2025年11月21日(金)
北朝鮮サッカーはなぜマナーを守らない 特に日本には「敵意むき出し」
男子U―17W杯日朝戦 赤いユニフォームの北朝鮮選手ら(SNSキャプチャー)
北朝鮮がまたやらかした。サッカーでの相変わらぬマナー違反のことである。
ラウンド8進出を目指すサッカーU―17W杯男子決勝トーナメントでの日朝戦の試合開始前に北朝鮮選手らが拳骨を握りしめて殴るように日本選手に対してタッチしていたことが問題になっている。
録画を検証すると、全員ではないが、確かに5人〜6人の選手が、中でも11番のフォワードのリ・グァンジン、6番のミッドフィルダーのアン・ジンソク選手と16番のソ・ジンソンの3人は拳を振り下ろかのように日本選手の手を激しく叩いていた。
連鎖反応ではなく、それぞれ確信的な行為に見えた。「気合が入っていたことの表れ」ならば、前の試合のベネズエラ戦でも同じことをしていた筈だが、チェックしてみると、ベネズエラの選手らには普通のグータッチ、ハイタッチをしていた。やはり、日本が相手だからこうした「乱暴な行為」に及んだものと言わざるを得ない。
選手にルールやマナーについて指導するのは本来コーチ、監督をはじめサッカー協会の役目だ。しかし、日本戦に限って頻繁にこうした「非行」が起きるのは協会がある意味で放置あるいは黙認しているからに他ならない。
それもこれも北朝鮮にとってサッカーは単なるスポーツではなく、戦闘であるからだ。北朝鮮のメディアは時に選手を「戦士」であり「突撃隊」と呼んでいる。
何よりも「最後まで戦って勝利するのが『白頭の革命精神』を具現したチュチェ朝鮮のスポーツ精神である」とか「「体育人は金メダルで祖国を守り、共和国国旗を世界で最も高くはためかせる党の頼もしい体育戦士、偉大な金正恩時代の体育英雄にならなければならない」との金正恩(キム・ジョンウン)総書記のスポーツ大国建設に向けたお達しがあるだけに選手らも死にもの狂いにならざるを得ない。
古くは1982年11月のニューデリーでのアジア大会男子サッカー準決勝でクウェートに敗れた北朝鮮選手やスタッフらが試合終了を告げるホイッスルが鳴るや、主審に詰め寄り、暴行を加え、2年間の国際試合への出場停止処分が科せられたことも20年前の2005年3月に平壌で行われたドイツW杯アジア予戦でイランに負けた北朝鮮選手らが主審の判定に猛抗議猛抗議し、観衆までがエキサイトし、ビッチに椅子を投げ込むなど暴動化したことなどはその「負の反動」である。
サッカーではないが、2008年8月の北京五輪の銅メダルをかけた3位決定戦で逆転負けし、泣き崩れた北朝鮮の柔道選手を主審が立ち上がるように何度も促しても立ち上がろうせず、相手の選手を称えようともせずに会場を去るまでずっと泣き叫んでいた衝撃的な出来事があったが、これもまた、そのプレッシャーの影響であろう。
加えて日本は敵国との意識がある。従って、選手らは敵意をむき出しにして戦い、勝つことを義務付けられている。選手だけでなく、コーチも監督もしかりである。チームにとっては日本戦の敗戦は絶対に許されないのである。
怪我に繋がりかねない背後からのタックルなどラフプレーで北朝鮮に6枚ものイエローカードが出された2年前中国杭州でのアジア大会のサッカー男子準々決勝では試合終了後の主審への猛抗議、さらにはペットボトルを渡した日本のスタッフへの拳を振り上げた威嚇など常道を逸する行為があったことはまだ記憶に新しい。
男子のシン・ヨンナム監督はラフプレーのみならず、試合が終わっても選手らが主審を取り囲み猛抗議したことについて「主審の誤ったPKの判定に興奮したからだ。主審が公正でないならば、それはサッカーに対する侮辱だ!」と、反省するどころか、むしろ主審を攻撃していた。
当時は、北朝鮮は「コロナ」の影響で東京オリンピックを含め国際試合出場の機会が制限されていたこともあって一部では「国際経験が乏しいから」との声も上がっていたが、何一つ改善されず今回も同じようにマナー違反をしたことはこの問題の根の深さを窺い知ることができる。換言すれば、日本戦は「日本憎し」が底辺にある。
今回も試合の数日前に北朝鮮の国営放送「朝鮮中央通信」は「日本は千年来の宿敵」で「万古の罪悪は必ず清算されるべきだ」として植民地統治などの賠償責任を訴える討論会が平壌の社会科学院で開かれたと報じていた。こうした報道に北朝鮮選手らが刺激を受けていることは想像に難くない。
また、10日前に北朝鮮女史がモロッコで行われた同じU−17女子W杯の準々決勝で日本に圧勝し、それが北朝鮮で録画放送され、北朝鮮の人民が湧きだったことにも少なからず影響を受けたことであろう。
思えば、2年前の杭州アジア大会女子サッカーで北朝鮮は勝利した準決勝の試合を放映しながらも日本に1対4で敗れた決勝戦を放映せず、それも単に「女子サッカーの試合で我が国のチームは2位となった」と、どの国に負けたのかを明らかにせずに伝えていた。明らかに日本をリスペクトしていないことの表れである。
来年9月に名古屋でアジア大会が行われるが、北朝鮮は300人規模の選手団を派遣すると伝えられている。当然、サッカーチームも含まれるものとみられるが、ホスト国・日本に対する態度、姿勢を改めない限り、日本国民に歓迎されないであろう。