2025年11月25日(火)
台湾問題に首を突っ込まない韓国の実利外交
慶州APEC首脳会議で会談した習近平主席と李在明大統領(出典:大統領室)
韓国は台湾問題を巡る日中外交摩擦をアジアの一員として、日中韓の3か国関係を重視する立場から鋭利注視しているが、あくまで「第3者」「部外者」に徹し、どちらか一方の肩を持つようなことはせずにひたすら傍観している。
そもそも「火種」となっている台湾へのコミットメントとは日韓では天地の差ぐらい開きがある。
韓国は中台関係では明らかに国交のない台湾よりも中国優先である。それと、日台と韓台とでは経済、外交、どれをとっても利害関係が違いすぎるからだ。
韓国は日本よりも約20年遅れて、中国と国交を結んでいるが、中韓関係は今では日中関係よりも絆が太い。
韓国観光公社によると、昨年(2024年)韓国を訪れた外国人観光客は総計で1637万人だが、最も多いのが中国人で、460万人(28%)。2位の日本(322万人)よりも100万人以上多い。韓国にとっては中国人は一番の「お得意さん」なのである。
また、中国は韓国にとって輸出も輸入も最大のパートナーとなっている。中国は輸出では全体の約25%、輸入では20.5%を占めており、経済的には切っても切れない間柄にある。逆に日本にとって台湾は韓国よりも経済的絆が太い。輸出、輸入どちらも対韓よりも対台のほうが多い。
台湾に対する利害関係で最も決定的な違いは韓国は日本とは異なり、台湾有事は即、韓国有事とみなしておらず、台湾有事が韓国の存続危機に直結すると受け止めてないことである。
現在、アフリカ、中東を歴訪中の李在明(リ・ジェミョン)大統領は24日(現地時間)、最後の訪問国トルコに向かう専用機内で「韓国の外交の基本原則は韓米同盟を根幹とするものの、韓中関係を安定的に管理することである」とし、「この基調の根本は国益中心の実用外交である。米国にも中国にもこのような原則を明確に伝えている」ことを明らかにしていた。
米韓関係と中韓関係を並立させ、どちらにも一方的に偏らないことを外交基調としているため高市早苗首相の台湾有事に関する国会答弁やそれに対する中国の反発についても「(日中の間に)かなりの軋轢が生じているが、韓国の立場では現在の状況を冷静に見極め、韓国の国益が損なわれず最大化されるよう最善を尽くさなければならない」と述べ、傍観する立場を決め込んでいる。
日中どちらにも与せずの李在明(イ・ジェミョン)大統領がバランス外交にいかに腐心しているかは南アフリカで行われたG20サミット(主要20カ国・地域首脳会議)で叙述に表れていた。とにかく「君子危うきに近寄らず」とばかり言動が慎重なのである。
例えば、中国の李強首相と首脳会談を行った時も日本側に申し入れ、武市首脳との首脳会談をセットするなど「バランス外交」に徹していた。
また、ドイツとの首脳会談ではメルツ首相から「ドイツは対中戦略に苦心している。韓国が中国にどのように接しているのか是非教えて欲しい」と言われても、李大統領は質問を交わし、「ドイツはどのようにして(東ドイツ)統一を成し遂げたのかそのノウハウを教えて欲しい」と笑いながら切り返すほどだった。
李大統領は米中関係についても「一方ではけん制しながら、もう一方では協力しているのが現実だ」と分析し、国家関係を「一刀両断」や「オール・オア・ナッシング(すべてか無か)でアプローチすれば何も残らない」と強調している。
しかし、現実は韓国では世論調査をすれば、最近は一番嫌いな国が北朝鮮や日本ではなく、中国である。大衆レベルでの反中感情が日増しに強まっているのが実状である。
非常戒厳令を発令した尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領が昨年12月12日の国民向け釈明談話で「中国産の太陽管パネルが韓国全域の山林を傷つけている」とか、中国人スパイがどうのこうのと「反中発言」を連発し、それに触発された大統領支持派のユーチュバーらが「中国共産党が韓国の不正選挙に関与していた」とか「大統領の弾劾集会に中国人が大挙参加している」とのフェイク情報を流し、反中感情を煽っていたのも一つの要因である。
当時、駐韓中国大使が韓国政府に抗議するほど中韓関係は最悪の状態にあった。実際にソウル市内では中国人とわかっただけで妄言を浴びせられるケースが相次いでいた。
しかし、李在明政権になってからは放置せず、対中ヘイトを厳しく規制している。最近も警察が乗り出し、ユーチューブで日本の視聴者に向けて「ビザ(査証)なしで入国した中国人が殺人や臓器売買に関与している」とか「韓国の選挙に介入している」など虚偽の情報を流布し、国民の不安感を煽っているとして30代の韓国人ユーチューバーを捜査している。
李大統領は「一時的な感情にまかせて反中を叫ぶのは国益に反する」と、呼びかけているが、今の韓国は「笛を吹いても踊らず」で庶民レベルの反中感情は高まることはあっても鎮まることはない。
(参考資料:日中外交摩擦で「棚から牡丹餅」の韓国)