2025年9月21日(日)

 霧散した韓国の「産油国」の夢 経済性ゼロで試掘中断

韓国のガス・原油探査(韓国石油公社配信)

 昨年6月、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領(当時)が「浦項市の迎日湾沖に最大で140億バレルの天然ガスと石油が埋蔵されている可能性がある」と電撃発表した「シロナガスクジラ」と名付けた石油・ガス田開発プロジェクトはどうやら「幻想」だったようだ。

 韓国石油公社は最近、昨年12月から今年2月に掛けて行った第1次試掘調査資料を分析した結果、経済性のあるレベルのガスの回収は不可能との結論を出した。ガス飽和度が50〜70%程度と見積もられていた当初の予想とは異なり、約9〜10分の1の6%しかないことがわかった。

 慶尚北道・浦項市の近海が有望な埋蔵場所でガスと原油の内訳はガスが75%、原油が25%と推定されていた。埋蔵規模が140バレルならば、韓国は世界第15位の産油国となるところだった。

 また、埋蔵量が140億バレルならば、産業資源部の試算では仮に全国民(約5100万人)が消費したとして、ガスは29年分、石油は4年分に匹敵する量で、金額に換算すると、経済効果は2000兆ウォン(約230兆円)に上ると計算されていた。

 所管の産業通商資源部は昨年2月に1回目のボーリング調査を行った結果、「ガスの兆候が暫定的に一部あったことは確認したもののその規模は経済性を確保できる水準ではなかった」と発表し、その後、試掘を中断していた。

 尹大統領が自ら記者会見を開いて「深海鉱区としては今世紀最大の石油開発事業とされる南米ガイアナの110億バレルより多い資源量である」と誇らしげに発表し、1200億ウォンの大規模予算を計上していたが、本来ならば資源のない国から「資源大国」になれると国民が沸き立ってもおかしくはなかった。しかし、国民は意外にも冷めていた。

 その証拠に、尹大統領の発表直後に実施された世論調査では「大いに期待している」が26.2%なのに対して「期待していない」は60.1%(その他「わからない」が13.7%)となっていた。国民の10人中6人が「原油発見」に期待をかけていなかった。

 その理由は、1976年にも朴正煕(パク・チョンヒ)大統領(当時)が年頭記者会見で「浦項の迎日湾に原油が埋蔵されている」と大々的に発表した「原油発見」が空振りに終わった、苦い思いであるからだ。この時も1年後には経済性がないことがわかり、産油国への夢はハプニングに終わっていた。

 「埋蔵されている」とのお墨付きを与えた米国の深海技術評価専門企業(アクトジオ社)は「実体のないペーパーカンパニーなのでもっと調べたほうが良い」と言われ、また「推定量と実際の埋蔵量との間には大きな差がある。ボーリングしてみなければ、資源の存在や採算性を確認できない」として、発表には慎重を期した方が良いとの意見が寄せられていたのに耳を貸さず、尹大統領が発表を急いだ理由については政権基盤が揺らいでいたことと無縁ではない。

 朴政権の時も国内で反体制運動が高まり、また、米下院外交委員会で韓国の人権抑圧に関する公聴会が開かれるなど朴政権に対する外圧が強まっていた時であったが、尹政権もまた、政権与党「国民の力」が総選挙(4月10日)で大敗し、支持率が37%から30.6%と大幅減少し、国会では金建希夫人の疑惑追及も始まっていた時だった。

 唯一異なる点を挙げるとすれば、尹錫悦氏がお告げに頼っていたことだ。尹夫妻が「イ・チョンゴン」という白衣をまとった占い師に嵌まっていたことは秘密でも何でもない。

占い師・イ・チョンゴン氏(チョン・ゴンユーチューブチャンネルから)

 この占い師は尹大統領の発表の2週間前から「我が国が産油国になれないと思うか?これからは産油国になるだろう。この国の下にはガスも石油もあるのだ」と、自身のユーチューブで吹聴していたが、尹錫悦氏はどうやらこのほら吹きに踊らされてしまったようだ。

 そう言えば、「方角が悪い」と言われ、50億ウォンの税金を費やし、大統領室を北岳山の麓から竜山に移したのもこの占い師のお告げだった。結果として、尹錫悦氏は大統領の座から転落し、今は堀の中だ。

 韓国の「原油埋蔵」は今回もまた、「徳川幕府埋蔵金」のような「空想話」で終わってしまった。