2025年11月19日(水)

 日中外交摩擦で「棚から牡丹餅」の韓国

慶州の中韓首脳会談で握手を交わす習近平主席と李在明大統領(大統領室HPから)

 高市早苗首相の国会での台湾情勢に関する「存続危機事態発言」を巡る日中の外交摩擦は様々な副産物を生み出している。

 中国政府による日本への渡航自粛要請で日本を訪れる中国人観光客が激減し、また中国による一方的な文化交流中止の余波で今月から劇場公開されたアニメ「鬼滅の刃」も観客が激変し、収入も11月15日は1億5千元あったのが16日は9千万元、そして17日は数千万元まで落ち込んでしまった。

 これにより恩恵を受けているのが韓国の観光業界である。

 韓国取引所によると、インターコンチネンタル、ソウルパルナス、ウェスティン朝鮮ホテルなどの高級ホテルを運営するGSP&Lの株価や外国人観光客の観光名所として知られる現代百貨店等の株価は軒並みに上がっている。

 韓国観光公社よると、外国人観光客の数は9月現在、1408人万人だが、ここにきて急増し、この勢いだと、過去最多を記録した2019年の1750万人を超すのではないかと見込まれている。すでにソウル市内の主なホテルの11月の客室稼働率は約90%に達している。

 台湾問題をめぐる中国の反発は領土権にまで波及し、何と中国国営メディアは「沖縄は日本ではない」とまで言い始める始末だ。

 中国共産党中央宣伝部傘下の対外紙「チャイナデイリー」は沖縄の音楽家で映画監督、平和活動家のロバート・カジワラ氏の言葉を引用し、「日本は1879年に琉球(沖縄の旧名)を侵攻・併合し、その後強制的に沖縄県と改名した。これが琉球の植民地化の始まりだった」と報じ、さらに「高市首相の発言で戦争が勃発すれば、琉球に大きな災厄が訪れるだろう」と、日中戦争の暁には沖縄を日本の本土から切り離すことも辞さないとの何とも不気味な予測までしていた。

 さらに、中国はこれまでに他国の領土紛争には中立的な立場を堅持し、干渉することはなかったが、中国外務省の毛寧報道官は11月17日、韓国が日本の独島展示ホール拡張に反対していることに触れ、「近隣諸国で(日本に対する)警戒心や不満、抗議を引き起こしている」と指摘し、「日本には自らの侵略の歴史を真剣に振り返り、平和の道を歩むよう強く求める」と付け加え、韓国政府を遠回しに支持するような発言を行い、韓国を喜ばせた。

 これに気を良くしたわけではないが、韓国政府は北東アジア3か国の表記について「韓中日」に表記、呼称を統一することを発表した。

 日中韓の表記は文在寅(ムン・ジェイン)元政権までは「韓中日」だったが、尹錫悦(ユン・ソクヨル)前政権下から日本重視に路線を転換させたことで「韓日中」と呼んでいた。

 韓国の大統領室は順番を入れ替えたことは外交優先順位を示すものではないと日本を念頭に説明していたが、明らかに習近平主席が11年ぶりに訪韓し、APEC総会に出席してくれたことへの「恩返し」であることは言うまでもない。

 加えて、竹島問題に関する「武市発言」との関連で今後、日本が竹島の領有権を持ち出した場合、それに一切、対応せずに日本の領土である対馬の領有権を主張し、対抗すべきとのとんでもない論調さえ出始めた。

 右翼保守系の「ニューデイリ―」(11月12日)に李東馥元保守系議員(現在、新アジア研究所主席研究員)がコラムを載せているが、その内容は挑戦的で日本にとって受け入れがたいものだった。

 「日本政府が韓国空軍の独島上空飛行に抗議するのは新しいことではなく、いつもの行為なので我々がそれにいちいち反応する必要はない。無視しても良い」

 「それでも、高市(首相)の慶州訪問直後に日本政府がこの問題を取り上げたことは日本政府が今後も『独島』問題で誤りを犯し続ける可能性が高いことを示唆している。このため我が国は適切な対策を検討する必要があると思う」

 「日本政府の独島問題の議論に反応すべきではなく、この機会に対馬返還の問題を議論すべきだ。独島(竹島の韓国の呼称)を擁護した李承晩(イ・スンマン)大統領は、建国後すでに要求していた」

 「『対馬は日本ではなく朝鮮半島の付属地域であった』と示す無数の歴史記録が存在することが知られており、中国古代史書『周書』や『隋書』、古代韓国の『桓丹古字』や『三国志』、そして古代日本の『古事記』や『日本書紀』などが含まれている」として「対馬は側国の領土と主張しよう」と煽っていた。

 韓国の愛唱歌「独島は我が領土」の歌の中に「ハワイは米国の領土、対馬は日本の領土、独島は我が領土」という歌詞があるように対馬が日本のものであることは韓国人の誰もが認めていることである。

(参考資料:韓国は「日中外交紛争」をどう見ているのか?)