2025年11月27日(木)

 ファーストレディーだった金建希夫人は朴槿恵元大統領と同じ境遇

朴槿恵元大統領(左)と金建希夫人(大統領室から筆者キャプチャー)

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領の夫人、金建希(キム・ゴンヒ)氏が8月8日逮捕され、収監されてから100日以上が経過した。

 一足先に逮捕された夫の尹前大統領は京畿道義王市にあるソウル拘置所に収監されているが、金夫人はソウル九老区にある南部拘置所に収監されている。二人とも拘置所から裁判所に出廷し、夫は内乱容疑で、妻は株価操作や斡旋収賄で裁判を受けている。

 夫の1審判決は来年2月に、妻の判決は1か月早く1月中に下されるものと予測されている。有罪となれば、夫は死刑もしくは無期懲役で、妻は15年以上の実刑は避けられないとの見方が有力だ。

 妻は収監された直後に接見した弁護士に「再び夫と一緒に暮らせるだろうか。再び会うことができるのだろうか」と、涙したと伝えられているが、夫が無罪にならない限り、あるいは保釈されない限り、その可能性はゼロに等しい。何よりもその前に金夫人自身が無罪もしくは保釈を勝ち取らなくてはならない。

 金夫人は現在、約1.9坪(6.56平方メートル)の独房に入れられている。猛暑の夏は辛うじて乗り切ったが、今度は韓国特有の厳冬が待っている。エアコンなしで耐えなければならないので精神的には相当参っているようだ。

 金夫人の弁護人は神経衰弱、栄養失調、鬱など様々理由を付けて保釈を申請しているが、認められず,今もまた▲自宅と病院だけを行き来する▲誰とも面会しない▲携帯電話も使用しない▲電子足輪を装着するなどを条件に再度保釈を求めているが、通りそうにない。

 そのためか金夫人は法廷では辛そうな表情をしたり、車椅子に座ったり、あるいは休憩を取ったり、時には倒れこみそのまま退廷するなどして体調不良を訴えているが、裁判所は拘置所の医療関係者から「裁判に耐えられないほど健康は悪化していない」との報告を受け、粛々と裁判を進行している。

 罪状があまりにも多すぎて現状では金夫人が無罪を勝ち取るのは100%難しい。従って、外に出るには保釈しかない。それには健康問題を訴えるしかないが、鬱の状態が酷いというのはかつて朴槿恵(パク・クネ)元大統領が収監された時の「手法」である。

 斡旋収賄容疑や職権乱用で罷免され、失職した朴元大統領は2017年3月に検察に拘束され、収監されたが、100日が経過した頃には弁護士は「靴も履けず、夜眠れないほど痛風が酷い」とか「持病の肩と腰が痛い」ことなどを理由に保釈を申請していた。しかし、それが通らないとなると、今後は健康不安ではなく精神異常を装った。

 一部韓国のメディアは看守の証言として「朴大統領は夜になっても寝ずに壁に向かってぶつぶつ何か独り言を言っている。30分前に食事をしたばかりなのに『ご飯はまだか』と忘れる始末だ」と伝えていた。

 実際に呆然とした姿で法廷に現れた時は「精神に異常をきたしているのではないか」との声が傍聴人の間で漏れたこともあった。

 手錠を掛けられたままさらし者にされ、法廷に引っ張り出されるなどプライドをズタズタにされ、豪華な大統領官邸から僅か10.6平方メートルの狭い独房に入れられればうつ状態になっても不思議ではないが、裁判所は「朴被告人は現在、規則的な食事と就寝で入所時と比べて健康に特に異常がない状態」と、相手にしてなかった。

 朴大統領の弁護人は「食事が進まず、ご飯の代わりに乳製品にしている」と、日々体力が衰え、衰弱していると、裁判所に体調が回復するまでの間、保釈を訴えたが、拘置所側は「実際は拘置所から差し出す食事にはほとんど手を付けず、リンゴや旬の果物、牛乳や豆乳、ヨーグルトなどを拘置所内で購入して食べている。健康上全く問題ない」と裁判所に報告したため朴大統領は保釈されることはなく、懲役24年の判決を受け、2022年3月に文在寅(ムン・ジェイン)政権によって特赦で釈放されるまで刑務所暮らしを強いられた。収監生活は実に4年9カ月に及んだ。

 当時65歳だった朴大統領よりも一回りも若いことから金夫人が保釈を勝ち取るのは至難の業だ。可哀そうだが、金夫人には朴元大統領同様に哀れな末路が待っているようだ。