2025年3月27日(木)
韓国発 「ウクライナ戦」での北朝鮮軍動向 「一人2千ドル」の月給ですでに1万4千人を派遣
軍事パレードで行進する朝鮮人民軍(朝鮮中央テレビから)
韓国軍合同参謀本部は今日(3月27日)北朝鮮がウクライナに侵攻するロシアを軍事支援するため今年1〜2月にかけて「3000人以上の兵士を追加で派遣し、ミサイルや砲弾の提供も続けている」と発表していた。
昨年10月からロシアに派遣された北朝鮮兵士1万1000人のうち約4000人が死傷したと伝えられているが、合同参謀本部の発表が事実ならば、北朝鮮はトータルで延べ1万4000人以上をロシアに派遣したことになる。
北朝鮮の対露派兵に関する情報は通常は、情報機関の「国家情報院」(国情院)や国防部が発表する場合が多い。
北朝鮮兵士第1陣が密かにロシアに移送された際も「国情院」が昨年10月18日に1報を伝えていた。今年1月12日にクルスク州で北朝鮮兵2人がウクライナの捕虜になっているのを確認したのも「情報院」だった。
合同参謀本部が北朝鮮の対露派兵問題で前面に出てくることはなく、昨年12月23日に「北朝鮮が新たな兵力や自爆型無人機などの装備をロシアに送る動きが捉えられた」と珍しくマスコミにブリーフィングしていた。国防部が昨年12月3日の非常戒厳令との関連で金龍顯(キム・ヨンヒョン)長官が内乱罪に問われ、起訴され、混乱を来したことに関係しているのかもしれない。合同参謀本部が国防部に代わってスポークスマンのような役割を担っているようだ。
また、合同参謀本部の発表のタイミングに合わせて、幾つかのメディアが関連情報を伝えていた。
そのうちの一つ、韓国の「KBSテレビ」は北朝鮮がロシア軍に供給した軍事装備がクリミア半島を通って最前線に運搬されている姿が捕捉されたと報道していた。但し、「クリミア半島の北部に移送されている」とは伝えていたが、最終到着地は明らかにされていなかった。
「KBS」の報道は軍ウクライナの軍事専門媒体「ディフェンス・エクスプレス」の情報に基に、また「ディフェンス・エクスプレス」は「該当の列車に7〜8台の自走砲と北朝鮮軍が使用している中国製トラックとみられる車両などが積まれていた」と報じた親ウクライナテレグラムチャネル「クリミア半島の風」の情報を引用していた。
「コクサン」(黄海北道谷山(コクサン)で最初に確認されたことから米国防総省が命名)と呼ばれている北朝鮮の自走砲はすでにクルスクの他、ルハンシクなどウクライナの東部戦線で使用されている。
主砲は170mmカノン砲で、射程距離は榴弾を使用した場合は43km、連装弾の場合は最大で60kmと推定されている。北朝鮮はこの自走砲をソウル攻撃用に開発し、保有している。
ウクライナ軍にとってどれだけ脅威となるのかは不明だが、「ディフェンス・エクスプレス」によると、2月から3月の約1か月間でウクライナ軍のドローン攻撃で5台が破壊されており、2日前の25日にもドネツクで1台が破壊されている。
「KBSテレビ」の他に韓国の大手紙「東亜日報」も「ロシア派兵北朝鮮軍、月給の4分の3以上を上納」との見出しを付けて、北朝鮮兵士が月に貰う給料2000ドルのうち400〜500ドルを除く、残りの約1500ドルは北朝鮮当局に上納され、それが核開発を含む金正恩の体制維持に使われている」と北朝鮮消息筋の話として伝えていた。
戦場に派遣された北朝鮮兵士の給料が2000ドルというのは「国情院」が昨年10月に国会情報委員会で明らかにしていた。
北朝鮮の兵士がロシアに派兵されたのは昨年10月でクルスク戦線に投入されたのが11月に入ってからである。仮に一人当たり給料2000ドルが11月から支給されたとすれば、単純計算で1万1千人だと、月に2200万ドルとなる。すでに5カ月が経過しているので北朝鮮当局は1億1千万ドルの外貨を手にしたことになる。これに今年1月から3千人が追加されているのならば、その額はもっと膨らむ。派兵は北朝鮮にとっては貴重な外貨獲得手段となっているようだ。
なお、3月21日に訪朝した前国防相のショイグ安全保障会議書記は到着したその日に金正恩(キム・ジョンウン)総書記と約2時間会談し、その後、平壌の解放塔に花輪を献じ、ソ連軍烈士を追悼し、その足で帰国の途についている。前回同様に日帰りだった。