2025年7月12日(土)

 ロシア外相が平壌の順安飛行場ではなく地方空港の元山葛麻飛行場に到着 外国貴賓としては初めて

元山葛麻リゾート地(労働新聞から)

 ロシアのラブロフ外相が2日前に告示された通り、北朝鮮外務省の招きで7月11日に北朝鮮を公式訪問した。ラブロフ外相は13日まで滞在する。

 直前までマレーシアのクアラルンプールで開かれたASEAN地域フォーラム(ARF)に出席していたラブロフ外相一行を乗せた特別機は北朝鮮の首都、平壌の順安空港ではなく、日本海に面した地方都市の元山葛麻飛行場に到着していた。

 北朝鮮もARFの加盟国であるが、マレーシアは北朝鮮と断交しているので崔善姫(チェ・ソンヒ)外相を招かなかった。北朝鮮の外相が出席したのは2018年の李容浩(リ・ヨンホ)前外相が最後で、以後は開催国駐在の大使が代理出席している。

 ちなみに2018年当時は日本からは河野太郎外相が出席していたが、河野外相は晩餐行事で短時間だったが、李外相と通訳を介して対話を行い、「日朝対話をする用意がある。拉致問題の解決につながることが重要だ」と伝えていた。

 元首クラスを含め、外国の要人が訪朝の際に地方都市の空港を利用したのは後にも先にもこれが初めてである。元山葛麻地区を大型リゾート地に観光開発した北朝鮮が元山葛麻飛行場を単なるローカル飛行場ではなく、国際空港にしようとする目論見が透けて見える。また、今回の訪問日程が2023年10月の訪朝時とは異なり、1泊2日ではなく、2泊3日である謎も解けた。ラブロフ外相の訪問を機に元山葛麻リゾート地を積極的にPRするつもりのようだ。

 本来ならば2019年10月が完成予定だった元山葛麻開発リゾート開発は6年遅れて、今年6月24日に金正恩(キム・ジョンウン)総書記が出席し、竣工式が行われたばかりである。

 北朝鮮が「名実共に世界にまたとない我々の方式の海岸観光都市である」と自画自賛している人口30万人の元山市のこのリゾート地には2万人収容能力のホテルと旅館があり、海水浴サービス施設と多様なスポーツ・レジャー施設、商業および給食サービス施設が設けられている。近くには松涛園国際青年団キャンプ場もある。

 北朝鮮は元山を拠点に法洞郡の境にある馬息嶺スキー場、さらには平安南道の陽徳郡の温泉観光地区を繋ぎ、年間120万人の観光客を誘致する計画である。元山から三池淵まで飛行機で50分の距離にある。計画どおり事が進めば、観光は国連の制裁対象外となっているので大きな外貨収入となる。

 ロシア人が先陣を切って、現地に一番乗りしているが、ロシア沿海州の公式ホームぺージによると、昨年(2024年)北朝鮮を訪問したロシア人観光客数は約1500人と少ない。ロシアの沿海州当局は今年は1万人の水準まで増加するとの見通しを明らかにしているが、それでも収容能力からすると、圧倒的に少なく、これでは赤字である。

 露朝間では昨年12月には国境都市のハサン駅〜豆満江駅を結ぶ定期旅客列車の運行が再開され、今年5月8日には極東のウラジオストクとすでに国際観光都市に指定されている日本海の羅先市を繋ぐ定期便も再開している。羅先から元山までは船で15時間、また近くにある漁郎飛行場から元山葛麻空港までは飛行便で40分である。

 両国は最近、首都の鉄道連結で合意したばかりである。合意によると、約1万kmにも及ぶモスクワ〜平壌鉄道は毎月2回運航され、3日と17日が平壌発で、12日と26日がモスクワ発となる。

 元山には「招待所」と呼ばれる金総書記の豪華別荘があるのでラブロフ外相はおそらくここで金総書記に接見するのではないだろうか。

 この招待所について2013年9月に招かれたことのある元NBAのスター選手のデニス・ロッドマン氏は当時、イギリスの日刊紙とのインタビューで以下のように印象を語っていた。

 「7日間の日程のほとんどを金正恩の島で飲酒パーティとジェットスキー、乗馬などを楽しんで過ごした。テキーラでも何でも、何かを注文すれば必ず最高級のものが出てきた。連れて行ってもらった島は全てが彼一人のものだったというから半端じゃない。ハワイやスペインのイビサ島以上にすごかった。長さ60メートルの大型ヨットと数十台のジェットスキー、馬小屋に馬が一杯いて、足りないものはなかった。すべての施設は7つ星級で、世界最高の富豪も金正恩の生活を見れば、驚くだろう」

 接見場所が元山葛麻開発リゾート内の大型ホテルならば、なおさら脚光を浴びることになるであろう。