全長10メートル前後の北朝鮮の老朽化した木造船が日本海の海岸に漂流、漂着するのだが、ここ数年その種の話しを聞かなくなった。

 「コロナ」期間の閉鎖状況から抜け出し、中国に加えロシアからの燃料供給で遠洋操業に支障はないはずだ。加えて、今年は5年前の第8回労働党大会で打ち出された「5か年経済計画」の最終年度に当たり、水産機関も目標達成に向け追い込み入っている時期だ。それだけに日本の漁場に出没しないのは摩訶不思議な現象である。

 北朝鮮の漂流船は金正恩(キム・ジョンウン)政権が発足した翌年の2013年(87件)か目立ち始め、2015年から2019年までの過去5年間だけで約600隻が日本に漂流、漂着していた。2019年10月には日本水産庁の取締船と北朝鮮漁船との衝突事故も起きた。

 北朝鮮からの漂流船は金総書記が2013年12月26日に政権発足後初めて軍の水産部門会議を開き、食糧問題解決のため漁獲量の拡大を呼び掛けたことに起因していた。

 「年間の水産量を飛躍的に増やすよう大胆かつ大きな目標を掲げ、戦え!」との金総書記の号令に従い「労働新聞」や「朝鮮中央通信」など北朝鮮メディアは「漁は戦闘、漁場は戦場、漁師は戦士(戦場で戦う兵士)」と呼び、戦闘には犠牲は付きものであるとして犠牲者(遭難者)を「殉職」扱いにしていた。例えば、当時、朝鮮中央テレビは以下のように漁師らを扇動していた。

 「雨が降り、風速は18メートル、波高は3メートル、それでも『戦場を離れるわけにはいきません。操業させてください!』との連絡が後を絶たない。仮に殉職したとしても党への忠誠の一念から暴風雨をもろともせず、魚を取っている」

 年間目標を達成するため無理した結果が、日本への漂着だ。漂着場所は日本海を挟んで北朝鮮と面している新潟、石川、福井、秋田、青森から北海道にまで及んでいた。兵庫県美方郡新温町沖にも無人船が漂着したこともあった。また、2017年から2019年までの3年間で合わせて54人の遺体(白骨体)が漂着していた。

 しかし、今年を含め過去5年間、1隻の漂着も、また遺体の発見もなかった。また、スルメイカなどの好漁場で知られる能登半島沖の「大和堆(やまとたい)」を含め排他的経済水域(EEZ)内に入って操業していた北朝鮮船は2022年何隻かあったが、直近の3年間はほとんど耳にすることはない。

 何とも不思議だ。というのも2020年1月8日に公表された海上保安庁のデーターによると、2019年に大和堆で違法操業していた北朝鮮漁船が1308隻に及んでいたからだ。

 日本の漁場から消えた理由としては遠出せずに近海でも取れるからなのか、それとも大和堆などで以前のようにイカなど魚が捕れないからなのか定かではない。ただ、一つ考えられるのは北朝鮮の漁船がロシア沿海での操業が認められている可能性である。

 北朝鮮の木造船は日本のEEZだけでなく、ロシア沿海にも出没していて、2018年の1年間で大和堆での約2倍以上の3000隻がロシアで違法操業していた

 当時、ロシア連邦保安局(FSB)のクリショフ国境警備局長によると、ロシア国境警備当局による拿捕が絶えず、2019年の1年間に拿捕された北朝鮮漁船は344隻、身柄を拘束された漁民だけで3754人に達していた。

 北朝鮮の不法操業は露朝間の外交問題にまで発展していたが、金総書記の2019年4月の訪露を機に露朝関係が改善され、さらに北朝鮮がロシアのウクライナ侵攻を支持しただけでなく武器支援に乗り出したことでその見返りとしてロシアが沿海での北朝鮮漁船の操業を認めた可能性が考えられる。

 数十万円から百数十万円もかかる漂着船の解体など処理費用は自治体が負担していたが、年々数が増えたため今では日本政府が全額拠出しているが、国民の税金が投入されていただけに北朝鮮の漁船が漂流しないことは日本にとっては望ましいことだ。