2025年11月13日(木)
韓国「検事の乱」 李在明政権に立ち向かう18人の検事
「反乱」を起こした検事18人のリストを報じる韓国のメディア(韓国TV「ニュース打破」から)
亡くなった名優・仲代達也が主演した映画の作品に「乱」があるが、「乱」は「乱」でも現在、韓国で起きている乱は日本ではまずあり得ない検察、検事らの乱である。それも「謀反」である。
何と検察トップの検察総長代行に対して検察庁の控訴業務の責任を負う一線の検事長ら18人が連名で「検察上層部は控訴放棄の経緯と法的根拠を説明せよ」と、抗議文を突き付けるという前代未聞の事態が起きている。
連判状に名を連ねた検事長はソウル北部地検(パク・ヒョンジュン)ソウル西部地検(イム・スンチョル)仁川地検(パク・ヨンビン)釜山地検(キム・チャンジン)大邱地検(パク・ヒョクス)光州地検(パク・ヒョンチョル)水原地検(パク・ジェオク)済州地検(チョン・スジン)大田地検(ソ・ジョンミン)義政府地検(イ・マンフム)蔚山地検(ユ・ドンユン)、清州地検(キム・ヒャンヨン)、昌原地検(文・ヒョンチョル)全州地検(シン・デギョン)春川地検(イ・ウンチョル)の検事長15人と大田高検次長検事(ミン・ギョンホ)、水原高検次長検事(イ・ジュンボム)それに大邱高検次長検事(パク・キュヒョン)の18人である。
事の発端は先月31日に「大庄洞土地開発不正(事業特恵)事件」で中心人物の金万培(キム・マンベ)「火天大有」大株主や柳東珪(ユ・ドンギュ)元城南土地開発公社企画本部長ら被告人5人に下された1審判決に対して事件を担当している検事らが控訴を求めたのに肝心のソウル中央地検が控訴を放棄したことによる。
被告人5人はいずれも「不服だ」として控訴したにもかかわらず逆に検察は求刑よりも軽い刑の被告人らがいるのに控訴をしなかったのである。このため18人は検察上層部あるいは検察を指揮監督する法務部が不当に政治的に介入し、控訴を断念させたのではないかと、不信を募らせている。このため現場の「下剋上」に責任を取って鄭鎮宇(チョン·ジンウ)ソウル中央地検長と?万錫(ノ・マンソク)検察総長代行までもが辞意を表明せざるを得なかった。
それでも混乱が収まる気配はない。と言うのも、何よりも検察の控訴断念により、資本金5000万ウォンで7800億ウォン余りの収益を上げた被告らに対する追徴額がほとんどなくなったことで国民の怒りを買っていることにある。
「大庄洞土地開発不正(事業特恵)事件」を捜査している検察はこの不正事件の「張本人」は李在明(イ・ジェミョン)大統領と睨んでいる。
実際に李大統領は6つの裁判を抱えているが、そのうちの一つが「大庄洞・ペクヒョン洞開発不正容疑」である。
城南市長時代(2010年7月〜2018年3月)に大庄洞土地開発事業を推進した際、民間会社らに便宜を図ったため城南都市開発公社に4995億ウォンの損害をもたらし、また側近を通じて職務上の秘密を流し、民間業者らに7886億ウォンをかすめ取られた事件である。
前述したように柳東珪元城南土地開発公社企画本部長ら被告人はすでに有罪を宣告されているが、李在明被告人の裁判は今年6月4日に大統領に就任したため「大統領は内乱又は外患罪以外は在職中に刑事上の訴追はされない」ことを定めた憲法第84条を裁判所が拡大解釈して一時中断状態にある。
李大統領の共犯とみなしている5人の「大庄洞裁判」がこのまま終結し、騒がらなければ誰よりも得するのは李大統領である。従って、李大統領が指示したのか、あるいは鄭成湖(チョン・ソンホ)法務部長官が忖度したのか定かではないが、辞任を表明した?検察総長代行が「法務部の次官から控訴断念の選択肢を提示された」と述べていることから少なくとも法務部が関与していることは間違いないようだ。
「反乱」を起こした18人の検事長らを「政治検事」あるいは「尹錫悦師団」とみなす李政権の与党「共に民主党」は昨日、連判状に名を連ねた検事らを「懲戒すべし」として解任できるよう検察法を改正する動きに出ている。すでに「共に民主党」の執行部は「政治検事らの反乱に対する責任を徹底的に追及する。一般公務委員と異なり抗議しても解任されない事実上『検事特権法』である検事懲戒法を廃止する」として与党が委員長を含め多数を握っている法制委員会に対して現行の検事懲戒法に「解任」を追加するよう要請している。
これに対して最大野党の「国民の力」は「政治的脅迫であり、政権におもねず法と原則に則り捜査する検事を狙った粛清法である」と与党を批判をしており、「秋の政局」に発展している。
周知のように李政権は本格的に検察の改革に乗り出しているが、対象にされた検察からすれば改革ではなく、解体である。来年からは検察という言葉も消え、二分されて高位公職者捜査庁と新設される重大犯罪捜査庁に吸収される。
韓流ドラマをみれば、「大韓民国の検察を何だと思っているんだ」との決まりセリフが良く飛び出すが、それもそのはずで検察は大統領であれ、財閥の総帥であれ、誰でも逮捕、起訴できる第4の権力機関として創設以来77年間君臨してきた。それが解体されるのは約1万700人に及ぶ検事ら検察職員らにとっては耐えがたい屈辱である。
しかし、検事も所詮、公務員なので行政や立法には逆らうことはできない。そこで、唯一の多拠り所は同じ司法の裁判所である。
前述したように李大統領は6つの裁判を抱えているが、そのうちの一つ「虚偽事実公表容疑(公職選挙法違反事件」」はすでに判決が出ている。大法院は2025年5月1日に2審の無罪判決を破棄し、高裁への差し戻しを命じている。仮に裁判が再開されれば、李大統領は公民権を剥奪され、失職する。
政府与党は高裁への差し戻しを命じだ喜大(チョ・ヒデ)大法院長(最高裁長官)に不信を抱き、辞任を求める一方で、最高裁に対しても裁判官の数を現行の14人(保守系12人、進歩系2人)を約倍の26人に増やすことなどを骨子とした法改正を目指していることから「同じかれすすき」の身の検察と裁判所が連帯し、裁判が再開されるようなことになれば一気に形成が逆転するかもしれない。韓国の政局に目が離せない。