2025年6月10日(火)
文在寅政権の失敗に懲りない李在明政権 大統領秘書官人事を巡り早くも内紛
李在明大統領から大統領民情首席秘書官に任命された呉譟ェ弁護士(大統領室提供)
大統領選挙の結果、韓国の第21代大統領に最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)候補が選出されたが、李在明大統領はいわば、進歩派の象徴でもある文在寅(ムン・ジェイン)元大統領の後継者である。
その文在寅元大統領は回想録で「(私の)最大の過ちは検察総長に尹錫悦を据えたことだ」と、後悔していた。
文元大統領は恩師の盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領が成し遂げられなかった悲願の検察改革を実現するため保守派の李明博(イ・ミョンパク)元大統領と朴槿恵(パク・クネ)元大統領の不正を暴く一方で、大統領選挙に介入した情報機関・「国家情報院」の前院長や朴政権の指示を受け慰安婦問題の判決を遅らせた最高裁長官まで逮捕した実績を買って、ソウル中央地検長だった尹錫悦氏を検察総長に登用したが、これが裏目に出て、最後は寝首をかかれてしまった。
文元大統領は政権発足と同時に検察改革を尹検察総長と日本では「タマネギ男」と称されている゙国(チョ・グック)法務部長官の二人に委ねたが、尹氏は検察総長になると真っ先にソウル大法学部の後輩でもある、5歳年下の゙国長官の娘の不正入学疑惑を徹底追及し、゙長官を蹴落とし、さらにその後任の元判事の秋美愛(チュ・ミエ)元「共に民主党」代表に対しては「私は秋法相の部下ではない」と、反旗を翻していた。
文元大統領は政権与党内部から「検察出身の尹錫悦総長では検察改革はできない」と提言されていたにもかかわらず、まだ国、秋美愛ら法相らと対立した時も「喧嘩両成敗で尹総長も切るべき」との意見が出されていたにもかかわらず首を切らず、大統領選前年の2021年3月4日まで放置していた。後に尹検察総長が文政権に背を向け、痛烈に批判し、野党「国民の力」から大統領選に出馬し、第20代大統領になったのは周知の事実である。
李在明政権の支持者らからはそうした苦い教訓から「文在寅政権の過ちを繰り返さないためには最初が肝心である。何よりも人事が大事である」との声が上がっていたが、李大統領が大方の予想に反し、法務、検察、司法などを担当する大統領民情首席秘書官に法務研究院の同期だった元検事の呉譟ェ(オ・グァンス)弁護士を起用したため早くも政権内に軋轢が生じている。
文政権を支持する進歩系の「ハンギョレ新聞」や「ソウル新聞」などは呉弁護士が検察に25年間在籍し、それも尹前大統領と同じ特捜部畑を歩んだ履歴を問題視し「呉氏では検察改革は無理」とか「尹錫悦の二の舞になる」と、警鐘を鳴らしている。
また、政権与党内からも秋美愛元法相や政権交代の立役者だった鄭清来(チョン・チョンネ)国会法制委員長、そして尹前政権を激しく追及した「共に民主党」のマダムこと、徐瑛ヘ(ソ・ヨンギョ)法制委員、さらには検察改革を党の一丁目一番地としている第2野党の「祖国改革党」の警察出身の?雲夏(ファン・ウンハ)議員らが挙って任命反対の声を上げている。
こうした一部の批判に対して姜勳植(カン・フンシク)大統領秘書室長は記者会見でのブリーフィングで「李在明大統領は検察の最大の被害者だった。呉弁護士は誰よりも大統領の検察改革の意思を承知している」と、理解を求めていることや批判の先鋒に立っていた鄭清来議員と徐瑛ヘ議員もそれぞれ与党の代表とNo.2の院内代表の座を狙っていることもあって李大統領の決定には逆らう気はなさそうだ。
与党の議員の多くは「何か考えがあって大統領が任命したのだろう」「大統領の足を引っ張るのは止めよう」と容認する方向だが、与党の支持者らの間では賛成派議員らに再考を促す書き込みが殺到している。
呉譟ェ弁護士についてはハンギョレ新聞など一部メディアが「2012年〜2015年の主任検事在任中に妻の土地や建物などの不動産を知人に託し、それらを名義で管理しながら財産申告書から省略した」疑惑を指摘されていることから野党に転じた「国民の力」の追及次第では取り消しという事態もあり得るかもしれない。
韓国の世論調査会社「リアルメーター」が昨日(9日)発表した調査結果によると、李在明大統領の国政運営について「うまくやると思う」と答えた人は58.2%(「うまくできないと思う」は35.5%)だったが、李明博、朴槿恵、文在寅、尹錫悦ら直近の歴代大統領の中では52.7%の尹錫悦大統領に続き、2番目に低い数字となった。