2025年10月16日(木)
軍事パレードで脚光浴びた対露派兵部隊は現在も最大で1万3千人が戦闘中 ウクライナに越境するのか?
北朝鮮特殊作戦軍の海外部隊がロシアと北朝鮮の国旗を掲げて行進(朝鮮中央通信から)
北朝鮮が今年、最も力を入れていた労働党創建80周年記念行事は金正恩(キム・ジョンウン)総書記曰く、「世界的な関心と注視の中で盛大かつ完璧に祝うことができた」(12日)ようだ。
国家行事のハイライトである軍事パレードは金総書記が認めているように「しぐれに風も冷たい悪天候」の中で、それも夜10時にスタートした。
早い時間帯からパレードに動員された数万人の平壌市民も1万6千人の軍人もへとへとだったに違いない。
金総書記もまたこの期間、ラオスのシスリット国家主席、中国の李強首相、ベトナムのトー・ラム共産党書記長、ロシアのメドベージェフ前大統領らの接待に追われ、疲労困憊だったに違いない。金総書記は16日現在、4日間、姿を現していないが、おそらく疲れを癒しているのであろう。
世界中が注目した軍事パレードは実況中継されず、翌日の午後4時から録画放送されたが、パレードは慣例どおり前半は軍部隊が行進し、後半は最新兵器が登場していた。
パレード登場した兵器は10種類以上あったが、北朝鮮が「世界最強の核戦略兵器」と自賛している超大型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星―20」型と、極超音速滑空ミサイル「火星11―マ」に話題が集中していた。
まだ試射されていない射程1万6千km以上と推定されている「火星―20」型は核弾頭を4〜5個搭載可能な多弾頭ミサイルの可能性があること、また新型戦術誘導兵器「火星砲―11ナ」の改良型である「火星11―マ」も迎撃しにくいミサイルであることから米韓にとっては脅威に映ったに違いない。
兵器については開発と改良を重ねれば進化するもので驚くほどではない。まして、北朝鮮は経済よりも国防を優先している軍事国家である。従って、これからも様々新兵器がお披露目されることになるであろう。それよりも注目すべきは後半の人民軍部隊の入場行進である。
金正恩政権(2012年〜)になって延べ14回軍事パレードが実施されているが、これまでに実在してなかった部隊が初めて登場していた。海外作戦部隊のことである。
軍人の行進では金総書記とそのファミリー及び党中央委員会を護衛する党中央委員会護衛処、国務委員会警衛局、護衛局、護衛司令部などの親衛護衛隊が先陣を切り、続いて正規軍の第1軍、第2軍、第4軍、第5軍が行進し、さらに海軍、戦略軍、空軍の縦隊が続いたが、この後に姿を現したのが特殊作戦軍部隊、中でも海外作戦部隊だった。
特殊作戦軍縦隊が現れると、指揮官のチョン・ヒョンチャン少将を「ロシアクルスク解放作戦を指揮している」と紹介し、続いて海外作戦部隊が登場すると、李春姫(リ・チュンヒ)名物アナウンサーは「視聴者の皆さん、いま海外作戦部隊縦隊が入場行進しています」と喚起を促し、「クルスク解放作戦で偉勲を発揮している」と、部隊を率いているリ・チャンホ特殊作戦部隊第1副司令官(上将)を持ち上げていた。
北朝鮮が軍事パレードでこの部隊を際立たせたのは8月22日に労働党中央委員会の本部庁舎で行われた海外作戦部隊の指揮官、戦闘員に対する国家表彰授与式で金総書記が海外作戦部隊について「英雄の中の英雄で、英雄部隊と称すべきだろう」と発言したからであろう。
海外部隊が北朝鮮とロシアの両国の国旗を掲げて現れた時、映像には駐朝ロシア大使が拍手喝采し、メドベージェフ前大統領が手を叩いている姿が映し出されていた。
特殊作戦部隊の司令官はキム・ヨンボク上将だが、金上将は表彰授与式で「海外作戦部隊の全ての指揮官、戦闘員は祖国に帰るその日まで党中央の権威を決死の覚悟で守り、祖国の名誉、朝鮮人民軍の名誉、朝鮮人の名誉をしっかり守り抜く」との決意を表明していたが、ウクライナ当局によると、先月までクルスク戦線には正規軍4個旅団規模で少なくとも8000人から最大で13000人が配置されている。北朝鮮はまた、先月少なくとも20万発のロケット弾と砲弾をロシアに提供したと推定されている。
北朝鮮がウクライナに侵攻したロシアに援軍を送ってから1年経つが、今後は北朝鮮の部隊がクルスクなどロシア領から国境を越えて、ウクライナ領に進出するかが焦点となるであろう。
一部には北朝鮮軍がすでに「ウクライナ東部のスムイ・ハリコフ地域へのロシア軍の配置を積極的に支援している」との情報も流れているが、ロシア領内からの後方支援に留めているのか、ウクライナに直接入って支援しているのか定かではない。
しかし、金総書記が「第1の友人」であるプーチン大統領への書簡で「ピョンヤンは常にモスクワと共にいる」と全面的な支援を約束していることもあってロシア側の要請次第ではロシアが占領し、実行支配しているドネツク州やルハンスク州などに「防衛」を盾に兵力を送ることは十分にあり得る。
(参考資料:北朝鮮のウクライナ戦派兵から1年 プラス&マイナスの損得勘定)