2025年2月10日(月)
「尹大統領は憲法裁判官全員一致で罷免される」 元法制処長が断言したその理由は?
元法制処長の李石淵弁護士([JTBC」テレビから)
尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の弾劾審判は憲法裁判所で現在、審議中だが、来月中旬までには結審が出るものとみられている。
憲法裁判の審議が進むにつれて、保守陣営の弾劾反対、罷免反対の声は日々高まり、毎週土曜日に開かれている集会、デモでは賛成派を圧倒し、世論調査によると、弾劾賛否はほぼ拮抗しているようだ。
現状の勢いだと、「無罪になるかもしれない」と、大統領本人も、弁護団も、与党「国民の力」も、また大統領を支持する保守層も期待を膨らませているようだが、一昨日、李明博(イ・ミョンパク)政権時代に第28代法制処長に任命された?石淵(イ・ソギョン)弁護士が「JTBC」テレビに出演し、意外にも冷水を浴びせる発言をしていた。
法制処は日本で言うところの、中央官庁の一つ、内閣法制局にあたる。処長は韓国では長官を指す。
今年71歳の李石淵弁護士は「保守系元老法曹人」として広く知られているが、その経歴が実にユニークだ。
軍事政権(盧泰愚政権)時代の1989年に憲法裁判所憲法研究官として在職した後、文民政権(金泳三政権)時代の1994年に弁護士に転じてからは進歩系の「経済正義実践市民連合」や「民主社会のための弁護士の会」に加入し、社会運動に関わっていた。
しかし、その後、一転、保守に転向し、「ニューライト全国連合」の常任代表として保守活動を行い、2004年の進歩系大統領、盧武鉉(ノ・ムヒョン)弾劾裁判では訴追側(国会法制委員会)の代理人を引き受け、弾劾の急先鋒に立った。
法制処長退任(2010年)翌年の2011年のソウル市長選挙では保守与党(ハンナラ党)の候補として名前が上がり、本命候補の羅卿?(ナ・ギョンウォン)候補と指名を競ったこともあった生粋の保守派である。以下は、「JTBC」の質問への李弁護士の回答である。
――弾劾審判の本質と最大の争点は何か?
大統領に対する弾劾審判は大統領に対する刑事責任を問う裁判ではない。大統領が職務を遂行する過程で憲法、法律を犯したかどうかを問う裁判だ。即ち、大統領の弾劾審判は罷免の可否を決めるものである。大統領が戒厳令を宣布する過程での手続き上、憲法条項が定めた条件を守ったのかどうかが重要なのである。この件では二つ例を挙げたい。一つは、戒厳令を宣布するには憲法上、国務会議(閣僚会議)の審議を経て、会議録が作成され、国務委員が署名することになっている。今回、これが守られていないのは公知の事実だ。次に戒厳令を宣布するには実質的な条件として戦時、事変あるいはこれに準じる国家非常事態でなければならない。巨大野党の横暴は非常事態には絶対に該当しない。非常事態でもないのに公共の安寧と秩序を維持するため兵力を動員してはならない。今回は明らかに憲法に反している。
――では、裁判では完全一致で罷免の決定が下されるとみているのか?
「はっきりしている。刑事責任がどうのこうのこれ以上、付随的で非本質的な内容で憲法裁判所は進まないと思う。従って、私は全裁判官が一致して罷免の決定を下すと思う。3月初旬前には憲法裁判所が宣告すると思う。なぜならば、証拠が余りにも明白だからだ。全国民が全世界が見ていたではないか。「弾劾陰謀論」も「弾劾計画論」も「工作論」も入る余地はないと思う」
――大統領側が憲法裁判官らの政治性向や経歴などを問題にしているが、このことについてはどうみているのか?
「大統領に対する弾劾審判は高度の政治的司法裁判である。従って、そうしたベースに則り、憲法裁判所の構成は大法院(最高裁判所)の構成とは異なり、憲法で定められている。大統領が指名する3人、大法院長(最高裁長官)が指名する3人、そして国会(与野党)が選出する3人と、多様性が生命となっている。否が応でも憲法裁判官の政治性向は当然、指名する側の政治的性向が反映せざるを得ないようになっている。今回の事件は憲法の本質、基本理念に関することなので保守であれ、進歩であれ誰が裁判官に指名されたとしても憲法違反に対しては一致する対応をすると思う」
罷免は8人の裁判官のうち3分の2が弾劾に賛成しなければ成立しない。思えば、弾劾裁判の先輩にあたる朴槿恵(パク・クネ)元大統領の時も8人の裁判官のうち6人が保守派と言われ、少なくとも3人が罷免に反対すれば、弾劾は棄却されるはずだった。ところが、蓋を開けてみると、8人全員が罷免に賛成していた。
歴史は繰り返されるのか、それとも?
(参考資料:尹大統領と政権与党の支持率急上昇の5つの原因)