2025年6月1日(日)
韓国大統領選挙の知られざるジンクス
与党の金文洙候補(左)と野党の李在明候補(韓国中央選挙管理委員会から)
韓国大統領選挙は投開票日まで残り2日。接戦でなければ、3日午後8時の投票締め切りと同時に各テレビ局は当確速報を流すであろう。
大統領選挙の勝敗を決するのは無党派票である。
ソウル及び首都圏の京畿道を除くと、与党を支持する保守層は慶尚道、野党を支持する進歩層は全羅道に分かれている。どちらも伝統的に絶対不動の「コンクリート層」と言われている支持基盤である。
その狭間にあって常に勝敗のキャスティングボードを握っているのは無党派層の多い忠清道である。従って、ジンクスとしては忠清道を制した候補が当選する。
直近の2回の大統領選挙をみると、2017の選挙では忠清北道では38.6%対26.3%、忠清南道では38.6%対24.8%、世宗特別市では51.1%対15.2%、大田広域市では42.9%対20.3%と、当選した文在寅(ムン・ジェイン)候補が対立候補を大きく引き離していた。
また、2022年の選挙では尹錫悦(ユン・ソクヨル)候補が44.14%対51.91%で落とした世宗特別市以外は忠清北道が50.67%対45.12%、忠清南道が51.08%対44.96%、大田広域市が49・55%対46・44%とライバルの李在明候補を制していた。票にすると、忠清道では約174万票対約160万票と、14万票の差を付けていた。
もう一つは、世論調査でリードしていた候補が勝者となる。
前回の大統領選挙では0.7ポイント(約25万票)の僅差で尹錫悦候補が当選したが、世論調査の公表が禁止される直前の多くの世論調査で尹錫悦候補が李在明候補を最大で6.1%(韓国経済新聞3月1−2日調査)、最小でも0.9ポイント(「エイスリサーチ」(2月27−28日)の差でリードしていた。
ジンクスとおりならば、支持率が11ポイント前後の第3候補「改革新党」の李俊錫(イ・ジュンソク)候補を除くと、大手世論調査会社「韓国ギャラップ」が保守紙「中央日報」の委託を受け行った調査(5月24−25日)では49.0%対35.0%、「リアルメーター」が行った調査(5月26−27日)では49.2%対36.8%と、李在明候補が与党「国民の力」の金文洙(キム・ムンス)候補を10ポイント以上もリードしていた。
世論調査の結果をみると、金文洙候補の逆転勝利の公算は高くはないが、金候補にとっての救いは1997年の大統領選挙で対立候補の野党の金大中(キム・デジュン)候補を53%対10%と圧倒していた与党の李会昌(イ・フェチャン)候補が本番直前に子息の徴兵忌避が問題となり、支持率を急落させ、その結果、金大中候補が逆転勝利したことだ。
こうした前例があることから金文洙候補陣営では急遽「李在明家族不正真相調査団」を設け、李在明候補の長男の賭博問題や女性への差別発言や次男の「脱税疑惑」を追及し始めたが、どうやら時間切れとなりそうだ。