2025年2月3日(月)
「北朝鮮は不良国家」の米国務長官の発言は「問題発言」にはならない
直近の金正恩総書記(朝鮮中央通信から)
韓国のメディアは新聞も、テレビもルビオ米国務長官が米メディアとのインタビューで北朝鮮を「ならず者国家」と発言したことに対して「(我々を)冒涜する妄言だ」と反発し、米国こそ「最も不良な国家である」と非難した北朝鮮外務省の報道官談話を横並びで伝えていた。
北朝鮮が第2次トランプ政権発足後、公式に米国を非難したのは初めてである。トランプ政権が韓国をスルーして北朝鮮と対話局面に入るのを警戒していた韓国からすれば北朝鮮と米国が遣り合うのは棚から牡丹餅で大歓迎である。
北朝鮮はルビオ長官から「ならず者」と呼ばれたことに癇癪を起しているが、ルビオ長官でなくても米国人の多くは北朝鮮を「ならず者」と思っているだろう。
国際社会の忠告を無視し、▲核・ミサイル開発に走る▲国連安保理の全会一致の制裁決議を無視する▲国際金融機関にサイバー攻撃を仕掛け、暗号資産をハッキングする▲マネーロダンリングをする等その理由はいくらでもある。「ならず者」のレッテルが不服ならば、「トラブルメーカ」と呼ばれるべきであろう。
韓国は北朝鮮外務省スポークスマンの談話が「米国のいかなる挑発行為も絶対に黙過しないであろうし、いつものようにそれに相応して強力に対応していく」と締めくくられていることから前途多難な米朝関係を予測しているが、これは所詮、一過性に過ぎない。その理由として2点挙げられる。
第一に、談話の中で「彼の発言は新しいものではなく、他の面から見れば彼から我々に対する良い言葉が出たならば、もっと驚くべきだろう」と言っていることだ。ある意味で「ルビ発言」は北朝鮮からすれば、予想の範疇にあることだ。
振り返れば直近の歴代大統領は北朝鮮を「悪の枢軸国」(ブッシュ大統領)、「最も残酷で暴圧的で独裁体制」(オバマ大統領)、それにトランプ大統領も第1次政権時は国連総会での演説で「犯罪者集団」「堕落した政権」などの用語を使って激しく非難を浴びせていた。これらに比べれば、国務長官の発言はまだましなほうかもしれない。
第二に、北朝鮮もまた、米国を「世界で最も不良な国家」と、売り言葉に買い言葉でお返ししていることだ。通常、バトルは言い返して終わりである。
今回、「ならず者」が国務長官の発言でなく、仮にトランプ大統領が発した言葉ならば、事はそう簡単ではない。
前任者のバイデン大統領は大統領選挙期間中の2019年9月に行われたCBSTVとの対談プログラムで「金正恩は世界最悪の暴君の一人である」と酷評し、2021年1月に大統領就任すると、施政方針演説で「世界で最も抑圧的で、全体主義的な国の一つである」と公然と批判したことから米朝関係は悪化の一途を辿り、以後、バイデン政権がいくら対話を呼び掛けても北朝鮮は一度も応じることはなかった。
トランプ大統領は大統領選挙期間中もまた、大統領に就任してからも北朝鮮についてもまた金正恩(キム・ジョンウン)総書記個人についても批判めいた発言は一切しておらず、むしろ「賢明な男」だとか、「強いリーダシップを持った指導者である」と褒めちぎり、「彼が好きだ」とラブコールまで送っている。
従って、北朝鮮はトランプ大統領が3月4日に行われる施政演説で北朝鮮問題について言及するまでは対米方針、即ち手の内を見せない可能性が高い。
逆説的にみると、北朝鮮にとっては「ルビオ発言」によりむしろ準備中にある軍事偵察衛星発射の口実ができるのではないだろうか。そのことは談話の最後に「米国の対外政策を総括する人物の敵対的言行は、過去も現在も変わりが全くない米国の対朝鮮敵視政策を今一度確認してくれた契機となった」と言っていることからも想像できる。
トランプ大統領の施政方針演説までの1か月間、北朝鮮が大人しくしているのか、それともトランプ政権を揺さぶるのか、この1か月間の金総書記の言動が注目される。
(参考資料:トランプが関心を寄せる北朝鮮の観光リゾート地 日本海に面した元山海岸にコンドミニアムを建設?)