2025年5月12日(月)

 本命・李在明候補の「敵」は与党候補ではなく、目に見えない「テロ」

防弾チョッキを身に着けていた「共に民主党」の李在明候補(韓国紙「京郷新聞」)

 韓国の大統領選挙が本日(12日)、6月3日の投開票日に向けてスタートした。

 無所属候補を含め7人の候補が立候補しているが、選挙戦は与党「国民の力」の金文洙(キム・ムンス)候補、最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)候補、それに保守系野党の「改革新党」の李俊錫(イ・ジュンソク)候補の3人の有力候補で争そわれることになる。

 昨日発表された大手世論調査会社「リアルメーター」の調査(7〜9日実施)によると、支持率で李在明候補52.1%、金文洙氏31.1%、李俊錫氏6.3%と、李在明候補が大きくリードしていた。今後、3週間の選挙期間中に異変が起きない限り、李在明候補が大統領に当選する確率は極めて高い。そうなれば、文在寅(ムン・ジェイン)政権以来、3年ぶりの進歩政権の復活となる。

 「異変が起きる」とは李在明候補が支持率で他の二人に逆転されることを意味するのではなく、李在明候補の身辺に不測の事態が発生することを指す。というのも、李在明候補には暗殺される危険性がつきまとっているからだ。

 李在明候補はかなり前から「反李在明派」によるテロを恐れ、遊説など外出する際には防弾チョッキを身に着けている。

 光化門で行われた今日の出陣式でも李在明候補は「内乱が我々の社会を極端な分裂と葛藤に追い込んだため防弾チョッキを着て遊説せざるを得なくなっしまった」と嘆いていた。

 李在明候補がテロを警戒するのも無理もない。昨年1月に釜山で暴漢に襲撃され、刃渡り18背ンチの刃物で首を刺される事件があったからだ。

 60代の襲撃犯は「李在明が大統領になることを阻止するためだ」と、動機について警察に自供していたが、この襲撃事件は単独犯でなく、その後、70代の知人の男も殺人未遂ほう助の疑いで逮捕されていた。

 「共に民主党」の選挙対策委員会は昨日のブリーフイングで李代表への脅迫やテロの脅威が日毎に増していることを明かしていた。

 「李在明を絶対に生かしては置かない」とか「命を懸けてでも李在明を阻止する」とかの脅迫が「共に民主党」の議員らのHPに書き込まれたり、その逆に「街頭で遊説する際には屋上を警戒するように」とか「元特殊部隊員が狙っているとの情報がある」とのそれらしいタレコミももたらされているようだ。

 「共に民主党」は党内に金民錫(キ・ミンソク)共同選対委員長をトップに「テロ対応タスクフォース」を結成し、テロ対策に万全を期している。テロに関する情報収集を徹底させ、また、警察官出身者による身辺警護を強化している。また、組織内部にテロ犯に李在候補の動静に関する情報を流す協力者がいないか洗い直している。

 昨日、中央選挙対策委員会広報団の名前で出された「李在明候補テロ対応計画ブリーフイング」では「いかなる不穏な試みも成功しないことをはっきりとさせておく。李在明候補に危害を加えようと計画している者や勢力がいるならば、絶対に失敗するので放棄するよう促す」と、警告を発していた。

 「共に民主党」は警察に李在明候補への身辺警護の強化を要請し、すでに李代表の警護を総括する警護隊長には軍の特殊部隊出身のB警視正が、また李在明候補に密着して警護するチーム長には女子テコンドー国会代表のA警視が配属され、現場に動員される警察官や「共に民主党」が独自に雇用した私設ボディーガードら指揮している。

 進歩系の野党が大統領候補へのテロ、暗殺を警戒するのは大統領選挙に出馬した金大中(キム・デジュン)元大統領以来で、大統領に当選した1997年の大統領選挙では反対派から「アカ(共産主義)」のレッテルを貼られた金大中候補に対してはテロだけでなく、軍によるクーデターまで取り沙汰されていた。

 どうやら、李在明候補にとっての真の「敵」は与党の候補ではなく、どこかに潜んでいるかもしれない「テロ」のようだ。