2025年3月14日(金)

 韓国の大統領は極刑が宣告されても特赦される

重刑を宣告されても恩赦された李明博元大統領と朴槿恵元大統領(JPニュース)

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領はとりあえず拘置所から釈放されたが、仮に憲法裁判所で罷免されれば、再び権力乱用や公選挙法違反容疑で逮捕、再収監される可能性が高い。

 そうなれば、刑事裁判所には拘置所から出廷することになる。仮に刑事裁判所で有罪となれば、最高刑は死刑、もしくは無期懲役が待ち受けている。

 これまで天国から地獄を見た大統領は4人いる。

 第1号は盧泰愚(ノ・テウ)大統領(1998年2月25日ー1993年2月24日)である。

 国民の直接選挙で選ばれた軍人出身の盧大統領はソウル五輪の成功や中露との国交樹立など外交分野で特記すべき成果を上げ、5年間の任期を全うすることができたが、退任から2年後の1995年11月16日に在職中の収賄(約2600億ウォン)など10件の容疑で逮捕、収監され、裁判では懲役22年6か月(その後17年に減刑)が宣告された。

 第2号は盧大統領の盟友、全斗煥(チョン・ドファン)大統領(1980年9月1日ー1988年2月)である。

 間接選挙(国会議員の投票)で大統領を2期務めた全大統領は同期の桜の盧泰愚氏の拘束から17日後の1995年12月3日に1979年に起こした粛軍クーデター(内乱)や在職中の収賄(約2200億ウォン)など9件の容疑で逮捕、収監され、裁判では死刑(その後、無期懲役に減刑)が宣告された。

 しかし、二人とも刑を全うすることなく、1997年の大統領選挙で当選した金大中(キム・デジュン)次期大統領(1998年2月25日ー2003年2月24日)によってこの年の12月22日に特赦された。全元大統領にいたって囚人服から背広に着替え、翌年の1998年2月の金大中大統領就任式の晴れやかな舞台に「来賓」として登壇していた。

 3人目は暗殺された朴正煕(パク・チョンヒ)大統領(1963年12月17日ー1979年10月26日)の長女、朴槿恵(パク・クネ)大統領である。

 友人の崔順実(チェ・スンシル)氏を国政に介入させたことで野党から弾劾された朴大統領は2017年3月10日に憲法裁判所で罷免(弾劾賛成8人、反対0人)され、大統領官邸から自宅に移ったが、20日後の3月30日深夜に大企業から多額の賄賂を受け取った収賄(約433億ウォン)や職権乱用などの容疑で深夜緊急逮捕され、2021年1月に懲役20年の刑を宣告されたもののこの年の12月に特赦された。

 そして、4人目は李明博(イ・ミョンパク)大統領(2008年2月25日―2013年2月14日)である。

 「朴槿恵逮捕」から1年後の2018年3月23日に収賄(110億ウォン)や裏金(秘密資金)造成(350億ウォン)容疑でこれまた深夜に逮捕されている。

 李大統領は最高裁まで争ったが、2020年10月29日に最高裁で懲役17年の実刑が確定した。しかし、尹政権の発足後の2022年6月に健康上の理由で釈放され、さらに半年後の12月には尹大統領によって特赦された。

 収監された4人の大統領全員が12月に特赦されているが、これは事実上の「クリスマス恩赦」である。尹大統領も仮に極刑が下され、服役しても、歴代大統領のように何年もしない間に出て来るのではないだろうか。

 韓国は「罪を憎んでも人を憎まず」と言われるほど、特赦、恩赦制度がある。独立運動記念日(3月1日)、解放記念日(8月15日)などの慶祝日や釈迦の誕生日(4月8日)やクリスマス(12月25日)に合わせて実施される。

 赦免、恩赦が滅多にない日本からすれば韓国は「犯罪人天国」に見えるかもしれない。