2025年2月1日(土)

 尹錫悦大統領は保釈される?されない?

ソウルの拘置所に移送される尹錫悦大統領(韓国合同取材団配信)

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が内乱容疑で1月15日に大統領官邸からソウル拘置所に拘引,拘留されてから早2週間以上が経過した。

 かつての職場だった検察に身柄を拘束された尹大統領は弾劾の可否を決める憲法裁判所の法廷には留置場から出廷している。週に2度、留置場と裁判所を行き交っている。

 尹大統領の弁護人団は旧正月連休期間(1月25〜30日)が終わったことでこれから尹大統領の保釈を申請することにしている。また、弁護人以外の一般人の面会禁止措置が解除されたことで与党「国民の力」の幹部らも尹大統領に面会し、保釈に力を入れることにしている。

 弁護人団は保釈理由として▲拘束状態の維持は刑事裁判と同様に重要な弾劾審判における大統領の防御権の妨害に当たる▲出国禁止措置が取られており、海外逃亡の恐れもない▲関係者が全員拘束されている状況下では連絡を取り、口合わせするなど証拠隠滅の恐れもない▲野党の李在寅(イ・ジェミョン)代表も、また最終審(大法院判決)により現在は収監の身にある第2野党「祖国革新党」の゙ 国(チョ・グック)前代表もいずれも在宅起訴され、裁判を受けていたことからバランス(公平な対応)を取るべきことなどを挙げている。何よりも内乱罪の捜査権のない検察が大統領を逮捕、調査、拘束するのは違法であるというのが最大理由である。

 刑法95条によれば「死刑、無期または長期10年以上の懲役や禁固に該当する罪を犯した者」は原則として保釈されない。実際に内乱の共謀者である金龍顯(キム・ヨンヒョン)国防長官も「国内では顔が知らており、逃げ場はない」ことを理由に挙げ、保釈を申請したが、裁判所は認めなかった。

(参考資料:「内乱共謀」容疑の金龍顯前国防長官に対する検察の起訴状)

 従って、有罪となれば「内乱の首謀者」として死刑、もしくは無期懲役や無期禁固刑が宣告される尹大統領の保釈は不可能に近い。加えて、運悪くも尹大統領の保釈を審査する裁判所は金国防長官の申請を棄却した裁判所と同じソウルソウル中央地方裁判所刑事25部である。

 但し、刑法96条によれば「相当な理由がある場合」は保釈が認められる。内乱の共謀者である趙志浩(チョ・ジホ)警察庁長(警察庁長官)がこのケースに当てはまる。趙被告人は血液癌の悪化を理由に1月23日に保釈されている。

 趙被告人は▲裁判所が指定する日時と場所に出席し、証拠隠滅しないことを誓約する▲移動を居住地と病院に制限する▲裁判所の許可なく出国しないことを誓約する▲保釈金1億ウォンを納付することなどが条件だった。

 尹大統領も病気治療を名目にすれば、保釈の可能性はゼロではない。確か、尹大統領は1月21日に憲法裁判所の弾劾審判の後、拘置所に移送される直前に軍の病院で治療を受けていた。そうしたことから健康上の問題を理由に保釈を申請するのではと囁かれたが、その後、持病の眼科治療と定期検査のためだったことが判明した。

 趙被告人の場合は身柄を拘束された後に治療を受けた翰林大聖心病院から「感染すれば、危篤状態となり、致命的になりかねないので格別な衛生管理が必要である」との診断書を出してもらっていた。趙被告人はそのうえで「歴史的な事件の真実を詳細に明らかにするため病院で治療を受けながら公判に臨むようにさせていただきたい」と裁判所にそれなりの「誠意」を示していた。

 検察に自供している趙被告人とは異なり、尹大統領は容疑を全面否認しており、取り調べにも非協力的であるため裁判所が保釈を認める可能性は低いと言わざるを得ない。

 このまま保釈されないとなると、7月に予定されている内乱裁判の1審で無罪が宣告されない限り、尹大統領は外には出れない。仮にその間に、憲法裁判所で罷免され、失職すれば、在職中は捜査対象とならない職権乱用容疑が新たに追加され、この件でも起訴される羽目になる。まして、1審で有罪となれば、お先真っ暗で、後任の大統領に恩赦されない限り、生涯刑務所から出れないであろう。

 尹大統領としては裁判で勝訴することよりもまずはその前に何としてでも保釈を勝ち取りたいところであろう。

(参考資料:哀れ!大統領公邸からソウル拘置所に勾留された尹大統領の「処遇」)