2025年5月13日(火)

 絶体絶命の金建希夫人 前大統領夫人が逮捕されれば、韓国史上初

大統領公邸から引っ越しした時の金建希夫人(「JPニュース」から)

 昨日、裁判所に現れた尹錫悦(ユン・ソンヨル)前大統領の表情はいつになく曇っていた。裁判所に集まった熱狂的な支持者らを見向きもせず、また「尹錫悦!」の声援に応えることもなく、終始無表情だった。おそらく、自らの刑事裁判よりも気懸りなことがあるのだろう。

 それと言うのも、金建希(キム・ゴンヒ)夫人が明日(14日)、検察に出頭し、調査を受けるよう要請されているからである。それも参考人ではなく、公職選挙法及び政治資金法違反の容疑者として出頭を命じられているのである。

 金夫人の容疑を調べているソウル中央地検の捜査チームは今年2月以降、「対面調査が必要である」として、非公式に再三にわたって出頭を要請していた。しかし、金夫人が梨の礫だったことから業を煮やし、今回、期日を定め、出頭するよう迫ったのである。

 一説では金夫人は弁護士を通じて書面による調査もしくは検察庁舎以外の第3の場所での取り調べを打診していたが、以前、金夫人が指定した大統領警護処が管理する別館に出向いて調査を行ったため「出張調査をした」とか「特別待遇をした」との批判を浴びた経緯もあって、ソウル中央地検は今回、金夫人を呼び出して、対面調査する方針を固めている。

 現状では金夫人が大統領選挙に影響を与えかねないとか、健康不安などを理由に出頭を拒む可能性が高い。しかし、検察は1度でダメならば、二度、三度と出頭を命じ、それでも応じない場合は、拘束令状の請求を含む強制捜査に踏み切るようだ。

 金夫人の公選挙法違反容疑は一つ、二つではない。少なくとも三つの容疑が掛けられている。

 その一つは、政界ロビイストの孟太均(ミョン・テギュン)氏が経営する世論調査会社「未来韓国研究所」を通じて前回(2022年3月)の大統領時に夫に有利な世論調査を無償で依頼した容疑である。

 孟氏は世論調査の対価として3か月後に行われた補欠選挙で金映宣(キム・ヨンソン)前議員の公認を取り付け、金前議員はその代償として孟氏に7620万ウォンを渡し、金建希夫人もまた交通費という名目で500万ウォンを孟氏に渡した疑いを持たれている。

 次に、「タマネギ男」と揶揄されていだ国(チョ・グック)法相の娘の不正入学を徹底追及した元検事の金相?(キム・サンミン)氏を2024年4月の総選挙で公認候補にするため孟氏を通じて同じ選挙区から立候補しようとした金映宣議員に出馬を断念させ、選挙に不当な影響力を行使した容疑である。

 金建希夫人は孟氏に「金相?氏の出馬を支援すれば金映宣氏に閣僚か公共企業社長のポストを与えると提案していたとみられているが、検察に起訴されたことから洗いざらい暴露してる孟氏は今年2月、この件で金建希夫人と金映宣氏が交わしたメッセージを公開していた。

 最後に京畿道龍仁甲選挙区の公認を巡って自身に近い李元模(イ・ウォンモ)前大統領室人事秘書官の公認に関与した疑いが持たれている。李前秘書官の夫人は2022年6月にスペインのマドリード訪問に金夫人に同行し、「民間人の専用機搭乗」で物議を醸した当事者である。

 ソウル中央地検すでに孟氏ら関係者から有力な証言と物的証拠を確保していると伝えられており、金建希夫人が検察に出頭し、調査を受ければ、その場で逮捕、収監されるという最悪の事態も想定されている

 仮に3つの選挙法違反容疑が晴れたとしても、金夫人にはこれ以外にもドイツモータズの子会社の「株価操作疑惑」でソウル高検が、統一教会からの6千万ウォンのダイヤモンドブローチの「授受疑惑」でソウル南部地検が捜査を進めていることからどう転んでも捜査の網から逃れることができそうにない。

 韓国は大統領経験者が逮捕、収監されたケースは過去4人いるが、ファーストレディが逮捕されたことはこれまで一度もない。