2025年12月31日(水)

 朝鮮半島で今年、何が起きたのか! 2025年朝鮮半島「10大ニュース」

高市早苗首相と李在明大統領と金正恩総書記(首相官邸と大統領室と労働新聞から筆者キャプチャー)

 今年も朝鮮半島では様々な出来事、事件が発生した。韓国と北朝鮮関連の特筆すべき出来事を「10大ニュース」として挙げてみることにする。

1.李在明政権発足(6月)

 尹錫悦大統領の失職に伴い、6月3日に第21代大統領選挙が行われ、前回(2022年3月)の大統領選挙で尹錫悦候補に0.7ポイント(約24万票)の僅差で惜敗した「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)候補が与党「国民の力」の金文洙(キム・ムンス)候補に約8.3ポイントの差を付け当選した。進歩勢力の「共に民主党」は文在寅(ムン・ジェイン)政権以来、3年ぶりに政権を奪還した。

2.尹錫悦大統領罷免(4月)

 1月15日に現職大統領として史上初めて逮捕、拘留された尹錫悦大統領は4月4日に開かれた憲法裁判所で裁判官8人全員一致で大統領職を罷免された。野に下った尹前大統領は内乱頭目容疑を含め職権乱用、公務執行妨害、公選挙法違反容疑など8つの裁判を抱えている。すでに公務執行妨害の裁判では懲役10年を求刑されており、来年1月16日には第1審判決が下る。また、「内乱裁判」も1月には結審が終わり、2月初旬には1審判決が宣告される。有罪ならば、死刑もしくは無期懲役である。「

3.米韓関税交渉妥結(11月)

 米国と韓国は韓国が総額3500億ドル規模の対米投資を約束したことで韓国に課している関税を25%から15%に、自動車関税も25%から15%に引き下げることだ妥協が成立した。韓国は対米投資3500億ドルのうち争点だった現金投資を2000億ドルとし、年200億ドルを限度に年払いすることになった。その一方で韓国は関税交渉で米国から原子力潜水艦の建造(導入)許可を取り付け、また今後ウラン濃縮や使用済燃料再処理の権限拡大に関しても米国からお墨付きをもらった。

4.金正恩訪中(9月)

 金正恩(キム・ジョンウン)総書記が中国人民抗日戦争と世界反ファシズム戦争勝利80周年記念行事に出席するため9月に訪中した。父亡き後、2012年に政権の座に就いてから4度目の訪中となったが、今回は軍部高官を同行させず、経済担当の金徳訓(キム・ドククン)前総理(党書記)を会談に同席させた。中国から経済援助を引き出すのが目的だった。また、これまでとは異なり李雪主(リ・ソルジュ)夫人ではなく、「ジュエ」と呼ばれている娘を連れて行き、国際的な注目を浴びた。しかし、「ジュエ」は中国滞在中、大使館公邸に留まり式典など公の場には一度も姿を現さなかった。

5.労働党創建80周年軍事パレード(10月)

 北朝鮮は10月10日の朝鮮労働党創建80周年に際して中国共産党序列2位の李強総理、ロシアのメドベージェフ前大統領、べトナムの最高指導者、トー・ラム共産党書記長、ラオス最高指導者のトンルン・シスリット国家主席らを筆頭にブラジル、ニカラグア、赤道ギニア、メキシコ等から使節団を招いた。祖国解放戦争勝利(朝鮮戦争休戦)70周年記念軍事パレード以来、2年3か月ぶりに行われた軍事パレードでは金総書記を真ん中に中国、ロシアの指導者らが並び立ったことから中露朝対日米韓の新冷戦が取り沙汰された。

6.日韓シャトル外交完全復活

 李在明大統領が8月23日に来日した。大統領就任後の最初の外遊地に日本を選んだのは歴代大統領としては初めての出来事である。世論調査では国民の半数が東京で行われた石破茂首相(当時)との首脳会談を「意味のある第一歩」と評価した。石破首相との会談では17年ぶりに共同記者声明が発表され、未来志向の日韓関係が約束された。10月にマレーシアで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議では高市早苗新総理とも会談し、日韓関係の重要性を強調した。その結果、高市首相は10月に慶州で開催されたAPEC(アジア太平洋諸国経済協力体)首脳会議に出席し、李大統領と2度目の首脳会談を行った。来年1月には李大統領の訪日が予定されており、日韓のシャトル外交は完全に軌道に乘ることになった。

7.統一教会スキャンダル(9月)

 尹錫悦前大統領の夫人、金建希(キム・ゴンヒ)氏にネックレスなど高価ブランド品を贈与したことを引き金に発覚した統一教会の政界工作は韓国政界を揺るがす一大スキャンダルに発展している。「教主」の韓鶴子(ハン・ハッジャ)「世界平和統一家庭連合」総裁は政治資金法違反、請託禁止法違反など4件で起訴されているが、田載秀(チョン・ジェス)海洋水産部長官ら政府与党の議員らにも金品を贈った疑いが浮上したことで韓国国会はすべての国会議員を捜査する特別検察官制度の設置を決めた。李大統領が政教癒着は「憲法違反なので(教団の)解散も検討すべき」と法務部に指示していることから仮に韓総裁に有罪が宣告されれば、解散命令を出される可能性もある。

8.韓国検察庁廃止へ(9月)

 検察庁を廃止し、法務長官配下の高位公職者捜査庁(公捜庁)と行政安全部長官配下の重大捜査犯罪庁(重捜庁)をそれぞれ新設する内容の政府組織法改定案が9月26日に国会本会議を通過した。1948年に創設されて以来、犯罪捜査の先鋒の役割を担ってきた検察庁は78年目にしてその看板を下ろす。2026年9月に改定案が施行されれば、検察(公捜庁)は直接捜査ができず、警察から送致された事件のみ補完捜査が可能となるが、政府と与党は捜査権は重捜庁に委ねる方針である。

9.慶州APEC総会(10月)

 韓国の古都、慶州で2005年の釜山開催以来、20年ぶりにAPEC首脳会議が10月31日から11月1日まで開かれ、11年ぶりに訪韓した習近平主席や高市早苗首相を含め各国首脳らが参加した。トランプ大統領も訪韓し、米中首脳会談が行われた。総会では3大重点課題である連結・革新・繁栄を基本的な枠組みとし、貿易と投資、デジタルと革新、包容的成長などAPECの核心的な懸案について議論があり、「AIイニシアティブ」と「人口動態の変化に関するAPEC協力枠組み」について「慶州宣言」が採択された。

10.新型ICBM「火星20型」がお披露目(10月)

 北朝鮮のミサイル発射は例年以上に少なった。1年を通して10回程度だった。潜水艦発射弾道ミサイル、対空ミサイル、巡行ミサイル、戦略巡航ミサイル、極超音速ミサイル、艦対地戦略巡航ミサイルなどの試射が行われたが、最も注目されたのが労働党創建80周年の軍事パレードでお披露目された次世代ICBM「火星20型」である。炭素繊維複合材料を使用した最大推進力が1960kN(約200トン)の新型固体燃料エンジンを使用する、複数の弾頭搭載が可能な多弾道ミサイルであるからである。韓国の安圭伯(アン・ギュンベ)国防相は年内にも発射実験が行われる可能性があると示唆していたが、試射は来年早々にも行われる可能性高い。