2025年3月2日(日)

 世論調査は「弾劾賛成」が多数、集会参加者は「弾劾反対」が圧倒の「ねじれ現象」 尹大統領は救われるか?

憲法裁判所第7回弁論に出席した尹錫悦大統領(「JPニュース」から)

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の弾劾賛否を巡り韓国社会が揺れに揺れている。それもこれも天下分け目の大統領弾劾裁判の判決が迫っているからだ。

 大統領弾劾の可否をめぐる憲法裁判所の最終弁論が2月25日に終わったことで後は宣告を待つだけだ。

 盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領の場合は弁論終結から2週間以内に、また朴槿恵(パク・クネ)元大統領の時は11日目に宣告があったことを考慮すると、早ければ3月8日〜10日の間にもあるかもしれない。

 韓国の世論調査会社「韓国ギャラップ」が2月28日に発表した世論調査(2月25〜27日に実施)では弾劾(罷免)「賛成」が59%なのに対して「反対」は35%だった。

 保守と進歩層では真逆の結果が出たが、中道層では70%が賛成し、23%が反対していた。

 仮に尹大統領が罷免された場合に実施される次期大統領選挙についても野党による「政権交代」を求める声は51%なのに対して与党による「政権継続」を望む声は38%だった。

 「韓国ギャラップ」の前にもう一つの大手世論調査会社「リアルメーター」が2月20〜21日にかけて行った世論調査では拮抗していたもののそれでも「政権交代」(49.0%)が「政権継続」(45.3%)を上回っていた。

 世論調査では尹大統領の罷免と政権交代が優勢だが、ところが、毎週土曜日に行われている弾劾賛否の集会参加者数では「反対」派が「賛成」派を凌駕しているという皮肉な現象が現れている。

 独立運動の記念日(3.1節)にあたる昨日(3月1日)、首都・ソウルで開かれた尹大統領の弾劾反対集会と罷免を求める集会の参加者数を比較すると、「反対」派が12万人と、「賛成」派の2万3千を圧倒していた。

 「弾劾反対集会」は午後1時から光化門と世宗路一帯では新興宗教団体「サラン第一教会」の全光T(チョン・グァンフン)牧師が率いる「大韓民国を立て直す運動本部が、国会がある汝矣島で保守系のキリスト教団体「SAVE KOREA」と韓国の有名講師、チョン・ハンギル氏が合同で主導し、「国会非常祈祷会」という形で開かれたが、警察発表では前者に約6万5千人、後者に5万5千人、合計で約12万人が集っていた。

 「国会非常祈祷会」には与党「国民の力」から元代表の金起R(キム・ギヒョン)議員や元院内総務の羅卿ウォン議員、尹大統領の最側近である尹相現(ユン・サンヒョン)議員ら36人の議員が大挙出席していた。

 一方、「弾劾反対集会」に対抗し、午後2時から憲法裁判所に近い安国駅付近で労働団体「民主労組」と市民団体「参与連帯」が尹大統領の罷免を求める集会を開き、また午後3時半から最大野党「共に民主党」を含む野党5党が合同で「内乱終息、民主憲政守護のための尹錫悦罷免要求汎国民大会」を安国洞一帯で開いたが、警察推定で李在明(イ・ジェミョン)代表が初めて大衆演説を行った「汎国民大会」の参加者は1万8千人で、労働・市民団体共催の参加者5千人合わせても2万3千人にとどまった。

 集会やデモの参加者の数からすると、弾劾「反対」が「賛成」派を大きく上回っており、これも一つの世論の趨勢、民意とするならば、憲法裁判所としては無視できないであろう。

(参考資料:韓国では新聞よりもユーチューブ 20〜30代の若い世代が尹錫悦大統領の支持に回る理由)

 過去に弾劾された盧武鉉と朴槿恵元大統領のうち、盧武鉉氏の場合は弾劾が棄却されたが、その理由は幾つかあるが、何よりも当時の世論調査で国民の70%が反対していたこと、また憲法裁判期間中に国会議員選挙(総選挙)が行われ、盧大統領の与党「ウリ党」が47議席から過半数(150議席)を上回る152議席を獲得し、圧勝したことが盧氏の大統領職務復帰への最大の要因となった。

 尹大統領が救われるには何よりも世論調査での逆転が最優先だ。果たして残り1週間から10日で追い上げ、形勢を逆転することができるだろうか。

(参考資料:憲法裁判所での尹錫悦大統領の「反論」第3回〜第10回弁論まで)

(参考資料:「尹大統領は憲法裁判官全員一致で罷免される」 元法制処長が断言したその理由は?)