2025年6月17日(火)

 プーチン大統領の特使、ショイグ前国防相がまた平壌へ 共同でイランを支援か!

今年3月に訪朝したショイグ書記と金正恩総書記(朝鮮中央通信)

 ロシアのプーチン大統領の側近で、前国防相のショイグ国家安保会議書記が急遽平壌に飛び、金正恩(キム・ジョンウン)総書記と会談を行った。

 極秘訪朝ではなかった。ロシアの「ノボスチー通信」が金総書記との会談が始まったことを伝えているからだ。

 国家安保会議のスポークスマンもショイグ書記がプーチン大統領の「特別任務」の指示を受け、平壌を訪問したことを発表している。

 ショイグ書記は今月4日にも訪朝し、金総書記と会談をしたばかりである。3月の訪朝を含めると、今年上半期だけで3度となる。

 当時、ロシアの「タス通信」はショイグ書記が金総書記にプーチン大統領の親書を伝達したこと、またウクライナ問題について話し合っただけでなくプーチン大統領とトランプ大統領による米露対話についても論議されたと伝えていた。

 「特別任務」の詳細は明らかにされていないが、国家安保会議のスポークスマンは「今回の訪問が6月の会談での合意事項を協議するためのものである」と述べている。

 当時の合意事項については露朝双方とも何一つ明かにしなかったが、ロシア領、クルスクの再建との関連で北朝鮮の追加派兵が論議されたとみなされていた。

 しかし、想像を逞しくすれば、「6月の会談での合意事項を協議する」というのは表向きの理由であって、実際には当時は発生してなかったイスラエルのイラン空爆及び中東情勢への対応を協議することにあるようだ。

 両国の首脳が1年前の6月19日に交わした「包括的戦略的パートナーシップ」の第2条には「相互関心事となる国際問題について意見を交換し、国際舞台での共同歩調と協力を強化する」ことが明記されている。

 金総書記はショイグ訪朝から約1週間後、ロシア連邦の国慶節に際してプーチン大統領に祝電を送ったが、ロシアを初めて「兄弟国」「真の戦友」と呼称し、またプーチン大統領を「最も親しい同志」と呼び、「我が国は常に貴方やロシア連邦と共にあるであろう」と誓っていた。換言すれば、金総書記はロシアと行動を、運命を共にする考えのようだ。

 ロシアにとってイランは数少ない中東の同盟国である。イランはウクライナ紛争でドローンなど惜しみなく武器を支援してくれた。そのイランをイスラエルが奇襲攻撃をかけ、トランプ大統領の言葉を借りれば、負け戦を強いられている。

 プーチン大統領はショイグ書記を派遣する2日前に中東情勢をめぐり、トランプ大統領と電話会談をし、イスラエルにイランへの攻撃をやめさせるよう要請すると同時に戦争を終わらせるための仲介役を買って出たが、トランプ大統領は逆にイランに対して自制を求めたと伝えられている。

 テヘランの制空権をイスラエル空軍に握られた状況ではイランの敗北は目に見えており、イランの体制が崩壊する可能性も現実味を帯びてくる。仮に、ハメネイ師を頂点とするイランの政権が倒れれば、ロシアにとっても北朝鮮にとってもシリアのアサド政権に続く外交的痛手となる。

 イランを救済、あるいは支援するためロシアと北朝鮮がどのような共同歩調を取るのか、定かではないが、停戦までの間、北朝鮮がロシアに代わってミサイルなどイランへの軍事支援の可能性もゼロではない。

 「イ・イ紛争」が仮にウクライナ戦のように長期戦となれば、イランは圧倒的に不利だ。ミサイルの在庫が尽きるからだ。その場合、ロシア同様にイランも第3国からミサイルを調達する必要が生じる。

 イランからイスラエルまでの距離は最短で約1000kmなので中距離ミサイルでなければ届かない。イランにイスラエルに届く中長距離ミサイルを供与できる国は現実には世界で唯一、北朝鮮しかいない。

 北朝鮮はイスラエルとイランの紛争が勃発して以来、外交部もメディアも不気味なぐらい沈黙を守り続けている

 金総書記とショイグ書記との会談結果次第では北朝鮮が公式に反応する日は近い。

(参考資料 :北朝鮮はイランにも軍事支援を行うのか)