2025年11月5日(水)
「金正恩の叔父」張成沢は「火あぶり刑」だった!国葬の金永南と処刑の張成沢 天国と地獄の党幹部の運命
金永南氏(左)と張成沢氏(朝鮮中央テレビと労働新聞からキャプチャー)
元老の金永南(キム・ヨンナム)元最高人民会議常任委員長が3日に死去した。
死因は多臓器不全とのことだが、97歳と高齢で、10月10日労働党創建80周年の式典にも姿を現していなかったことから病床にあったようだ。
北朝鮮は金日成(キム・イルソン)−金正日(キム・ジョンイル)―金正恩(キム・ジョンウン)と3代にわたって政権に仕えた金永南氏の功績を称え、本日(5日)葬儀を国葬で執り行った。国葬で厚遇するのは当然のことだ。
金永南氏の時代は最高人民会議常任員会委員長が憲法上、国家元首だった。それも1998年9月から2019年4月までの21年間もその座にあった。金政権の信頼がいかに厚かったかが窺える。
葬儀委員は委員長の金正恩総書記を筆頭に延べ100人が名前を連ねていた。葬儀委員の数としては金正日総書記の国葬(2011年12月)の231人、玄哲海(ヒョン・チョルヘ)国防省総顧問の国葬(2022年5月)の182人、李乙雪(リ・ウルソル)護衛司令官の国葬(2015年11月)の171人、金英春(キム・ヨンチュン)元軍総参謀長の国葬(2018年8月)の150人に次ぐ数で、2024年5月に94歳で死去した金己男(キム・ギナム)元党宣伝先導部部長の国葬の数(100人)に並ぶ。
北朝鮮では最高幹部の要職にあった者が全員国葬の対象になるわけではない。
金日成主席の実弟で、労働党組織指導部部長、副総理、国家副主席を歴任し、2021年12月に死去するまで最高人民会議名誉副委員長の座にあった金英柱(キム・ヨンジュ)氏の場合は、家族葬だった。考えられる理由としては一時的にせよ、父の金正日前総書記と2代目の襲名争いをしたことが災いしたのかもしれない。
また、2023年1月に92歳で死去した軍総参謀長、国防委員会副委員長を歴任した呉克烈(オ・グッヨル)大将も例外とされた。
金正恩政権下で最大の国葬となった玄哲海氏の肩書は元政治局員、元軍総政治局副局長、元国防第一次官、元国防委員会局長だが、呉克烈氏も元政治局員、元軍総参謀長、元党民間防衛部長、元国防委員会副委員長を歴任し、遜色はなかった。
原因は不明だが、軍総参謀総長に推挙した後輩の李英鎬(イ・ヨンホ)次帥が2012年に、玄永哲(ヒョン・ヨンチョル)人民武力相が2015年に相次いで金総書記に盾を突き、失脚、処処刑されたことが影響したものと推測される。
最も哀れなのは、葬儀さえ執り行われなかった金正日前総書記の義弟で、金正恩総書記の叔父にあたる張成沢(チャン・ソンテク)党行政部長である。
国防委副委員長として実質NO.2の座にあった張氏は謀反を企てたとして「反逆罪」で2013年12月12日の処刑されたので葬儀がないのは当然かもしれない。
当時、軍事裁判で死刑を宣告された張氏がどのように処刑されたのかは今もって謎のままだ。韓国では「高射砲によりハチの巣にされた」とまことしやかに伝えられ、また米国ではトランプ大統領のインタビューで構成されたウォーターゲート事件のスタージャーナリスト、ボブ・ウッド氏の「RAGE(激怒)」の中でトランプ大統領が米朝首脳会談の時に金総書記から聞いた話として「首のない遺体を幹部らが使用する建物の階段にぶら下げていた」と書いていたことから、斬首処刑との見方が広がっていた。
しかし、韓国に亡命している劉炳宇(リュ・ヒョンウ)元駐クウェート代理大使が金政権の統治資金の調達、管理部署である労働党「39号室」の室長だった義父から聞いた話として張氏の側近だった李龍河(リ・ヨンハ)行政部第一副部長と張守吉(チャン・スギル)行政部副部長の二人は2013年11月に姜建軍官学校の処刑場で張氏を含む党幹部らが見ている前で高射砲により後形もなく吹っ飛ばされたが、張氏については金総書記自らが「こやつには弾がもったいない。この国に埋める場所もない。火あぶりにせよ」と命じたそうだ。
死刑判決文には張氏を「犬にも劣る醜い人間のゴミ」扱いにし「こ奴は死んだとしてもこの地に埋める場所はない」と記されていたことから中世期の頃にあった火あぶりの処刑が行われた可能性が極めて高い。
劉炳宇氏によると、義父の全日春(チョン・イルチュン)前室長は張処刑から18日後の2013年12月30日に他の幹部ら共に完成した馬息嶺スキー場に同行した際に金総書記から直接「こ奴の傲慢な振舞には頭にきていた。父の3周忌が終わるまでは待とうとしたが、これ以上我慢ならないと思って火あぶりの処刑にした」と聞かされたようだ。
使えていた主人(張成沢)が罪人となったことで党行政部の6人の副部長を含め管理職員や秘書、運転手らは全員奈落の底に突き落とされ、秘書は妻子の首を絞めた後、アパートの11階から飛び降り自殺をし、運転手もまた事情聴取を受けたその晩に一家心中したようだ。
女優のキム・ヘギョン(左)と歌手のペク・ミヨン(朝鮮中央テレビから)
なお、張氏の罪状には女性との不適切な関係も加えられていたが、劉炳宇氏によると、1人は女優のキム・ヘギョンで、もう一人は声楽歌手のペク・ミヨンと目されている。
キム・ヘギョンは張氏との間にできた8歳になる子供と共に、ペク・ミヨンもまた党副部長だった父、ペク・ヌンビンともども管理所(政治犯収容所)に送られたとのことだ。