2025年11月26日(水)

 中国から2度も「制裁」を受けた韓国の教訓

韓国に配備されたTHAADの射程圏(出典:北朝鮮情報分析サイト「38ノース」

 日本は高市早苗首相の台湾有事を巡る発言に激怒した中国から観光客の訪日中止や文化交流の中断など様々「いやがらせ」を受けているが、かつて同じ目にあったのが隣国、韓国である。それも2度も体験している。

 一度目は2016年で、この時はTHAAD(高高度防衛ミサイル)の韓国配備を巡り中国と対立し、中国の「圧力」に晒された。

 当時、朴槿恵(パク・クネ)大統領はハネムーンの関係にあった習近平主席の要望を拒否し、オバマ大統領のTHAADの韓国配備を受け入れたことに中国が猛反発。射程800kmに抑えられていた韓国のミサイル開発制限が撤廃されたことで「米国の差し金でミサイルの矛先が中国に向けられる恐れがある」と中国は不快感を露わにした。

 朴政権は「THAAD」の配備は「中国に向けられたものではなく、核実験とミサイル発射を繰り返している北朝鮮を牽制するものである」と釈明したが、王毅外相は「どのように弁明してもだめだ」と激怒し、韓国の説明を受け入れなかった。

 中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹誌「環求時報」は早々と論評で「(中国は)言葉で抗議するだけでなく、相手が痛がるような強力な制裁を掛けるべき」主張し、配備を決定した7月8日付の社説では「韓国配置を積極的に推進した韓国政治家らの中国入国を制限し、彼らの家族の企業を制裁すべき」と「報復措置」を唱えていた。

 「中国の脅し」に朴政権は戦々恐々となった。それというのも、2000年6月に韓国が農家を保護する必要性から中国産ニンニクに科していた関税を30%から一気に10倍の315%に上げたところ、中国当局が対抗措置として韓国からのポリエチレンやハンドフォンの輸入を大幅に規制する措置を取ったことで韓国経済がダメージを受けたからだ。

 中韓の間には2015年12月に発効した自由貿易協定(FTA)があるので中国は関税による直接的な制裁は掛けられなかったが、非関税障壁を通じ、中国は韓国製品の輸入制限に踏み切った。また、韓国ドラマや映画など「韓流」にも規制を掛け、韓流スターのテレビ出演やモデル契約も取り消され、さらに韓国製品不買運動と韓国旅行制限措置が相次いで取られた。

 その結果、中国人観光客が半減し、韓国観光業界は深刻な打撃を被った。特に敷地を提供したため「環球時報」から「ロッテグループの中国市場における発展に終止符を打つべき」と狙い撃ちされたロッテは中国内での不買運動に直面しただけでなく、空港内のロッテ免税店ももろに影響を受けた。外交でもアジア欧州会議(ASEM)首脳会議での李克強首相との中韓首脳会談が一瞬にして流れてしまった。

 その後、朴政権は南シナ海の問題で中国の主張を退けたオランダ・ハーグの仲裁裁判所の判決について「南シナ海の紛争が平和的で相違的な外交努力で解決するよう希望する」とだけ表明し、中国に判決の受け入れを強く促した日米とは異なる対応をし、事態の鎮静化をはかった。

 韓国が南シナ海の問題で日米と共同歩調を取らなかったのは▲中国とは戦略的同伴者関係にあること▲北朝鮮の核問題解決のためには中国の協力が不可欠であること▲中国が韓国にとって第一の貿易パートナであることなどが主たる理由だが、「THAAD問題」でこじれた中国との関係をこれ以上悪化させるのは得策ではないとの朴大統領の判断が優先された。

 そして、任期途中で罷免された朴大統領から2017年5月にバトンを受けた文在寅(ムン・ジェイン)大統領は「THAAD問題」では▲追加配備をしない▲日米防衛ミサイル(MD)に加わらない▲日米韓の協力を軍事同盟に発展させないことを約束したことでこの年の12月に訪中が実現し、中韓関係が修復されることになった。

 2度目は2021年で、文在寅大統領は5月の米韓首脳会談に続き、6月に英国で開かれた主要7カ国首脳会議(G7)拡大会議でも米国寄りの姿勢を示したことで中国から狙い撃ちにあった。

 韓国は「特定の国(中国)を指したものではない」と弁明したもののG7の共同声明は明らかに中国牽制に主眼が置かれていた。文大統領がこの共同声明に調印したことは欧米と足並みを揃えたと中国側に受け止められても致し方なかった。

 中国外務省は「台湾海峡の平和と安定」に言及した米韓共同声明を念頭に韓国に対して「台湾問題で言動を慎み、火遊びをするな」と批判を浴びせた。この時も中国は韓国に対して「圧力」をもろに掛けた。何よりもこの年に予定されていた習近平主席の訪韓が流れた。

 しかし、韓国の賢明な外交努力によってこの年の12月21に中韓外交次官戦略対話が4年半ぶりに実現し、中韓関係を軌道に戻すことに成功した。

 翌年の2022年、両国は尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権下で国交正常化30周年を迎えることになったが、韓国人の米中日朝4か国に対する好感度では中国は最下位だった。

 政権レベルでは改善されたもののその後遺症は計り知れず、韓国人の「嫌中感情」は悪化の一途を辿っており、今でも韓国人が嫌いな国のトップは中国である。嫌いな理由の一つが「中国による経済制裁」だった。

(参考資料:韓国は「日中外交紛争」をどう見ているのか?)