2025年5月7日(水)
本命の李在明候補が落馬、失格となれば、寝ていても大統領の座が手に入るので決まらない与党候補
与党候補の韓悳洙前首相(左)と金文洙前雇用労働部長官(総理室と金文洙氏のHPからキャプチャー)
韓国の第21代大統領選挙の6月3日の投票日まで1カ月を切り、残り27日となった。
野党第1党の「共に民主党」は前代表の李在明(イ・ジェミョン)候補に決まり、すでに地方遊説を活発に行っているが、与党「国民の力」の候補はだ未確定である。金文洙(キム・ムンス)前雇用労働部長官と韓悳洙(ハン・ドクス)前首相との一本化交渉が進まないからだ。
大統領候補の登録期限は5月11日。この日までに一本化が成立しなければ、保守は分裂選挙を強いられることになりかねない。そうなれば、共倒れは目に見えている。
与党内の大勢は金候補よりは支持率の高い韓候補による一本化である。
世論調査会社「リアルメーター」の調査結果(5月5日発表)では野党「改革新党」の李俊錫(イ・ジュンソク)候補も含めて三つ巴となった場合、金文洙候補27.8%、李在明候補46.6%、李俊錫候補7.5%だった。韓悳洙候補の場合だと、韓候補34.3%、李在明候補46.5%、李俊錫候補5.9%だった。
李在明候補と金候補との差が18.8ポイントなのに対して李在明候補と韓候補との差は12.2ポイントと、縮まっている。仮に与党候補の一本化後に「国民の力」の元代表だった李俊錫候補を抱き込めば、射程圏内の約6ポイントまで詰めることができる。
こうした世論調査を背景に与党執行部及び韓候補は金候補に候補辞退を迫っているが、党の予備選で勝ち上がってきた金候補としてはそう簡単に引き下がるわけにはいかないようだ。
その理由の一つは政党支持率では「共に民主党」の42.1%に対して「国民の力」は41.6%と拮抗していること、もう一つは李在明候補が落馬する可能性があることだ。
李在明候補の「虚偽事実公表容疑」(公職選挙法違反)の裁判で大法院(最高裁)は5月1日、2審の無罪判決を棄却し、ソウル高裁に審理を差し戻している。有罪を前提とした差し戻しなので大法院の判断に拘束されるソウル高裁は5月15日の公判で李候補に有罪を宣告しなければならない。
1審判決の有罪1年(執行猶予2年)を適用すれば、また、仮に罰金刑に減刑したとしても100万ウォン(約10万円)以上を宣告した場合、李在明候補は被選挙権を剥奪され、大統領選レースから脱落することになる。大相撲に例えるならば、途中休場となり、与党候補の不戦勝である。寝ていても大統領の座を手中に収めることができるのである。
李在明候補を擁立する「共に民主党」はソウル高裁や大法院に対して大統領選挙が終わるまで裁判を延期するよう要請しているが、李在明代表が大統領選挙で勝ったとしても大統領選後に裁判が継続され、有罪が確定すれば、当選は無効となり、次点の候補の繰り上げ当選ということになる。
「共に民主党」が゙喜大(チョ・ヒデ)大法院長ら逆転有罪判決を下した10人の裁判官の弾劾も辞さないと猛反発していることもあってソウル高裁及び大法院が最終的にどのような裁定を下すのか「共に民主党」だけでなく、与党もまた、国民も事態の推移を注視ている。
今朝、発表された放送会社「YTN」の世論調査(5月4〜5日実施)によると、大法院の判決について「適切」が43%、「不適切」が47%と、「不適切」の回答が若干多かった。
また、「大統領選挙に影響を与えると思うか」の質問には「影響を与えると思う」が過半数以上の57%に達し、「影響はほとんどないと思う」と答えた人は38%だった。
最後に李在明候補が当選した場合の裁判の進行については「中断すべき」が44%、「続けるべきだ」が46%とほぼ拮抗していた。
当然のごとく、保守派の回答者の78%が「裁判を続行すべき」と答えているのに対して逆に進歩派の73%が「裁判を中止すべき」と答えていたが、選挙の勝敗のカギを握る中産層では50%が「裁判を中止すべき」と回答していた。