2025年7月16日(水)

 米国がウクライナにパトリオットならば北朝鮮もロシアにミサイルと援軍 ウクライナ戦は米朝の代理戦争に!

「露朝包括的戦略パートナーシップ条約」文書(朝鮮中央テレビ)

 トランプ政権がNATO(北大西洋条約機構)を介してウクライナを支援するため弾薬や武器、それに地対空ミサイルシステム「パトリオット」や迎撃ミサイルなど数十億ドル相当の軍事装備をNATOに売却すると伝えられている。

 過去の例をみるまでもなく、比例してロシアは北朝鮮からさらなる兵器と兵員の提供を受けることになるであろう。

 北朝鮮の対露支援は当初は、外交レベルに留まっていたが、砲弾や対空ミサイルなどロシアへの武器供給が始まったのは2022年11月頃からである。米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官(当時)が2022年12月23日に「北朝鮮が11月にロシアの民間軍事会社『ワグネル』に武器を売却していた疑いがある」と発表したことから表面化した。

 北朝鮮が対露武器供与に踏み切ったのは「我々は米国と西側集団が理性を失って越えてはならない最後の限界線を越えているのを目撃している。米国とその同盟国がウクライナに精密打撃手段を引き渡すのはロシアに対する最も明白な宣戦布告であり、ロシアの主権と領土安全を脅かす直接的な軍事行動である」(2022年5月19日朝鮮中央通信)との認識に基づく。

 しかし、武器供給が本格的に始まったのは2023年1月に金正恩(キム・ジョンウン)総書記の代理人でもある妹の金与正(キム・ヨジョン)党副部長が「(米国が)ウクライナに地上攻撃用戦闘装備を送り込むことで戦況をエスカレートさせている」と米国を非難する談話を発表してからである。

 特に7月にショイグ国防相(現在はロシア連邦安全理事会書記)が率いる軍事代表団が北朝鮮で「戦勝記念日」と称されている朝鮮戦争停戦協定70周年行事に出席し、金総書記の案内で北朝鮮の最新兵器が陳列されている武装装備展示会場を訪れていたことから武器供与は既成事実化されるようになった。

 北朝鮮はすでに240mm誘導ロケット砲など砲弾だけでなく戦車攻撃用の対戦ミサイル、自走砲、さらにロシアの「イスカンデル」や米国の「ATACMS」に似た戦術地対地ミサイルなどを供給しているが、今後、短距離弾道ミサイルに相当する600mm多連装ロケットや50〜100mの低い高度で飛翔し、遠距離の目標物を精密に打撃することができる北朝鮮版「トマホーク」と称される巡航ミサイル、「火星8号」と命名されているマッハ2〜3の極音速巡航ミサイル、自爆用、攻撃用の種類の無人機などを続々と送り込むことであろう。

 無人機については韓国国防部は北朝鮮が約1千機以上保有していると推定しており、中でも時速は400kmの自爆型無人機は作戦半径は600〜800kmに達していると分析している。

 兵力の派遣は昨年10月から始まったが、このことは先月(6月)末にリュビモワ文化相が率いるロシア連邦文化省代表団が訪朝した際の北朝鮮芸術団の歓迎公演舞台のスクリーンに昨年10月22日、12月12日、12月22日の計3回にわたり金総書記が派兵に関する計画書に署名し、批准していた映像が映し出されていたことからも明らかだ。映像には金総書記が「特殊作戦部隊に攻撃作戦命令を伝えた」との字幕があった。

 これまで派遣した約1万5千人(このうち3分の1が死傷)に加え北朝鮮は今月(7月)から来月にかけて新たに3万人前後を増派するとウクライナ国防情報総局はみているが、事実ならば、増派兵力は「暴風軍団」と称される第11軍団が前身の特殊作戦軍に限らず、「一当百」(一人で100人を倒す)のスローガンを掲げている第2軍団からも選抜される可能性もある。第2軍団は軍事パレードで行進する際には特殊部隊同様に顔を黒く塗っている部隊である。

 北朝鮮の対露派兵は「露朝包括的戦略パートナーシップ」の「一方が武力侵攻を受けて戦争状態になった場合、軍事援助を行う」ことを明記した「第4条」に基づいている。 

 従って、北朝鮮兵の派兵、駐留は原則的にクルスク州などロシア領の防御に限定されているが、ドネツク州にあるマリウポリはロシアのウクライナ侵攻で2022年5月以降はロシアの支配下にあり、親ロシア派が独立宣言した「ドネツク人民共和国」を北朝鮮が承認し、外交関係を結んでいることから北朝鮮兵のマリウポリへの越境もあり得る。

 また、北朝鮮は米国製戦車「M1エイブラムス」に似た対戦車ミサイル自動迎撃システムの発射機が装着されている戦車を金総書記が自ら搭乗し、「世界で一番威力のある新型戦車」と自画自賛していたが、仮に戦車も送るとなると、近衛ソウル柳京守第105戦車師団からの部隊派遣も考えられなくもない。

 ショイグ安全保障会議書記が6月4日に続き6月25日にも再度訪朝していたことからこの時点で金総書記から新たに武器と兵力の派遣の確約を得たものと推察される。

 米国はウクライナにパトリオットミサイルを供給するが、北朝鮮もこの機会に開発したばかりの最新ミサイルをロシアに供与し、ミサイルの性能を試すのではないだろうか。まさにウクライナ戦は米国と北朝鮮の代理戦争に化しているようでもある。

  (参考資料:1年9か月の間に3度も訪朝するラブロフ外相 その理由は?)