2025年2月17日(月)

 4年ぶりに復活した「父親の誕生日」宮殿参拝に娘を同行させないのはなぜ?

父親の生誕日に太陽宮殿を参拝した金正恩総書記と妹の与正氏(朝鮮中央通信から)

 金正恩(キム・ジョンウン)総書記が父親である故・金正日(キム・ジョンイル)前総書記の生誕日(光明星節)に際して2月16日に錦繍山太陽宮殿を訪れていた。

 真夜中の午前0時きっかりに宮殿を参拝するのが慣例となっているが、配信された写真を見る限り、極寒のせいか、どうやら日が昇った午前中に参拝したようだ。

 金総書記の父親の誕生日の宮殿参拝は2021年以来、実に4年ぶりである。この時は、崔龍海(チェ・リョンヘ)最高人民会議常任委員長をはじめ4人の政治局常務委員を筆頭に政治局員、政治局員候補及び軍幹部らが揃って随行していたが、今回の同行者は朴正天(パク・ジョンチョン)、李煕用(リ・フィヨン)の両書記と努光鉄(ノ・グァンチョル)国防相、金才龍(キム・ジェリョン)党規律調査部長、それに妹の金与正(キム・ヨジョン)副部長の5人だけだった。

 金副部長を除くと全員が政治局員であるが、いずれも党の序列では低いほうだ。金才龍部長が最も高く8位で、党軍政指導部長の朴書記は10位、努国防相は14位、党幹部部長の李書記は18位にランクされている。

 金総書記の行くところ影のようについて回る常連の趙甬元(チョ・ヨンウォン)党組織指導部長を含む5人の政治局常務委員は誰一人姿を現してなかった。また、娘のジュエも同行していなかった。

 これまで金総書記は「光明星節」の参拝には妹の他に李雪主(リ・ソルジュ)夫人も2回(2013年と2016年)連れていた。ちなみに2013年はこの年の12月に処刑された張成沢(チャン・ソンテク)党行政部長の妻である叔母の金慶喜(キム・ギョンヒ)氏も随行させていた。

 金総書記は李雪主夫人とは父親が存命中の、後継者としてお披露目された2010年の年に結婚しているが、李夫人は2012年7月25日に陵羅人民遊園地竣工式に出席した折、朝鮮中央テレビが「夫人の李雪主同志」と報道するまでその存在は伏せられていた。従って、2013年の参拝は夫人としての初の公式参拝となった。

 二人の間に「ジュエ」と称される娘がいることが初めて明らかにされたのは大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星17」が発射された2022年11月18日である。

昨年12月に元山・葛麻観光リゾート開発地を視察した金親子(朝鮮中央通信から)

 朝鮮中央テレビが「火星17」の発射場に白いダウンジャケットを着た女の子を「金総書記の愛するお子様」と報道したことで世界中に知れ渡ることになった。以後、様々な党や国家関連行事に父親と一緒に現れている。父親の視察にも頻繁に同行している。

 その回数を調べると、2022年に2回だったのが、23年は人民軍創建75周年(2月8日)や建国75周年式典(9月9日)を含め18回、24年も労働党創建79周年記念式典(10月10日)や元山・葛麻観光リゾート開発視察(12月29日)を含め14回。今年も新年の祝賀大公演に父親と共に出席している。

 ところが、奇遇にも金総書記は娘をお披露目した2022年から父親の「墓参り」をしていない。参拝を再開したならば、娘を同行させ、祖父が眠る宮殿に参拝させても不思議ではない。

 娘が2010年生まれの第1子ならば、また、李夫人との結婚が承諾されていたならば、父親が亡くなったのは2011年12月17日なので存命中に当然、出産を報告し、孫を見せていた筈である。

 金総書記が仮に娘を後継者として育成しているならば、いつかは参拝に同行させることになるが、今はまだその時ではないのかもしれない。ちなみに、金正恩総書記が4月15日の祖父、金日成主席の誕生日(太陽節)に初めて参拝したのは父親没後の2012年からであった。