2025年3月25日(火)

 「地下鉄サリン事件」で「北朝鮮関連説」を流した当時のメディア報道も検証を

 オウム真理教による「地下鉄サリン事件」発生から早30年経った。10年、20年の節目度にマスコミは特集を組んで取り上げているが、あの時のあの記事、あの報道はその後どうなったのか、検証のないまま今日に至っているケースが多々ある。

 当時の記事、報道が事実だったのか、単なる噂に過ぎなかったのか、報道倫理として伝えた側がきちっと自己検証しているのだろうか?おそらく、うやむやにしているのではいだろうか。

 例えば、長野でサリン事件が発生した時、「オウム信者の医師の一人に朝鮮総連系の病院に勤務していた者がいる」とか、「オウム信者の中にチュチェ思想(金日成思想)研究会のメンバーがいる」との根拠のない噂が流れたこともあって週刊誌などは「北朝鮮関連説」「北朝鮮背後説」を盛んに流していた。

 また、某国会議員は国会の場でオウム真理教元幹部の早川紀代秀死刑囚が週刊誌の記事をベースにロシア経由で「10数回北朝鮮入りしたのでは」と、法相に質したこともあった。

 国松警察庁長官狙撃事件の現場から韓国の紙幣と北朝鮮軍人のものらしきバッジが発見されたこともあって、北朝鮮や韓国関連説が取沙汰されるのは致し方ない。しかし、事が事だけに日本で暮らす韓国、朝鮮人はこうした記事に眉を顰め、中には肩身の狭い思いをしていた人もいたはずだ。

 当時は確認のしようもなかったと言えば、それまでだが、今に思えば、誤りだらけだ。その一例として「サンデー毎日」(2000年3月26日号)の「北朝鮮に『サリン製造文書』〜」の記事を取り上げたい。

 「驚愕スクープ!!」との見出しに見られるようにほぼ断定的に書いていた。元オウム信者「X」の証言を基に▲「教団の自治大臣」と称される新美智光被告が地下鉄サリン事件直前に北朝鮮工作員と会って、サリンに関する資料を渡した▲逃亡中の平田信と高橋克也容疑者の2人は北朝鮮に逃げた可能性がある、と報じていた。

 この話には尾ひれが付いており、X自身も93年暮れに新宿駅で新実智光から「(北朝鮮の)社会安全部」の男二人を紹介された」と書かれていた。

 記事を最後まで読むと、「鍵を握る麻原、新実両被告が法廷での証言を拒み続け、平田、高橋両容疑者が逃走中の状況では、オウムに関するブラックボックスといえる北朝鮮とACIA(教団の秘密組織)との関係はなかなか見えてこないが、事実とすれば、日本にとって大変な脅威であることは間違いない」と書いていた。

 一応「事実とすれば」と断ってはいたものの、その後、国内潜伏中に逮捕された平田信と高橋克也両被告とも北朝鮮に逃亡していた事実がなかったことがすでに判明した以上、この「サンデー毎日」の記事は「驚愕スクープ」ではなかったというわけだ。

 「人の噂も〜」なんとやらで、25年前の記事を覚えている者は皆無だろうが、筆者は事、北朝鮮、韓国関連だけに忘れもしない。

 関東大震災の時に「朝鮮人が井戸の中に毒を投げ入れた」との流言飛語、今流で言えば、フェイクニュースがあっという間に広まり、朝鮮人虐殺に繋がったことがあるだけにマスコミも自らを戒める必要があるのではないだろうか。