2025年7月24日(木)

 「日米関税合意」を参考にする韓国 韓国のメディアは「お手本にすべき」と珍しく評価

 日米関税合意に関しては日本国内では様々意見があるが、米国との交渉を間近に控えた韓国は総じて評価しているようだ。そのことは李在明(イ・ジェミョン)政権の韓国大統領室が「我々の交渉の参考にしたい」との談話を出していることからも明らかだ。

 当然「参考にしたい」という言葉の中には取り入れる部分とそうでない部分があるとの意味も含まれているが、何よりも日本が交渉で関税を25%から15%に引き下げることに成功したことを「お手本にしたい」と受け止めていることだけは確かだ。

 総じて日本には辛口の韓国のメディアはこれまで日本の外交交渉やスタンスを揶揄することはあっても評価、褒めたたえることは滅多になかった。しかし、今回の関税合意についてケチをつけたメディアは1紙もなかった。

 韓国の新聞は「日米関税合意」についてすべて社説で取り上げていた。

 日本と同様に国益を優先させ日本並みに交渉をまとめることを求めたメディアは以下の10紙である。

 「国民日報」(日本が見せた関税妥結戦略・・・我々も韓国型解決策を見つけ出せ

 「毎日新聞」(米日貿易交渉妥結・・・我々も同様の結果を出すよう最善を尽くせ

 「ソウル経済」(米と関税を交換した日米交渉・・・国益極大化の出口を探せ」

 「韓国経済」(日本の対米関税率15%妥結が意味するもの) 

 「ソウル新聞」(韓米2プラス2交渉 名分を渡し実利を取る妙手を期待する)

 「世界日報」(米日貿易交渉妥結・・・我々も国益の観点から妥結すべき)

 「韓国日報」(日本の関税交渉結果 我々のマジノ線に)

 「東亜日報」(米日相互関税15%で妥結・・・我々が越えるべきガイドライン)

 「京郷新聞」(対米関税交渉最後の総力戦 「パッケージ合意」は互恵で)

 「ファイナンシャルニュース」(米日関税合意を分析し国益優先交渉に総力を)

 その一方で日本への対抗心から日本よりも低い関税率を勝ち取ることを求めたメディアもある。

 「朝鮮日報」(日本よりも米国の関税を下げさせよ 国益優先で柔軟、果敢な戦略を)「中央日報」(関税交渉 賢明な戦略で日本よりも有利な結果を期待)「文化日報」(米国との関税ビッグディール・・・日本より低くするため敏感な品目も決断すべき時)の保守系3紙とそれに進歩系の「ハンギョレ」(米日関税交渉妥結・・・日本以上の合意を導き出せ)である。しかし、その内容は見出しとは異なり、政府に韓国が置かれた現状を見据えた交渉を促していた。以下、4紙の主張(一部)を取り上げてみた。

 「朝鮮日報」日本よりも米国の関税を下げさせよ 国益優先で柔軟、果敢な戦略を)

 「我々にとって最大の問題は車だ。昨年の対米貿易黒字660億ドルのうち60%は自動車によるものだ。自動車関税を日本水準の15%まで引き下げることができなければ大きな打撃が予想される。現代自動車と起亜は日本車と価格が似ていて直接競争関係にあるからだ。また、USスチールの買収で一息ついた日本とは異なり国内鉄鋼会社は米国に生産基盤がない。業界では『関税交渉がうまくいかなければ、最大の輸出市場である米国を諦めるしかない』との話が出ている。(中略)日本の米市場の開放がヒントとなる。我々も日本と同様に義務的に毎年40万トンの米を関税なしで輸入している。国際交渉に基づく義務である。日本は米国からの米輸入の割合を高めたが、我々もそうすべきだ。政府は米・牛肉市場の開放を米国との交渉カードには使わないとの内部方針を定めているが、より大きな国益のためには柔軟な戦略を取るべきだ」

 「中央日報」関税交渉 賢明な戦略で日本よりも有利な結果を期待)

 「米国との交渉は国防費や国防費分担など様々な問題を含む高次方程式である。国益を最優先原則として実用的にアプローチする原則はいくら強調してもし過ぎることはない。農家の利害に関わる農産物や牛肉などは慎重に取り扱う必要があるデリケートな品目ではあるが、消費者の利益と国益全体のバランスも考える必要がある。敏感な品目で何の譲歩もせずに過剰な代価を払うべきではない。(中略)外国との貿易交渉もすべて内部交渉である。開放による被害を最小化し、補償措置を設け、反対する国民を説得するのも有能な実用政府の義務だ。日米が半導体、鉄鋼、造船、人工知能(AI)、二国間などのサプライチェーン構築で協力する合意を参考にして日本よりも良い交渉を引き出してもらいたい」

 「文化日報」(米国との関税ビッグディール・・・日本より低くするため敏感な品目も決断すべき時)

 「米国が要求する交渉の公式が明らかになった。相互関税引き下げを条件に米国農産物の輸入拡大、非関税障壁の撤廃、米国戦略産物の大量購入を圧迫する構図だ。李在明大統領は『他の国よりも不利な状況に陥らないようにすることが重要な課題だ』と語っている。日本の相互関税15%、自動車関税12.5%よりも不利にならないためにも牛肉と米の追加輸入は避けられないようだ。しかし、畜産業だけでなく、与党議員たちも『牛肉とコメは譲歩してはならない』と反発している。最後は国益を最大化するための選択だけだ。李大統領は最終決断をすべき時だ」

 「ハンギョレ」(米日関税交渉妥結・・・日本以上の合意を導き出せ)

 「我々としては日米合意を綿密に分析し、交渉案で修正が必要ならば修正すべきである。品目別の関税引き下げが難しいとの観測とは異なり、日本は自動車の関税を引き下げただけに我々もこの部分では全力を尽くさなければならない。自動車は韓国最大の対米輸出品であり、日本製品と直接競争関係にあるからだ。また、日本と同様に我々も米国から大規模な投資を迫られるのは明らかだ。日本との違いを説得する必要がある。我々は日本とは異なり過去2〜3年間で半導体や電池などのハイテク産業への対米投資を大幅に拡大してきたのでこの点を意識させる必要がある。製造業や先端産業での米国との協力は重要だが、一歩間違えれば国内産業の空洞化と雇用委縮現象を招く可能性がある。また、日米合意案に防衛費分担金が含まれていないことにも注目すべきである」