2025年6月17日(火)

 南北鉄道は断絶 露朝鉄道は復活

昨年5月に訪朝したロシア沿海州代表団と羅津市委員会が会談(駐朝ロシア大使館配信)

 ロシアと北朝鮮の関係は軍事分野だけが注目されているが、知らぬ間に両国の首都を繋ぐ鉄道が開通されることになった。

 ロシア運輸省が明らかにしたところでは両国は本日(17日)から平壌とモスクワを結ぶ国際直通鉄道の運行を再開するようだ。

 モスクワと平壌の間は距離にして1万キロ以上もあるのでモスクワ〜平壌鉄道は世界で最も長い直通鉄道路線となる。ロシアの停車駅だけで北朝鮮との国境都市ハサン、ウスリスク、ハバロフスク、チタ、イルクーツク、クラスノヤルスク、ノヴォシビルスク、オムスク、エカテリンブルク、キーロフ、コストロマなどを通り、片道だけで8日間費やす。

 露朝鉄道当局間の合意によれば、モスクワ〜平壌鉄道は毎月2回運航され、3日と17日が平壌発で、12日と26日がモスクワ発となる。

 ロシア運輸省はすでにチケット販売を開始ししているが、どれだけの往来が見込まれているかは定かではない。

 北朝鮮とロシアは国境都市の羅津〜ハサン間(54km)は貨物列車が2022年11月に再開されているが、昨年12月には豆満江駅〜ハサン駅を結ぶ定期旅客列車の運行も再開され、今年5月8日には羅先〜ウラジオストクを繋ぐ定期便も再開していた。

 ロシア沿岸州の公式ホームぺージによると、2024年に北朝鮮を訪問したロシア人観光客数は約1500人だが、ロシアの沿海州当局は今年は1万人の水準まで増加するとの見通しを明らかにしていた。一方、北朝鮮からはロシア連邦保安局(FSB)の統計では昨年夏(7−9月)の期間中に5623人がロシアを訪れていた。このうち3765人がビザを取得した学生だった。

 平壌〜モスクワ間は過去に金日成(キム・イルソン)主席が1986年10月に、金正日(キム・ジョンイル)前総書記が2001年7月に列車で訪れている。

 金日成主席は国境都市の延吉、牡丹江など中国東北地域を通ってシベリアのチタ州に入り、モスクワを目指したが、24年前の金正日前総書記のモスクワへの列車の旅の日程を調べてみると、ロシアとの国境を通って、モスクワに入っていた。

 チタ州からモスクワまでの距離は同じだが、中国ルートの金日成主席は出発して3日目にはシベリアのクラスノヤルスクに到着していたのに対して金正日前総書記は5日間も時間を要した。当時のルートを辿ってみると、以下のとおりである。

 7月24日 特別列車(機関車2両と21車両の客車で編成)で平壌出発。

 7月26日 ロシアのハサン駅に到着。

 7月27日 ハバロフスクに到着。

 7月28日 チタ州に到着。

 7月29日 プリャード共和国ノウランウデに入る。イルクーツク駅で車両点検のため20分停車。

 7月30日 シベリアのクラスノヤルスク駅で車両点検のため一時停車。

 7月31日 シベリアの最大都市、ノヴォシビルスク駅に到着。約20分間停車。午後6時、シベリア西部のオムスクに入る。タザの別荘で宿泊。

 8月1日 オムスクでT−80戦車工場やベーコン包装工場などを見学。

 8月2日 機関車を交換するためエカテリンブルクの駅で30分の停車。ウラル山脈を越え、フェルム駅で車両点検のため臨時停車。

 8月3日 モスクワのヤロスラブリ駅に到着

 ハッサン〜モスクワは9208kmだが、ロシアのテレビは特別列車が時速60km以下で走るため後続のモスクワ行き列車に影響が出ていると報道していた。

 また、北朝鮮の国内の鉄道(5214km)のうち70%は植民地時代に日本によって建設されたものですべての面で改修工事が必要とされ、またこれまで列車の80%が電力難で稼働に支障を来していると伝えられていた。

 韓国も北朝鮮を経由した大陸鉄道との連結を夢見て、南北ハネムーン期間の2000年から2007年の間に総工費5454億ウォン(約712億円=当時のレートで)をかけて京義線(南の?山―北の開城間の27.3km)を56年ぶりに、東海線(北の金剛山―南の猪津(チェジン)の25.5km)を57年ぶりに連結させていた。

 京義線は釜山〜ソウル〜開城〜新義州から中国の丹東を繋いで中国大陸横断鉄道、シベリア横断鉄道に連結するルートと釜山〜ソウル〜新義州〜丹東〜北京〜モンゴル〜シベリア鉄道を結ぶルートがあり、東海線は釜山〜ソウル〜元山〜羅津〜豆満江(北朝鮮国境駅)ーハサンを経て、シベリア横断鉄道(TSR)と結ぶルートと釜山〜ソウル〜新端里〜清津〜会寧〜南陽〜図們(中国国境都市)を結ぶルーとがある。

 その後、李明博(イ・ミョンパク)政権、朴槿恵(パク・クネ)政権と保守政権が2期続き、南北鉄道事業は停滞したが、2017年の文在寅(ムン・ジェイン)政権下で再び始動するかにみえた。しかし、2022年5月に北朝鮮との対決姿勢を打ち出した尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権に反発し、北朝鮮は韓国との関係を断ち切り、その象徴として昨年10月に北朝鮮に通じる道路だけでなく南北鉄道まで切断してしまった。

 シベリア鉄道が高速化されれば、釜山からウラジオを通ってモスクワまで8日間。2030年まで東海線だけで1億3千万トンの貨物が発生する。韓国にとって京義線鉄道開通で30年間で140兆ウォンの経済的効果が期待できる。