2025年7月2日(水)

 韓国は政権が変わると検察総長も交代

韓国検察庁(「JPニュース」から)

 韓国の沈雨廷(シム・ウジョン)検察総長が昨日(7月1日)、電撃的に辞意を表明した。

 辞職の理由については「さまざまな状況を考慮した結果」と述べていたが、政権交代が最大の理由である。即ち、大統領が検察総長に任命した尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領から検察改革を公約に掲げた李在明(イ・ジェミョン)大統領に変わったことにある。検察総長の任命権は最高裁長官や警察庁長官(警察庁長)同様に大統領にある。

 沈雨廷検事総長は尹前大統領の子飼と言われている。

 沈雨廷検察総長の父親と尹錫悦大統領の父親は共に故金鍾泌(キム・ジョンピル)元総理を含め忠清道が誇る3大名士である。尹前大統領は大学(ソウル大学)も故郷も同じというよしみで昨年9月に検察総長に起用していた。

 しかし、今年1月15日、高位公職者犯罪捜査処(公捜処)と警察が苦労して内乱容疑で尹前大統領をソウル拘置所に拘禁したにもかかわらず、ソウル地裁が身柄拘束を違法だとして取り消したことに抗告せずに52日後に釈放させてしまったことで批判を浴びていた。

 韓国の検察総長は検察庁法によって2年の任期が保証されている。「検察は時の政権の意に従って捜査と起訴を乱発する」との批判を受けて1988年に政治的中立性を担保するためこの法が施行されていた。法に則れば、?検察総長は政権が交代しても来年9月までは総長の座にいられた。それが僅か9か月で辞任だ。

 この検察法が定められた1988年12月以降、25人の検察総長のうち任期を最後まで全うできたのはなんと9人しかいない。中途退任は沈総長を含め16人目となる。

 過去最短は金泳三(キム・ヨンサム)政権の第24代検察総長、金斗喜(キム・ドフィ)氏の3か月だが、この場合は、法相に任命されたことによる。

 その次が金大中(キム・デジュン)政権下の第32代総長、金ガクヨン氏の4か月で、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権への交代に伴う青瓦台(大統領府)の圧力で辞任させられた。沈検察総長の辞任と似たようなパターンだ。

 辞任したからといって、退任後安泰というわけにはいかないのが韓国だ。

 これまでも身柄を拘束された元検察総長は第22代総長の金淇春(キム・ギチュン)氏を含め何人もいる。元検察総長の尹前大統領のそのうちの一人で、沈検察総長も政権への忖度や公務怠慢を理由に逮捕者リストに加わる公算が高い。

 ちなみに警察庁長官の任期も警務部から警察庁に改称した1991年7月以降、2年である。  

 警察庁発足から長官に就任したのは30人近くいるが。任期を最後まで全うし、退任できたのは盧武鉉政権下の第13代(イ・スンテク)長官を含め4〜5人しかいない。

 ほとんどが短命で終わっている。例えば、李明博(イ・ミョンパク)政権(2008年2月―2013年1月)の5年間、4人の長官が任命されたが、誰一人、2年の任期を全うすることができなかった。

 事もあろうにこれまで11人が不正容疑で被疑者として検察の調査を受け、このうち9人が逮捕、起訴され、8人に有罪が宣告されている。

 尹前政権下の趙志浩(チョ・ジホ)警察庁長官もすでに内乱共謀容疑で逮捕され、現在裁判に掛けられている。

 大統領から警察のトップまでが退任後、逮捕されるこの惨状こそがまさに「韓国病」である。