2025年2月14日(金)

 韓国で話題の「金与正の夫」 11年前に軍総政治局副部長ならば今はもっと出世しているかも

金正恩総書記の実妹の金与正副部長(朝鮮中央テレビから)

 金正恩(キム・ジョンウン)総書記の実妹、金与正(キム・ヨジョン)党副部長が韓国でちょっとした話題になっている。脱北者によって夫の素性が明らかにされたからだ。

 証言した脱北者は劉炳宇(リュ・ヒョンウ)元駐クウェート代理大使。平壌外国語大学でアラビア語を専攻し、外交部に配属。駐クウェート大使館に派遣され、徐昌植(ソ・チャンシク)駐クウェート大使が解任されてから臨時代理大使を務めていた2019年9月に密かに韓国に亡命していた。

 韓国に入国してからは名前も変え、2021年2月に米国の「CNN」とのインタビューでその存在が明るみに出るまでは誰にも知られることなく韓国政府の保護の下、家族と共にひっそりと暮らしていた。

 米国のメディアでデビューした以降は韓国のメディアに頻繁に出て、北朝鮮の対外活動、特に外貨獲得の内情について語っていた。

 妻の父親が金総書記の統治資金(裏金)を調達、管理する朝鮮労働党「39号室」の全日春(チョン・イルチュン)前室長だったこともあって、義父を通じて北朝鮮の権力内部の情報にもそれなりに精通していた。

 劉氏の話では北朝鮮国内にいた頃の2014年9月に義父と一緒に平壌近郊の大成山の麓にある金兄妹の実母、高容姫(コ・ヨンヒ)の墓参りをした際に義父に紹介され与正副部長と挨拶を交わしたようだが、隣にいた身長180cmぐらいの美男子を見て、直ぐに夫であることを察知したとのころである。義父の家で二人の結婚式の写真を見せられていたからだ。写真には金総書記と李雪主(リ・ソルジュ)夫人を真ん中にチマチョゴリを着た新婦の与正と新郎が両脇に立っていたとのことである。一般的には新郎新婦が真ん中に立って、身内は脇に立つが、金総書記の場合は例外のようだ。

 劉氏によると、二人は金日成総合大学の特別班(6か月コース)の同級生で恋愛結婚したそうだ。夫の肩書は軍総政治局軍団指導部副部長で、これまで出回っていた金日成大学物理学卒とか、外貨獲得の仕事をしていたとの情報は「いずれも間違いである」と否定している。

 同級生ならば、夫も2014年の時は満で27歳だ。与正氏も2014年11月に「(宣伝担当の)党副部長」として紹介されていたので軍総政治局軍団指導部副部長の肩書は不自然ではない。逆に言うと、この時から11年も経過しているので今ではさらに高い要職についている可能性が考えられる。

 与正氏が2015年1月2日に兄の平壌育児院視察の際に同行した際に公開された写真をみると、左手の薬指に指輪をはめていた。結婚したのが2014年秋頃とされているが、おそらく母親の墓参りし、結婚報告をしていた可能性も考えられなくもない。

 韓国のメディアの中には夫の写真をスクープしようと、早くも2022年6月に朝鮮中央通信が金総書記を筆頭に労働党幹部らがコロナ関連で自宅にある医薬品を人民に奉仕する記事を掲載した際に、与正氏が薬品の入った段ボールを男性に渡している写真を指し、この男性夫であると報じているメディアもある。

 夫である理由については「事務員ならば与正氏を敬い腰を屈めて受け取るか、頭を下げるのにそうはしてなかったことや与正氏も僅かながら微笑んでいたからである」と報じている。男性は横を向いており、マスクもしているので写真からは目のあたりしかわからない。

 韓国の情報機関「国家情報院」は「与正の家族関係については綿密に分析中」とコメントとしているが、これといった新たな情報を持ってないようだ。