2025年6月6日(金)
座礁から15日目で均衡を保つことができた北朝鮮の新型駆逐艦
5月23日に衛星で撮影された座礁した北朝鮮の新型駆逐艦(マクサール・テクノロジース)
北朝鮮は5月21日に浸水に失敗し,艦首がふ頭に、艦尾が海水に置かれていた5000トン級新型駆逐艦のバランスを整え、艦を安全に縦に進水させて埠頭に係留したようだ。
事故発生と同時に北朝鮮は異例にも「進水の過程で未熟な指揮と操作上の不注意により、台車移動の平行性が保たれなかった結果、艦尾部分の進水すべり台が先に離脱して洲に座り、船底の一部の区間の破孔によって艦の均衡が破れ、艦首部分が船台から離脱できない重大な事故が発生した」ことを明らかにしていた。
事故を目の当たりにした金正恩(キム・ジョンウン)総書記及び党中央軍事委員会は担当部署の党軍需工業部に対して今月末に開催予定の党中央委員会総会まで完全に復旧させ、浸水させるよう厳命していた。
翌日(22日)には調査グループが党中央軍事委員会に「艦の破損程度が深刻でない」として「浸水隔室の海水を揚水し、艦首部分を離脱させて艦の均衡性を回復するのに2〜3日、舷側の復旧に10余日程度の時間がかかると判断している」と報告していた。また、24日にも「追加的に確認された艦の被害状況はなく、現地復旧推進組は復旧計画を日程通りに推し進めている」と党中央軍事委員会に報告していた。
金総書記が激怒したことにより現場の責任者である清津造船所支配人のホン・ギルホ、清津造船所技師長のカン・ジョンチョル、行政副支配人のキム・ヨンハク、それに党軍需工業部のリ・ヒョンソン副部長までもが「重大事故の発生に大きな責任がある」として身柄を拘束されただけに現場は死に物狂いで復旧に取り掛かっているのであろう。
今月初めに艦の均衡性を復元し、5日午後までに同艦を安全に縦に進水させて埠頭に係留することに成功し、「次の段階の精密復旧作業は羅津船舶修理工場の乾ドックで行われる予定で作業期間は7〜10日間を見込んでいる」(現地復旧推進班)ならば、どうやら党軍需工業部部長である趙春龍(チョ・チュンリョン)書記が誓ったように総会の招集前に完了するものとみられる。
北朝鮮の発表だけならば俄かに信じ難いが、北朝鮮専門媒体「38ノース」も米国の民間衛星会社プラネットラボが公開した衛星画像から駆逐艦が昨日午後3時には清津港の桟橋から分離されて水上に浮かんでいるのを確認していた。また、韓国の統合参謀本部も昨日、倒壊した駆逐艦が建造されたことを確認し、「現在、排水作業が行われているようだ」と記者団にブリーフィングしていた。座礁してから15日目である。
「設備もないし、北朝鮮の技術では元に戻せないであろう」「駆逐艦を切断するほかないであろう」「海中から引き揚げても使い物にならないであろう」と当初、悲観的にみていた韓国のメディアも韓国合同参謀本部の発表や北朝鮮の報道を受け、以下のような見出しを付け、関連報道を伝えていた。
「北朝鮮 金正恩の激怒の中、駆逐艦を再建・・・今月末までに復旧完了」(中央日報)「北朝鮮 進水式で転倒した駆逐艦を直立させることに成功」「北朝鮮 倒れた駆逐艦が安全進水」(聯合ニュース)「北朝鮮 進水式で転倒した駆逐艦を直立させることに成功」
今後は、艦を進水前の状態、即ち新品同様に復旧させ、使えるかどうかがカギとなりそうだ。それによって身柄を拘束された4人の処分も決まるのではないだろうか。