2025年5月20日(火)

 本命の李在明候補の別称は「右クリック」 保守層を取り込むため右へ右へ

「共に民主党」の李在明候補(「共に民主党」のHPから)

 韓国の大統領選挙は序盤戦で優位に立っている最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)候補が圧勝を期し、中道層だけでなく、保守層の支持を得るため保守系の政治家や論客らを自身の選挙キャンプに次々と取り込んでいる。

 「保守の策士」と呼ばれている尹汝雋(ユン・ヨジュン)元環境部長官を三顧の礼で常任総括選挙対策委員長に招いたほか、与党「国民の力」から尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領の弾劾に反対した党の方針に反発し、離党した若手の金相旭(キム・サンウク)議員を引き抜き、「国民の力」と袂を分かった保守系野党「改革新党」の許垠娥(ホ・ウナ)前代表、文炳浩(ムン・ビョンホ)元議員、金勇男(キム・ヨンナム)議員らを相次いで入党させている。また、朴槿恵(パク・クネ)元大統領の支持者らにも食い込み、「朴槿恵後援会」の一部幹部らが「李在明支持」を表明する事態に至っている。

 保守紙「朝鮮日報」系列の「月刊朝鮮」の元編集長で、今では保守を代表する論客として知られている趙甲済(チョ・ガップチェ)氏は非常戒厳令騒動以来、李在明候補に好意的な発言を繰り返していることも衝撃的だが、最も世間を驚かせているのは保守の社会経済学者、イ・ビョンテ氏にもラブコールを送っていることだ

 韓国科学技術院「KAIST」の元教授であるイ・ビョンテ氏は与党「国民の力」支持の経済学者として有名で文在寅(ムン・ジェイン)政権下の2017年には国会環境労働委員会で「国民の力」の前身である自由韓国党の参考人として当時、与党だった「共に民主党」の議員らと舌戦を繰り広げたことで進歩層の間では「悪名」高い。

 イ・ビョンテ氏は翌年の2018年には自由韓国党第2次革新委員長、2019年には「文政権経済失政白書特別委員会委員」に任命されるなど与党有数の政策ブレーンで、今回の大統領選挙では予備選で敗退した(ホン・ジュンピョ)大邱市長の選挙キャンプ総括政策本部長を引き受けていた。

 イ・ビョンテ氏はこれまで韓国では日本絡みで何かと物議を醸しだす発言を行っており、そのため韓国内では「親日」のレッテルが貼られ、進歩層から攻撃の対象とされていた。幾つか例を挙げると;

 その1「東海ではなく、日本海である」

 イ・ビョンテ氏は2019年5月2日に自身のフェイスブックに「韓国の東海の名称に執着するのは時代錯誤的な反日コンプレックスの表れである」との一文を載せ、東海の名称に反対の意を表していた。

 その2.「親日が正常で、反日は不正常」

 その2.イ・ビョンテ氏は2019年7月8日に日本政府の半導体素材輸出規制への文政権の強硬な対応を「ガキの自尊心に過ぎない。親日が正常で、反日こそが不正常。国交を結んでいるのだからどの国とも親しくしてこそ平和も共同繁栄も可能となるにである」との批判を展開した。

 特に文前政権への批判は激しく、文前大統領の最低賃金引上げ政策を巡っては「痴呆なのか?精神分裂なのか?」と痛烈に批判し、文政権は「寄生虫政権である」と扱き下ろしていた。

 李候補の誘いにイ・ビョンテ氏は5月12日に自身のフェイスブックに「李在明キャンプに合流することになった。李候補に主流経済学的話を伝授しようと思っている」と綴っていたが、「共に民主党」内の文在寅派や支持基盤の進歩層には拒絶反応があることからまだ、正式決定にはいたっていないようだ。

 直近の過去5回の大統領選挙では2007年の第17代大統領選挙で保守の李明博(イ・ミョンパク)候補が対立候補に22ポイン(523万票)の差を付けて当選しており、最も僅差の当選は前回(2022年)の第20代大統領選挙で、この時は保守の尹錫悦候補が李在明候補に0.7ポイント(約25万票)差で辛勝している。