2025年7月1日(火)
昨年訪露で「水死説」が流れていた金日成軍事総合大学総長がロシアを再訪 追加派兵の布石!
昨年7月に訪露した時の金琴哲金日成軍事総合大学総長(朝鮮中央通信)
北朝鮮の国営通信「朝鮮中央通信」は金琴哲(キム・グンチョル)金日成軍事総合大学総長が率いる軍事代表団が昨日(6月30日)、モスクワに向け出発した、と伝えていた。
昨年7月に続いて2度目の訪露であるが、ロシア滞在中に変死の可能性が取り沙汰されていた人物である。
当時、ロシアのメディア「モスクワタイムズ」(7月16日付)は「北朝鮮の高位人物が7月11日にモスクワ近郊のアングステルム湖で水泳中に行方不明となり、翌日に水死体で発見された」と報じたことから韓国のメディアが騒ぎ出した。
名前が金琴哲総長と同姓同名だったことや発見された当時の状況や湖から引き揚げられた時の遺体の外見が還暦を過ぎた金琴哲総長と似ていたことからその可能性が取り沙汰されていたが、韓国の情報機関「国情院」は別人と結論付けていた。
今回の1年ぶりのロシア再訪で改めて健在であることが確認された。
前回は訪問先については一切言及されてなかった。しかし、今回はすでに露朝軍事協力を公式に認めており、派兵の事実も秘密にする理由がなくなったのか、「ロシア連邦軍参謀本部軍事アカデミーを訪問するため」と発表していた。北朝鮮の他国との軍事交流は国連安保理の制裁対象となっている。
金正恩(キム・ジョンウン)総書記の母校でもある金日成軍事総合大学は中隊長級以上の軍事指揮官に対する職務別教育を施す最上級の軍事教育機関であり、韓国に例えると、韓国の陸・海・空軍大学と国防大学院を合わせたものと匹敵する。
総長は国防相や軍総政治局長を歴任した金正角(キム・ジョンガック)次帥ら軍を退役した将軍らが歴任している。例えば、金琴哲氏の前任者は元海軍司令官の鄭明道(チョン・ミョンド)大将で、2013年から今年5月まで赴任していた。
鄭大将の後を受け、昨年5月に大学総長に就任した金琴哲上将は野戦軍出身で、軍の階級は上将。江原道・元山に駐屯する第10軍団の軍団長を歴任している。
金総長はロシア軍との間で軍事交流をした理由で昨年、米財務省の海外資産統制局(OFAかC)から制裁対象に指定されていた。
ロシアのショイグ安全保障会議書記は先月17日に訪朝し、金正恩総書記との会談でウクライナから奪還したロシア領、クルスクに新たに工兵や作業員6000人を派遣する約束を取り付けたことを明かしていたが、今回の金総長の訪露はこのことと無縁ではなさそうだ。
昨年の訪朝も「武力侵攻を受けて戦争状態になった場合、全ての手段で軍事援助を提供する」条項が盛り込まれた「露朝包括的戦略パートナーシップ条約」が交わされた数週間後に行われていた。
国会情報委員会の与野党幹事を務める与党「共に民主党」の朴善源(パク・ソンウォン)議員と最大野党「国民の力」の李成権(イ・ソングォン)議員が6月26日に記者団に対し明らかにしたところによると、「国情院」は「北朝鮮のロシアへの追加派兵が早ければ7〜8月にも行われる」との予想を示している。
その根拠として国情院は北朝鮮の派兵が昨年9月のショイグ安全保障会議書記の2度目の訪朝から約1カ月後に派兵が行われたことを挙げていた。
なお、北朝鮮メディアは追加派兵に関する合意については触れていない。