2025年12月31日(水)
訪日を前に李在明大統領を「国賓」として一本釣りした中国 注目は上海の大韓民国臨時政府庁舎訪問!
朴槿恵元大統領が2013年に訪中した際に黒竜江省のハルビンに建てられた「安重根記念館」(JPニュース)
李在明(イ・ジェミョン)大統領が1月4日から7日まで3泊4日の日程で中国を訪問する。習近平国家主席の招請による国賓訪問である。
両首脳は4日から6日まで北京で首脳会談を予定しているが、韓国慶州APEC(アジア太平洋経済協力会議)での会談からまだ2か月しか経っていない。年が変わったとはいえ、2か月の間に中韓首脳が相互訪中し、首脳会談を行うのは極めて異例である。
李大統領の電撃訪中計画を発表した青瓦台(大統領府)の姜由驕iカン・ユジョン)報道官は「両首脳は2カ月ぶりに再会し、戦略的パートナー関係の全面的な回復の流れを強固にし、供給網(サプライチェーン)や投資、デジタル経済、越境犯罪対策、環境など国民生活に実質的に寄与する具体的な成果を上げるための方策を議論する予定」と、訪中の目的を説明していたが、本来ならば、李大統領は中国よりも先に日本を訪れることになっていた。
李大統領は滞在中に両国の未来の協力をけん引するベンチャー・スタートアップ分野で両国企業のパートナーシップを促進するため上海を訪れる予定だが、上海には日本の植民地時代に抗日独立運動家・金九(キム・グ)らが樹立し、1926年から1932年まで使われた大韓民国臨時政府庁舎がある。
今年は大韓民国臨時政府(上海臨時政府)庁舎設置から100年と金九の生誕150年の年である。韓国では建国記念日を巡り、歴史認識論争が絶えない。
最大野党「国民の力」など保守派は李承晩(イ・スンマン)政権が発足した1948年8月15日を建国記念日に指定しているのに対して与党「共に民主党」など進歩派は1919年4月11日の大韓民国臨時政府の日を主張し、「建国論争」を続けている。
従って、李在明大統領が韓民国臨時政府庁舎を訪れるのは必至で高市早苗首相の台湾有事発言を巡って日本批判を展開している中国が李大統領の庁舎訪問を大々的に宣伝するだけでなく、韓国を取り込むため忖度する可能性も考えられる。
そのことは2014年1月に中国黒龍江省のハルビン駅に建立された「安重根義士記念館」が大統領就任から3か月後の2013年6月に日本を頭越しに訪中した朴槿恵(パク・クネ)大統領(当時)への「贈り物」であったことからも窺い知ることができる。
周知のように日韓の間では李大統領が1月中旬を目途に訪日し、高市首相の地元・奈良で日韓首脳会談を行う方向で調整していた。魏聖洛(ウィ・ソンラク)国家安保室長が先週(22日)来日し、会談の議題などを調整していた。仮に訪日が実現すれば、今年8月に続き2度目となる。李在明大統領は今年6月4日に就任してから半年しか経っておらず1年もしない間に2度も訪日するのは極めて異例の出来事である。
筆者は12月16日付けの「『竹島』も『徴用工』も『佐渡金山』騒動も意に介さず来日する李在明大統領は『親日大統領』!?』の見出しの記事で「日中対立の最中、日本を孤立させようとする習近平主席の誘いに乗らず、高市首相の顔を立てて訪日するわけだから日本は李大統領に『親日大統領』の称号を授けても良さそうなものだ」と書いたが、中国はそれほど外交オンチでもなく、韓国もまたしたたかであった。
中国は北朝鮮が米国に靡くのを阻止するため米朝首脳会談を前に北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記を中国に招請したのと全く同じ手法を使い、韓国を取り込もうとしており、韓国もまた「中国にも台湾にもシェシェ」の「八方美人外交」を日中にも適用させようとしている。
良好な日韓関係からして1月4日からの李大統領の訪中に関しては韓国から日本政府に事前通告があったものと推測されるが、訪日を前に李大統領を一本釣りした中国には苦々しく思っているのではないだろうか。
日本同様に中国を苦々しく思っている国がもう1か国いる。北朝鮮である。
習主席は就任以来2013年に国家主席に就任してから2014年7月と今年10月と2度訪韓しているが、北朝鮮には1度しか訪れていない。金正恩(キム・ジョンウン)総書記は習首席の顔を立てて9月初旬に「中国人民抗日戦争と世界反ファシズム戦争勝利80周年記念行事」に参加したのに10月10日の朝鮮労働党創建80周年の行事に出席したのは習首席ではなく、NO.2の李強総理だった。
北朝鮮は慶州での中韓首脳会談で習主席は北朝鮮が中韓首脳会談直前に朴明浩外務次官の声明を通じて「(北朝鮮の非核化は)数千回、数万回言っても決して実現できないバカげた夢だ」と警告したのに習主席は耳を貸さず、李大統領と北朝鮮の非核化についても話し合っていた。そして、来年早々に習近平国家主席の招請による李大統領の国賓訪中である。年早々、北朝鮮もまた不愉快極まりないはずだ。
中国としては北朝鮮が莫大な資金を投じ、5つのホテルを建設した三池淵観光地区への中国人観光客の渡航解禁で北朝鮮の怒りを鎮めようとするだろうが、日中の外交紛争に沈黙を守り続けている金正恩政権がそれで矛を収めるかどうかは未知数だ。
日中を軸に展開される北東アジアの外交戦から目が離せない。