2025年3月23日(日)

 韓国の命運を決する「スーパーウィーク」が始まる 総理&野党代表&大統領の裁判で「3連続宣告」

尹大統領と李代表と韓総理(大統領室と民主党HPと国務室から筆者キャプチャー)

 米国では大統領候補を決める予備選挙や党員集会が火曜日に集中することで「スーパーチューズデー」が注目されるが、韓国はこれに引っ掛けて、24日から始まる来週を「スーパーウィーク」と呼んでいる。

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の弾劾裁判を含め重要な司法判決が相次いでいることから韓国の命運を決する週になると位置付けられている。

 月曜日の24日は大統領代行の韓悳洙(ハン・ドクス)総理の憲法裁判所の弾劾裁判の宣告があり、水曜日の26日は次期有力大統領候補の「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表の公職選挙法違反の2審(高裁)判決がソウル高等裁判所で下されることになっており、尹大統領の弾劾可否も早ければ火曜日の25日、遅くとも金曜日の28日には決まるものとみられている。また、韓総理の宣告の日にソウル地方裁判所で尹大統領の内乱容疑に関する刑事裁判も同時に開かれる。

 大統領に次ぐNO.2の韓総理の内乱幇助を問われた弾劾裁判は尹大統領の弾劾裁判と連動していることからその結果は尹大統領の宣告に影響を及ぼすものとみられ、また、李代表の控訴審判決は次期大統領選挙の出馬を左右することになり、さらに国民の最大関心事である尹大統領への宣告は復職か、失職かを裁く「天下分け目の」の「歴史的瞬間」となるだけにまさに「スーパーウィーク」と呼ぶには相応しい。

 ▲韓総理の弾劾審判

 憲法裁判所は当初、「大統領の裁判を最優先に審理する」と表明していた。与野党も含め国民の誰もが韓総理の判決は尹大統領の判決の後回しになるとみていた。それが、一転、韓総理の宣告が早まった。

 その理由については▲韓総理の宣告を先行し、棄却を求めていた与党「国民の力」や大統領支持者らに配慮したため▲韓総理の弾劾を先に棄却することで尹大統領弾劾棄却を正当化するため▲韓総理を復職させた後に尹大統領を罷免するためとか様々な解釈がなされている。

 棄却にせよ、弾劾を容認するにせよ、憲法裁判所はその判決理由を示さなければならない。野党が弾劾した理由は主に尹大統領の内乱に反対せず、幇助したことと国会が推薦した憲法裁判官(3人)を任命しなかったことの2点である。

 特に前者については判決文を読み上げる際には尹大統領が発令した非常戒厳令が憲法に違反したのかどうか、内乱にあたるのかどうかの判断も一定程度示さなければならない。仮に憲法裁判所が判断を示せば、尹大統領の宣告結果は自ずから推測できる。従って、尹大統領の宣告を暗示するような判決は出しにくいのではないだろうか。

 こうした事情を考えると、最も無難なのは国会の手続き上の不備を問題に弾劾を却下することだ。

 韓総理は国会(300人)で過半数を上回る192人の賛成で弾劾されたが、大統領代行を弾劾する場合は3分の2が必要となる。従って過半数か、3分の2かの論争となったが、この点については国会で審議もせず、採決もせずに野党系の禹元植(ウ・ウォンシク)国会議長の権限で過半数にしたことは憲法裁判所の審議でも問題となっていた。

 ▲李代表の高裁判決

 李代表は数多くの司法リスクを抱えている。不正疑惑は12件に上り、このうち公選挙違反や城南市長時代の土地開発疑惑など4件は起訴され、そのうち2件は裁判が始まっており、いずれも1審は判決済である。

 証人に偽証を要求したとされる「偽証教唆容疑」(公選挙法違反)の裁判は1審で無罪を勝ち取ったもののもう一つの「虚偽事実公表容疑」(公選挙法違反)では昨年11月15日に開かれた第1審では懲役1年、執行猶予2年の判決が下されている。

 仮に26日の2審でも有罪となれば、3か月後の大法院(最高裁)でも有罪は動かないものとみられている。減刑され、罰金刑であっても100万ウォン以上ならば、議員を失職し、公民権も剥奪される。当然、大統領選挙には出られない。

 李代表とすれば、無罪判決が望ましいが、有罪であっても100万ウォン以下ならば大統領選挙には出馬できる。しかし、国内から尹大統領との「同時退陣論」が出るのは避けられないであろう。

 ▲尹錫悦大統領の弾劾審判

 当初は棄却か、罷免かの2者択一と言われていたが、「却下」の可能性を指摘する向きもある。国会の弾劾訴追案の70%が「内乱容疑」を理由に採決されたが、国会が憲法裁判所の審理でそれを外したことに大統領の弁護団も与党も異を唱えているからだ。内覧罪を外すならば弾劾訴追案を修正し、国会で再度採決すべきなのにそれを怠ったことに瑕疵があるとして、裁判をそのものを無効とする意味での却下である。しかし、8人の裁判官の内4人以上が賛成しなければ、成立しないので現実的には棄却か、罷免かのどちらかになるとみられている。 

 尹大統領は棄却、復職を期待しているが、検察や野党から「内乱の頭目」の烙印を押された尹大統領を世論調査では60%が弾劾すべきとみている国民が尹大統領を受け入れるかどうか。また、罷免した場合、「国民の抵抗権」を主張し、内乱、内戦も辞さないとする大統領支持派がすんなり受け入れるかどうか、どちらに転んでも混乱は避けられそうにない。