2025年3月5日(水)
北朝鮮が地上と地下で濃縮ウラン施設を稼働 10年後に世界第4位の核保有国の可能性も
カンソンの濃縮ウラン施設(左)と寧辺の濃縮ウラン施設(朝鮮中央通信から)
北朝鮮の国営通信「朝鮮中央通信」は昨年9月13日、金正恩(キム・ジョンウン)総書記が「核兵器研究所と兵器級核物質生産基地を現地指導した」と伝えていた。
「朝鮮中央通信」によると、金総書記は「ウラン濃縮基地の制御室を見て回りながら生産工程の運用状態を確かめ、遠心分離機と各種のセンサーおよびコントロール装置をはじめ全ての系統要素を自らの力と技術で研究、開発、導入して核物質現行生産を力強く行っていることに関する報告を受け、大きな満足の意を表した」ようだ。
「朝鮮中央通信」は今年1月29日にも再び金総書記が「核兵器研究所と核物質生産基地と現地で指導した」と伝えていた。金総書記はここでも「兵器級核物質生産の主要核心工程を見て回りながら、現行の核物質生産の実態と展望計画、2025年度の核兵器研究所の計画などを具体的に確かめた」ようだ。
北朝鮮は金総書記がいずれも濃縮ウラン製造に不可欠な遠心分離機を見て回っているところを写真付きで公開していたが、施設が所在する場所については伏せていた。
1回目の訪問からまだ4か月少ししか経ってないのに再訪問とは早すぎると思っていたが、視察した場所、即ち「核物質生産基地」が別な場所であったことが3月3日にオーストリアのウィーンで開かれた国際原子力機関(IAEA)定期理事会でのラファエル・グロッシー事務局長の報告で明らかにされた。
グロッシー事務局長によれば、昨年9月は平壌近郊のカンソンの地下にある秘密の濃縮ウラン核施設で、今年1月訪れたのは寧辺の核団地内の濃縮ウラン施設である。前者は未申告施設だが、後者は2010年に核専門家のヘッカー米スタンフォード大教授(元ロスアラモス国立研究所長)らに公開した施設である。
北朝鮮は当時、寧辺で軽水炉の建設が行われており、その燃料を保障するため「数千基の遠心分離機を備えた近代的なウラン濃縮工場が稼動している」ことを明かしていた。軽水炉の原料はウラン235が3〜5%交じった低濃縮ウランが使用される。
しかし、北朝鮮が1月に公開された寧辺のウラン施設を見たもう一人の核問題の権威であるデイビッド・オルブライト米科学国際安保研究所(ISIS)所長は米国のメディアに「北朝鮮は民生用の低濃縮ウランの生産から核兵器を製造できる高濃縮ウラン生産用に施設を改造したようだ」と語っている。また同所長はカンソンの地下施設は公開された遠心分離機を見る限り、「兵器級の高濃縮ウランを生産していることは間違いない」と断言していた。
天然ウランや3〜5%程度の濃縮ウランでは核兵器には使用できない。しかし、濃度を3〜5%度高める技術さえ確保すれば、濃度90%以上の武器級の高濃縮ウラン(HEU)を生産できる。
北朝鮮が濃縮ウラン施設を2か所で6000個のP−2遠心分離機をフルに稼働すれば、年間75kg〜90kgの兵器級ウラニューム(核爆弾3〜4個分)が製造可能だと、オルブライト所長は憂慮している。
高濃縮ウランで核兵器をつくれば▲プルトニウムより過程が簡単で▲費用と時間も節減できる利点がある。同時にプルトニウム爆弾に比べて▲軽量化が可能である。また、プルトニウム方式よりも▲核兵器の製造と保管が簡単で、加えて精密で複雑な起爆装置を使ってのプルトニウム方式と異なり▲HEU核兵器は単純な装置による爆発が可能である。
北朝鮮が保有している核爆弾の数についてはスウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が昨年6月に公開した年鑑によると、50発と推定されている。
しかし、米国のカーネギー国際平和財団のアンキット・パンダ核政策プログラム
スタントンシニアフェローは先月25日、米国の「自由アジア放送」とのインタビューで北朝鮮が非核化や核軍縮交渉に応じなければ、今後10年の間に核爆弾の数は300個を超え、フランス(290発)を抜き、世界第4位の核保有国になるだろうと予測していた。
アンキット・パンダ氏は現在の北朝鮮の核有数を50〜100発と推定しているが、10年後の300個の根拠は明らかにしてなかった。
(参考資料:金総書記が視察したウラン核施設は「寧辺」なのか、「カンソン」なのか?)