2025年12月8日(月)
「日韓レーダー照射事件」を彷彿させる中国軍機の自衛隊機へのレーダー照射
韓国市民団体の「日韓GSOMIA」破棄のデモ(「JPニュース」から)
火災は、消火活動が遅れれば、次々と燃え移り、それだけ被害も拡大する。
紛争も同様に早い段階で沈静化しなければ、さらにエスカレートし、にっちもさっちもいかない状況に陥ってしまうものだ。
日中の外交摩擦がまさにこのパターンだ。「日本は高市発言を撤回せよ!」「中国は大阪総領事の暴言を謝罪せよ!」の言い争いから始まった対立は口喧嘩からとうとう経済、軍事分野にまで拡大してしまった。
周知のように中国は高市早苗首相の台湾有事発言に猛反発し、中国人観光客の訪日を規制し、さらに日本人歌手の中国公演不可を含む文化交流を中止し、今まさに中国が独占しているレアアースの日本企業への輸出も規制しようとしている。
そうした最中、最悪の事態が起きた。中国軍機が12月6日、自衛隊機に向けレーダーを照射したのである。
小泉進次郎防衛大臣はその前日に出演したテレビ番組で日中関係について意見を求められた際に「マレーシアで11月にカウンターパートナーの(中国の)董軍国防部長と率直にお互いの立場、懸案事項を話し合い、日中間の戦略的互恵関係と安定的、建設的な関係構築を進めていくことで一致した」と語っていたが、安定的、建設的な関係を築く筈だった中国軍との間で争いごとが起きたのだ。
日本政府は11月7日の「高市発言」以来、日中関係をこれ以上こじらせるのは得策ではないと判断し、冷静に対応してきたが、中国軍によるこの「レーダー照射事件」は中国が振り上げた拳を下す気がないことを示唆している。これにより日中対立は長期化する見込みだ、そのことは2018年に起きた「日韓レーダー照射事件」が暗示している。
「日韓レーダー照射事件」も奇遇にも12月に起きていた。慰安婦合意の見直しや元徴用工の補償問題で揉めてに揉めていた最中に能登半島沖の日本の排他的経済水域(EEZ)内で韓国駆逐艦が12月20日に日本のP1哨戒機に向け火器管制レーダーを照射したのである。
今回も小泉進次郎防衛大臣が事件発生の翌日に記者会見を開き、中国軍機のレーダー照射が「航空機の安全な飛行に必要な範囲を超える危険な行為である」と、中国に抗議し、再発防止を申し入れていたが、7年前も岩屋毅防衛大臣(当時)が記者会見を開き、「韓国側の意図ははっきりと分からないが、極めて危険な行為だ」と批判し、韓国側に再発防止を求めていた。
日本は当初、突発的な、偶発的な事故とみなし、事件発生から4日後の12月24日には金杉憲治アジア太平洋州局長(当時)が訪韓し、韓国外務省に再発防止を求め、さらには韓国国防部で長官級会談や統合幕僚会議と合同参謀本部との間で実務級会談も行ったが、韓国は頑としてレーダー照射を認めなかった。
そのため日本は12月28日に「駆逐艦から数分間、複数回に渡りレーダーを照射された」「照射を受けた後、韓国側に無線で意図を問い合わせたが応答はなかった」とする映像を公開(13分7秒)せざるを得なかった。
映像にはP−1が艦艇の撮影を実施するために駆逐艦の右艦尾から右舷側を通過し、次いで右旋回したのち2艦をいれた全景を撮影するために1500フィート(450m)まで上昇を開始したところ、駆逐艦の左舷約500メートルになったところで火器管制レーダー照射を探知したところが映っていた。
これに対して韓国国防部は即座に「日本が一方的に映像を公開し、事実関係をミスリードしている」と批判し、「我が方はレーザー照射をしていない」と繰り返し、挙句の果てには韓国国防部も4分26秒の映像を公開し、「日本が威嚇的な低空飛行をしていた」として逆に日本に謝罪を求める声明を発表する始末だった。
韓国が主張する「威嚇的な低空飛行」について日本が「自国のEEZ内に艦船がいれば、ある程度接近して艦番号や装備の状況を確認するのは当然だ。戦闘機ならまだしも、丸腰の哨戒機が高度150メートル、距離で500m離れて飛行したことで駆逐艦は脅威に感じるのだろうか」と直ちに反論したのは言うまでもない。
結局、この件に関する日韓の外交レベルの実務協議も防衛当局者協議も打ち切りとなり、その後、両国の関係が韓国司法当局による日本企業の資産差し押え、日本の対韓輸出厳格化とGSOMIA(日韓秘密軍事情報保護協定)の破棄、韓国の日本製品ボイコット騒動と、戦後最悪の事態に陥ったことはまだ記憶に新しい。
日本が主催した2019年6月の大阪でのG20サミット首脳会議は安倍晋三総理(当時)が「多忙を理由」に日韓首脳会談をパスするなど文在寅(ムン・ジェイン)大統領在任中(〜2022年5月)は日韓関係が好転することはなかった。
今回、日本が抗議する中国軍機のレーダー照射について中国は海軍、防衛省、そして外務省までが「空母『遼寧』の編隊が宮古海峡の東側で通常通り飛行訓練をした際に自衛隊機が複数回接近し妨害行為を行った」と主張し、「日本の戦闘機が中国側の正常な軍事活動に対して頻繁に接近偵察・妨害を行うことが最大の海空安全リスクだ」と韓国と同じ理屈を述べていた。
結局、日韓当局は事件発生から4年半経った2023年6月、日米韓の関係強化を図る米国の仲裁もあってシンガポールでの日韓防衛相会談で照射の事実解明を棚上げにしたまま再発防止を図ることでやっとこの事件に幕を引くことができた。
果たして、日中に落としどころはあるのだろうか?